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テディーベアとクリスマス

作者: 萌乃

「ちょっと、兄ちゃん早う起きなはれや」


朝っぱらから、べしべしとたたき起こされた。


「で、何食べるんや。パン? ご飯? それともわしか?」


――なんだこの下ネタ野郎…。

しかし、顔だけ見ていると、とても可愛い少女である。

白いワンピースにピンクのフリルがたくさん付いたエプロン。


こいつと出会ったのは、つい昨日のことだった。



今日は12月24日。

恋人たちの聖夜。

いわゆるクリスマス・イブだ。

だが、15歳で、来年は高校受験の中3の俺にとって、そんなものは関係ない。


塾からの帰り道そんなことを考えた。


「はぁー…」

ため息をつくと、その息は真っ白だった。


空を見上げると、ちらちらと白い雪が降っていた。



家に帰っても誰もいない。


しかし、ふと郵便受けを見ると、ここにだけはクリスマスが来ていたようだ。

宛先は俺。

送り主はサンタクロース。

たいして面白くもない冗談だ。

わかっている。


サンタクロースはいないってことぐらい。


「……」


――頭ではそんなことを考える俺だが、貰い物は大切にする男だからな…


少々苦しい言い訳を考えながら、包装紙をびりびりと破いた。

すると、中から赤い箱が姿を現した。


なんだろ……


ゆっくりと箱を開けると、中にはぬいぐるみが入っていた。

それも、けっこうでかい。

ふわふわとしていて、手触りのよいテディーベアだ。


――おいおい。俺は小学生かっつうの。

なんだよ、テディーベアって。誰が喜ぶんだよ。


それでも、俺はその手触りを楽しんでいると、そのぬいぐるみの背中部分にあたる所に何かがあることに気付いた。

よく見ると、ジッパーが付いていたのだ。


「何だこれ」


俺がジッパーに触れようとしたとき、「うぅううう」とうなり声がした気がした。

気のせいか、と思い直し、再びジッパーに触れようとしたとき、事件は起こった。


ぬいぐるみが、動いた。


けっして、比喩でもなんでもない。あろうことか、そのぬいぐるみは喋りだしたのだ。

ぴょん、と俺の腕から逃れたぬいぐるみは、びしっと俺を指さすと怒りを表した。


「ちょ、何するんや!」


「え、関西弁?」


「そこやないやろ! 兄ちゃんな、なに人の社会の窓、勝手に弄ろうとしてんねんっ!」


何故か関西弁を話すテディーベアは、どうやら相当頭にきてるらしい。


「で? 何の用や」


そして、とても偉そうな態度をとっている。


「しゃあないのう…。これやから、ゆとりは」


と、呟いたテディーベアは、お尻を振り振りして変な踊りを始めた。


――え、何コイツ。すごいムカつくんだけど!

ていうか、よくよく考えてみると、社会の窓って何だよ。どう考えても小物入れだろ!


そのとき、突然叫びだしたテディーベアは、またしても上から目線でものを言う。


「よう見とけよ……あ、来た来た来た、来たでーっ!」


そして、茶色いテディーベアは金色の光に包まれ、俺は、気を失った。



「…―! …い! おいっ、起きろ」


――どうやら、俺は気を失ってしまった。


「あれ、関西弁のテディーベアは?」


あたりを見渡しても、俺のそばには可愛い女の子が一人だけ。

しかも、もろタイプだ。

長い黒い髪に、透き通るような白い肌…着物が似合いそうな彼女は白いワンピースを着ている。


「はぁ? 関西弁のテディーベア? ぬいぐるみが喋るわけないやん」


……とても可愛いが、とても口が悪い女の子も、関西弁だ。


「兄ちゃん、願い事がなかなか言えんかったんは、まぁ思春期やもんな。しゃあないわ」


「願い事? なんのこと?」


「何を寝ぼけたこと言うてんねん。兄ちゃん、欲求不満で機嫌悪かったんやろ?」 


どうやら、この関西弁の可愛い女の子は性格も悪いらしい。


「せやからな、わしも考えたんや。流石に人を作ることは出来へんからな」


ふー…と、何かを成し遂げたかのようにキラキラしながら、胸のあたりをパタパタする。

それにしても、何を言っているのかはさっぱりだ。


「さて、始めよか」


女の子は白いワンピースに手をかけ、するすると脱いでいく。

ついには、下着姿になった。


「ちょ、ちょっと、何してんですか!」


「はぁ? あ、そうか、兄ちゃん自分で脱がしたいんか。とんだマニアックやのう」


「な、何言ってんですかっ…! ていうか、そもそも君は、誰なんだよ!」



……。


沈黙が流れた。


「兄ちゃん、大丈夫か? さっき、わしのことさんざん弄くりまわしといて、何言うてんねん」


何を今さら…というような顔で、その女の子は大きなため息をついた。


「え?! 弄くり……」


――そんな嬉しい覚えはな……ゲフンゲフン。


「さっき、って言えば、変な関西弁の奴しかいなかったはずなのに……」


「……。兄ちゃん。いい加減いらいらしてきたわ。わしの大切な社会の窓、開けようとしたん忘れたとは言わせへんで」


――社会の、窓…?


「え、いや、ええ?! けどさ、全然違うじゃん! フォルムとか性別とかぁっ!」


俺は、混乱していた。

だって、おかしいじゃないか!

この女の子は、自分がさっきのテディーベアだと言っているのだ。

どうしたら、ぬいぐるみが女の子になるんだよ!

そんなことは、あり得ないんだ。


「だからなぁ。もぉええわ。言っといたるわ」


すぅ、と大きく息を吸って、その女の子は目をぱちっと開いた。



「これが、クリスマスの力! クリスマスの魔法! 」


力いっぱい叫ぶ。


「そんでな、魔法は一生解けへんのや。…ふぅ」


「………。…ええー?!」


「なんやその、マスオさんみたいな驚き方!」


「じゃあ、君はずっと、そのままなの?」


「まぁ、そうなるわな」


「その格好のままなの?」


……。


その子はちら、と自分の姿を確認した。


「まぁ、あんたはんが望むならなぁ…ふふふ」


不敵に笑ったその様子は相当エロいが、さっきのテディーベアだということを思い出すと、若干いらいらした。


「ま、なんにせよ、これからよろしゅうな」


「いやいや……、どこへなりと帰って下さいよ」


「断る」


俺の言葉を無視して、そのよくわからない女の子(?)は勝手に俺のベットに、ぽすっとかわいらしく座った。


そして、そのまま住みついてしまったのだ。



「おい、兄ちゃん。回想はいらんから! 学校遅刻しまっせ」


結局、ホットケーキを勝手に作って俺に無理やり食わせた。


「う、うぐっ…。あ、うまい」


若干、荒々しく口に突っ込んでくることは、この際気にしないことにした。

それでも、家にこんな可愛い子がいて、朝起こしてくれる。

そんなシチュエーション、なかなかないもんだ。


「サンタクロース、本当に居るのかもしれないな」


ふと俺は、そんなことを呟いたのだった。



お久しぶりです!最近あんまり更新してませんでしたがお許しください!

今回は、久しぶりの短編です。

続きが読みたい!と思えるような作品ではありませんが、そこは皆様の妄想で続きを考えてください★

このあと、めくるめく起こるR15なイベントなんかm…ゲフンゲフン

それでは皆様、メリークリスマスっ!!!!!

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