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第75話 ESCAPE

 長い廊下、カレらが道を塞いで進むのもままならない状態で廬は先に進むと開けた場所にきた。

 左右にはコンソールと思われる機械が設置されている。中央には培養槽のような筒状の装置。

 明らかになにかの実験をするために用意された部屋だ。


「憐っ!!」


 瑠美奈が廬の手から離れて中央の装置に近づく、そこには両手を頭上にあげられ手錠に吊るされた憐。瑠美奈は憐を下ろそうとするが廬は止めた。


「瑠美奈、憐を下ろすな」


 瑠美奈はどうしてと廬を見る。


「俺たちが立っていられる。憐の後遺症を考えれば燃える」


 憐の足は焦げている。それを垣間見るに憐は後遺症をギリギリの位置で吊り上げられたのだろう。


「なら僕が彼を背負いましょう」


 劉子と一緒にいた鷹兎が言い瑠美奈の所に行く。

 物音や話し声で憐は意識を取り戻した。先ほどまで気を失っていたのだろう。

 僅かに呻いて目を開いた後、嗄れたか細い声で「お嬢?」と呟いた。


 廬も下ろすのを手伝う。鷹兎に床に憐を触れさせないように伝えて持ち上げる。


「くそっ……ド屑に、助けられるとか……最悪っす」

「そんな事を言っている余裕があるのか、流石だな」


 廬の悪態も忘れずにやっと足が曲げられると弱りきった手をなんとか動かそうとするがまともに動けない。旧生物である鷹兎に素直に背負われて文句も言えなかった。


「憐、真弥は?」


 瑠美奈が尋ねると憐は申し訳なさそうに顔を伏せた。

 どこにいるか分からないのだ。


「俺と天狗の他にも……いるはずなんすよ」

「ほか?」


 憐は吊るされていた所為と瑠美奈に会えた安堵からなのか瞼が重くなっていく。

 あと一人、憐と真弥、その他にもう一人。

 だがそれを言う前に憐は目を閉ざして眠ってしまった。


「他にも連れてこられた人がいるらしい。俺が探してくる。三人は憐を病院に連れて行ってくれ」


 廬だけが残りの二人を探してくるというと鷹兎が否定した。


「それじゃあ、数が合わないです。真弥と言う方ともう一人いるとしたら貴方だけでは到底地上に連れてくことは不可能です。地下に誰がいるかも僕には分からないですが、貴方だけを残して地上に行くなんて出来ません」

「憐を放置できない」


 劉子と瑠美奈が顔を見合わせて頷いた。


「……鷹兎さん。わたしたちのおねがいはきいてくれるんだよね?」

「はい。出来る限りの事はするつもりですが」

「じゃあ、憐をびょういんにつれていって」

「え?」

「わたしと劉子、廬がここにのこるから」

「です」


 廬と三人、此処を調べる。憐の安否が今は優先させる事だ。

 廬は何か言いたそうだったが総合病院に憐を連れて行くように鷹兎に伝える。


「栗原純って看護師がいるんだ。その人に新生物だと言えば通してくれる。それと憐は地を踏むことは出来ない。なるべく床に足を近づけないでくれ」

「わかりました」


 そう言って鷹兎は憐を背負ってエレベーターのあった方へ駆けて行った。

 鷹兎を見届けた後、廬は瑠美奈たちを見る。

 残って良かったのか。この状況を見続けるのは気分が良いわけじゃないだろうと言いたげな視線を向ける。


「瑠美奈さんは貴方のことが心配してるです」

「俺は平気だ」

「へいきじゃない!」

「っ!?」

「廬は、わたしをたよった。憐をみつけるために、真弥をたすけるためにわたしをたよってくれたのにどうしてまたひとりでいこうとするの!」


 瑠美奈を頼っていながら結局廬は一人で先に行ってしまう。瑠美奈はそれが気に入らないと廬を怒った。


「わたしはおにだよ! おにはだれよりもつよいの!」

「言い切りやがりましたです」


 鬼の娘である瑠美奈だからこそ出来る事がある。出来る事しかない。

 怪我を恐れていたら何も出来ない。瑠美奈は怪我なんて恐れていない。

 死ぬ事を恐れていない。


「かってにわたしをかわいそうなこあつかいしないで!」


 廬が勝手に瑠美奈を子ども扱いしているだけだ。瑠美奈もそれに慣れていたが、廬には大人として扱ってほしいと思うようになった。可哀想な子だと、両親を食べてしまって一人になった事に同情する廬が嫌いだった。


 最強の鬼の娘。

 たった一人の生き残りだと哀れむなと瑠美奈は廬を怒った。


「……瑠美奈」

「わたしをたよって、もっとたくさん! わたしができないことを廬にたよるから、いまはわたしをたよって」


 出来もしない事をやろうとしないで良い。出来ないのなら出来ないで良い。

 それで怒ったりしない。出来ないのなら頼って欲しい。瑠美奈でも憐でも儡でも、誰でも良い。


「廬にはわたしがいる」

「私もいるです!」


 ずっと守るべき対象だと思っていた。

 瑠美奈を守って、瑠美奈をどうやったら宝玉の呪縛から、厄災の呪縛から解放出来るか考えていた。解決策はいまだ見つけられていないのに瑠美奈は強気で廬を救おうとしてくれる。

 か弱い少女扱いをする廬が気に入らなかった。か弱くても何も出来ない訳じゃない。その強さがある事を廬に証明したかった。


「ごめん、瑠美奈。劉子もありがとう。そうだ、俺はお前を頼ってる。それなのに此処で終わりなんてどうかしてる。お前の力を甘く見てた」

「うん」


 その見た目の所為で幼い少女だってこれからも思うだろう。しかし瑠美奈はちゃんと覚悟出来た新生物だ。憐のように守るべきモノの為に穢れる事を恐れていない。


「真弥を探すのを手伝ってくれ、二人とも」

「うん!」

「です!」

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