表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/55

第十一話 覇者、運命(自称)の出逢いを果たす

SIDEショーン


「コラーレーの町に、ついたどー!!」


エミレ、シルア、そして、リュドエールルの2人と1剣による奇妙な旅路は、エピネスの町の森から、ついにコラーレーの町へと辿り着く。

さすがは、『冒険者の町』と呼ばれているだけあって、エピネスの町とは、明らかに町の規模が大きい。


建物は隙間なくびっちりと立ち並び、その大半が、宿屋や、酒場、防具屋、武器屋などと、いかにも冒険者向けの施設ばかり。

そして、行きかう人々の服装もさまざまで、

重厚な鎧に身を包んだ人もいれば、身軽な服装の者もおり、中にはローブに身を包んだ人もいた。

だが、その全員に共通しているのは、腰や、背中に武器らしきものをぶら下げているということ。


いわば、ここでは戦うことは日常茶飯事。


だからこそ、町を歩くと様々な声が耳に入る。

勝利に沸く声や、酒場で仲間と語り合う楽し気な声、商人の呼び込み……

けれど、いつでもそのすぐ隣では、傷を負った冒険者のうめき声や、仲間を失った人の悲痛な嘆きが付きまとっていた。


常に、希望と絶望が入り乱れ、同じ時を流れる――そんな異様な空気がコラーレーの町を取り巻いている。


それでも、いや、だからこそ。

この混沌ともいえる空気さえも人々に活気ととらえさせる、冒険のロマンがこの町にはうずめいていた。


そんな空気に魅了され、酔ったものが、ひとり。


「おおおおおおおお!!なんだこれは!!」


「ああ……それはね、カエルの卵の色を変える『専門家』お手製の薬だよ。ただし、生まれてくるおたまじゃくしには、なんの効果もないけどね」


「わぁぁ!!その役に立ちそうで立たないのいいね!!じゃあ、これは?」


「ああ、それはね、柔らかい素材でできた剣さ、これなら、間違えて仲間を刺しても問題ないからね!どうだい便利だろ?」


「えーなにそれ、ちょーすごいじゃん!!え、これほしい!!7ピグとかでどう?」


この誤って味方に刺しても安全な剣にした結果、敵に刺しても安全な剣になってしまい――

もはや剣という役目を背負うことをやめた代物(ガラクタ)を本気で買おうとしているバカ(エミレ)である。


「ちょちょちょちょ、エミレ!ストーップ!」


シルアは、町の空気に圧倒される暇もなく、エミレの背中を引きはがす。


「え、なんで。これは、天下の逸品だよ!だって、仲間を刺しても死なないって画期的すぎじゃない!?」


「いや、それって言いかえると敵を刺しても死なないってことだからね!?

 絶対にいらないよ、それ。」


「シルア、なんで、そんな悲しいこと言うの……」


エミレは、シルアに全否定されたことがショックだったようで、顔を曇らす。


「あ、エミレ、そんな顔しないで……えーっと、ごめん?」


エミレのあまり見ない表情に戸惑うシルアは、とりあえず謝る……が、これが最大の選択ミスであった。

瞬間、エミレは、顔をぱぁと明るくし――


「つまり、これ買ってもいいってことだよね!

 はい、おじさん、7ピグ!」


素早く、硬貨を渡して、(ガラクタ)を受け取る。

これぞ、エミレ奥義、必殺噓泣き(ぴえん)落とし。


「あああああ、エミレがっ、変なガラクタをっ、買ってしまったあああ」


「ひゃっほーい!これでまた、一歩覇者に近づいたね!!

 この武器さえあれば、敵の無血開城だって夢じゃないよ!」


某名画のような、げっそりした表情で悲痛な声を上げる少年と、

宝を手に入れたという歓喜の雄たけびをあげる少女。


……そう、まさに、これこそが、この町を作っている、勝者と敗者の空気なの、かもしれない。たぶん。


「ケケン!」


そんな空気に浸る2人を見かねたリュドエールルは、先へとせかす。


「はっ!そうだよ、エミレ、こんなことしてる場合じゃないから!」


「え、あ、はは~ん、もしかして、行っちゃうの?シルアよ。」


「どこに?」


「ぼいーんなお姉さんのところへ」


「行かないしっていうか!エミレ、言っとくけどそんなところに行くためのお金今ないからね!?」


「あれ、そうだっけ?」


「そうだよ!!この3日間の旅路で、宿屋にぼったくられて、お金ほぼないって言ったじゃん!」


「あ、そうじゃん……」


チャリンと財布が、空しそうに音を奏でる。

エミレはシルアの言葉が終わるころには、顔面蒼白になっていた。


「今、私たち、総額20ピグもないんだ……」


「いや、今、エミレが変なのを買ったから、残金はあと11ピグです。」


「はっ、こうしてはいられない!このままでは、路上覇者生活がはじまってしまううううう」


そう叫ぶと同時に、エミレはものすごいスピードで町の中心――冒険者ギルドへと走り始める。

どうやら、覇者の名において、路上生活を行うというのは屈辱的であったらしい。


「ちょ、まってよ、エミレ!」


シルアも慌てて、彼女の影を追うが、到底追いつかない。


「カキャン……」


呆れた1振の鳴き声は、夢が渦巻く町のにぎやかさにもみ潰されていくのであった。


****


「はぁはぁ、エミレっ、はやっい、よ。」


息を途切れさせながら、シルアは言葉を紡ぐ。


「いやぁ、覇者だからね。しゃーない!!

 ……そんなことより、ここが冒険者ギルドであってるよね?」


彼らの目の前には、町のどの建物よりも、豪華に設備された大きな建物があった。

その豪華な扉の上には、誇らしげに『冒険者ギルド~コラーレー本部~』と書かれていた。


「おっほお!すごい威圧感。お城みたい~!」


「すご、冒険者ギルドって、こんなにも大きいんだ……」


エミレが胸を躍らせながら、扉を押すと、ギィと音を立てながら、扉が開く。


建物の中は、石造りの壁が広がっており、床には赤色のカーペットが全面に敷かれている。


その中でも、真っ先に目に入ってくるのは、掲示板に張り付けられた大量の依頼書。

難易度別に、掲示板が分けられており、その報酬額も安いものでは10ピグから高い物なら1000ピグまでと青天井である。


そして、正面には受付。

そこには、清潔感溢れる制服に身を包んだ女性たちが立っており、依頼志願をする冒険者の対応にせわしく追われていた。


「盛り上がってるね!!」


「ふかふかな、床……」


煌びやかなギルドの様子に、エミレはせわしくあたりを見渡しながら、

シルアは床の感触を靴で確かめながら、しばらく呆然とする。


「ん?」


が、突然、エミレのアホ毛が、ピョンとある1点を指し示す。

すると、彼女は血走った目で、アホ毛の向く方向へ顔を動かす。


「……あ、発見……!!

 やはり、私のぼいんセンサーに陰りはなかった!」


「いや、どういうセンサーだよ……」


引き気味のシルアを無視して、エミレ、いやイノシシはまっすぐと獲物(カウンターの一角)に飛びつく。


そして――


「ねぇねぇ、おねーさん!!私に雇われない?どおどお?」


エミレは突如、受付のカウンターの女性に声をかける。

目の前には、眼鏡をかけた、美女Withぼいん。

彼女の髪は天の川のような群青色で、長く、その瞳には、髪を照らすような黄色い光を宿している。


女性は無表情で、近寄りがたい雰囲気が漂うが、

エミレはそんなことはつゆほども気にせず、笑顔で彼女の手を握る(セクハラを犯す)


「……」


2人を包むのは、運命の沈黙。

永遠のように感じられるその見つめ合いは、


「失礼ですが、冒険者様?

 あなたのおつむはぶち壊れているのでしょうか。

 勧誘をするのなら、まず名乗ってくださいな。」


女性の口から、抑揚のない声で、冷たく、つららの様に言葉が吐き出されたことで終焉を迎える。

と同時に、エミレの手は、パシとはたかれる。


「はうっっ!!」


刹那、エミレの心臓は貫かれる。もちろん、心理的な意味で。


「ハフッケ」


同時に、リュドエールルも。


((夜空のような儚げな見た目に反して、その内面は、絶対零度のクゥルビュウティー、あかん……完全に惚れた!!))


「わ、私はっ!エミレって言いますぅ!えっとぉ、隠居中だったしがなき覇者ですぅ!

 あの、そのぉ、よろしければっ、おねえさんのお名前も教えてくれませんか?」


顔を赤らめ、身体を蛇のようにくねくねさせながら、エミレはゆっくりと言葉を紡ぐ。

これぞ、エミレ奥義、お願い(ぶりっ子)


シルアで実証通り、エミレは残念ながら、世界トップレベルの美少女なのでそれなりの効果はある、はず……

だったが、女性は微動だにせず、虫を見るような眼でエミレを一蹴する。


「あ、貴方に名乗る必要性は感じないので結構です。

 それで、クエストの依頼でも受けたいのですか?」


完全なるノーダメージ。


(なんと、私の奥義が効かないなんてッ!!でも、その視線はおいしい。じゃなくて、こうなったら……)

くううと唇をかみながら、エミレは次の策を思いつく。


「今このギルドで依頼されている、1番難しい依頼をお願いしますっ!!」


エミレの声は、広いギルドの室内で、盛大に響き渡る。

まるで、窓を蹴り割ったかのように。


瞬間、

(はい。エミレ、やると思った~詰んだ~)

シルアは悟り、


「おい、また新人がばかやっているぞ」

「どうせすぐ、依頼なんてほっぽって、すぐ逃げるよ。」

「けっ、めんどくさ。誰か止めてくれよ。」


ギルド内の冒険者たちは、一斉に騒がしくなる。


そんな中、椅子をゆっくりと引いて、立ち上がる人影が3つ――


「「「おいおい、ツインテールのおじょおちゃん。ちゃっくら、俺らのマイハニーにならねぇか?」」」


――エミレに突如プロポーズをした3人衆とは一体!?

覇者の運命の出逢いによる、荒波はまだはじまったばかりだッッ!!

読んでいただき、ありがとうございます!

どうも、脳が焼けてるルアンです(*- -)(*_ _)ペコリ

今日は頭がポンコツなので文章がいつも以上に飛んでるかも!……それも味だと思って許してネ!


ついにコラーレー編突入!毒舌おねえさんとエミレ奥義(お色気ver.)が炸裂しましたね笑

次回、キャラ&能力一覧出す予定なのでぜひ~!そして300PV間近…本当にありがとうございます!!

ではでは、また次の話でお会いしましょ~またねっ!(@^^)/~~~

あとがき全文↓(もしくは上のシリーズ一覧から!)

https://ncode.syosetu.com/n9016kh/12/ 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ