表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

1:”納豆巻き”

これは、実話にそこそこ脚色したお話です。

オチのない話が大半なので、生暖かい目で見てください。



 とある土曜の12時過ぎくらいの話です。

 私はレジ打ちの傍ら、レジ近くにあるお弁当コーナーの整理をしていました。

 お昼時となれば、いろんなお客さんが訪れてお弁当を買っていくもので、どうしても売り場はスカスカになりがちです。その売り場を補充しているときに、彼らはやってきました。


 70代くらいのおばあちゃんと、中高生のお兄ちゃん。そして、小1、2くらいの少年の3人連れでした。どうやらおばあちゃんがお昼を買いに来たようで、お兄ちゃんと少年のお弁当を買いに来たようでした。

 お兄ちゃんの方はささっと決めておばあちゃんに渡していたのですが、少年の方は「のりまき! のりまき!」と言いながら、上機嫌に跳ねて、おばあちゃんの周りをうろちょろしていました。


 少年の言うのりまき、つまり巻き寿司は、お弁当コーナーの下から3段目にあります。多少跳ねたくらいじゃ、少年の目線には入りません。おばあちゃんの方も、あまり目が良くないのか、見つけられていない様子でした。お兄ちゃんはさっさと隣のパンコーナーを物色しに行きました。


 ちょうど近くにいたからでしょう。私はおばあちゃんに「海苔まきはどこにありますか?」と尋ねられ、「こちらです」と、納豆巻きが置いてある場所を指しました。

 おばあちゃんはそれを手に取り、「◯◯(少年の名前)、これでいいかい?」と、少年の前に差し出します。

 すると少年は「やった! 納豆巻き納豆巻き!!」と、嬉しそうに、先ほどまでの2割増しで、おばあちゃんの周りを跳ね回り始めました。


 私はそれからレジに戻り、その数分後。その3人組が、私のレジまでやってきました。少年のテンションは相変わらず、「納豆まき♪ 納豆まき♪」と、リズミカルに口ずさみながら、レジを通すのを待っています。


 突然ですが、私のバ先では、従業員全員が名札をつけています。それも漢字ではなく、誰でも読みやすいようにと配慮された”ひらがな”で、です。当然私も、その時は名札をつけています。


 私が商品をレジに通している間、妙に少年がこちらに視線を向けているなと思い、おもむろに少年の方に向き直ってみました。すると、

「◯、◯、◯、◯!」

 名札に書かれたひらがな、つまり私の名を、1文字ずつ丁寧に読み上げたのです。ひらがなが読めるのが嬉しかったのでしょう。とても上機嫌に、まるで自慢するような表情でした。

 私は軽く「はーい」と小さく手を振りました。すると少年は、ぱぁと表情を輝かせ、大きな身振りで手を振りかえしてきました。

 ちょっとだけ隣にいたお兄ちゃんに当たってしまい、抑えられてはいましたが、それでも彼はとても上機嫌で、商品を通す私の手元を眺めたり、おばあちゃんやお兄ちゃんの周りをくるくると回っていました。


 商品を通し終わり、会計を済ますと、近くの台で商品を袋に詰め始めます。その時私は別のお客さまの会計をしていたのですが、おばあちゃんが何かを言ったのでしょう。帰り際、「やったぁ!」と一際大きな声を上げ、少年たちは去っていきました。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ