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同窓会にマウントをしに行く予定だから


「同窓会にマウントをしたいから、結婚してくれ」


 ポカンとする後輩社員の美少女。

 

「あのー、偽装結婚は駄目ですよ」


「真実の愛だ」


「同窓会理由にプロポーズされても断りますよね。普通」


 撃沈した。

 俺は、同窓会でマウントするためだけに頑張ってきたのに。

 いかん、30歳の同窓会では結婚して、高級腕時計とマイカーで武装して、見下してきたクラスメイトを足蹴に勝ち組アピールするはずなのに。

 第一の難関、結婚のハードルが高い。


 腕時計と車はなんとか中古市場でゲットして、体裁を整えた。しかし、結婚に中古市場はないのだ。あるんだけど、バツイチの結婚相手だとマウントが取りづらいじゃないか。

 

 どうしようか。真実の愛は、目的不純の因果律であえなく砕けた。

 俺は、自暴自棄だった。

 撃沈したあと、酒を呑んで、ぐでんぐでんと歩いていた。

 そこで、俺は何を思ったのか、ナンパした。

 可愛い子がそこにいたから。そこに山があるように、男という生き物は本能に忠実だ。


 結果は成功したようだ。

 うん、今、朝だ。

 時のスピードは早いなぁ。この子、学校の制服を着ているけど、まさか現役のアレじゃないよね。

 まさか同窓会前にニュースで名前が知れ渡るみたいな。でも飲酒は愛国無罪のように、判断能力なしで推定無罪だよね。お酒を飲んでいれば、何をしても許されるよね。

 現実逃避をしながら、インスタントコーヒーをいれた。俺は、鋭い脳みそを取り戻さないといけない。

 飲酒運転だけは許されてなかった気がする。

 さて、コーヒーを片手に、どこで買ったのかコンビニの袋の菓子パンを食べる。


 今、全てわかった。

 現役のアレのブランドで、同窓会でクラスメイトをぶっ潰せと神は言っているのだ。

 この拾った子猫ちゃんで、俺は10代の彼女がいるんだ宣言をしろと。20代の結婚相手vs10代の彼女。

 天秤の針はどちらに傾くか。若さ定数は、1年で100万円の差をつける。よって、連立方程式は形すらも分からず、解法が明らかになる。多分、対角化して掃き出し法でインバースでエルミートしたらジョルダン標準形だ。意味不明な大学時代の線形代数が頭を駆け抜けた。

 さっそく、彼女を起こす。

 大丈夫。俺はベッドで着衣が乱れていない彼女に安心した。俺は忍耐力のある大人だった。添い寝はしても、それ以上はしないのだ。ノータッチだから、犯罪じゃないよね。え、誘拐、略取、なにそれ日本語分かりません。

 

「あ、えーっと」


「お姉ちゃんがお世話になっていました」


 高校時代の元カノの妹だった。

 いや、もちろん、俺は高校時代に彼女がいた。だってマウントするためには必要だったから。

 くっ、俺の美少女センサーが高校時代の幻影を追っていたとは。


「あんな夜遅くに一人でいたら危ないよ。たまたま知り合いの俺がいたから良かったけど」


 大人の体裁を装うことにした。

 俺は保護した保護者。

 そんな目で俺を見るんじゃない。推定無罪だ。


「同窓会に行くんでしょ」


 酔った俺。何もかもをぶちまけていそうだ。

 誓おう。

 今後、酒は飲まない。

 もう100回は誓った。100度目の正直だ。





 同窓会にベンツでJKを連れてきた。

 もちろんkとはケルビンの略だ。jはジュール。

 よってジュールケルビン、略してJK。


「俺は犯罪者じゃない。ただアラサーの同窓会に一回り小さい彼女を、連れてマウントを取りに来ただけの男」


「あのー、ハンドル握る手震えてますよ」

 

「元カノ、来てるかな」


「お姉ちゃんは、いい旦那を連れてマウントを取ると張り切って婚活してました」


「よし。来ないな」


「元カレの弟を捕まえたって言ってました」


「俺は赤信号を無視して交差点を突っ切った」


「危ない運転はやめてください。ギリギリアウトでしたよ」


 くっ、隣にいるのが現役jkでなければ。19歳なら何をしても許されるのに。でも飲酒は、だめだったか。



 同窓会の会場に入った。

 もちろんJKはコアラのように腕にしがみついている。


 瞬間、俺は全員の目線を釘付けにしながら、冷たい目で見られた。

 その瞬間、悟った。

 これ元カノの罠。俺を振った腹いせに、自分は可哀想なヒロインアピールをすでにこの場で仕込んでいたのだ。

 だがいいのか。

 このままだと欲しがり妹としてお前の妹もザマァされる展開だぞ。

 婚約破棄なんて2年前にしたじゃないか。

 今更、こんな断罪イベントなんて、同窓会は過去の因縁をほじくり返す場所じゃないよね。


「待て。冷静になろう」


 数年ぶりのクラスメイトたちの刺すような視線に俺は後ろずさりながら言う。

 何故か逃さないよと、腕にまとわりつく豊満なボディがガッチリ。


「い、いったい、俺が何をしたって言うんだ。ただ10数年付き合って別れただけじゃないか」


「、、、、、、、、、」


「あ、ちょっと、待って。わかった。よりを戻そう。なぁ、人生行き違いがあるものだろう。あの頃は若かった。若気のいたりなんだ」


「さて、お酒を、飲ませようか、みんな」


「待て。俺は酒を飲まないと誓った男だぞ」


 その後、同窓会にマウント男は姿を現さなくなった。

人が減ったね。なろう。

ただの生存報告のようなショート。

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