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第117話 ESCAPE

 劉子と佐那が周東ブラザーズを守っている為、瑠美奈、廬、憐、儡、ミライの五人で鬼殻を探すことになったが探すと言ってもすぐに見つけることは出来た。

 筥宮研究所があるビルの屋上で待っていた。


「バカは高い所が好きだって言うよね」


 儡が嫌味を言うと鬼殻が降りて来る。

 優雅に降りて来る感じが鼻につく。


「私が馬鹿だと言うのなら同じ血が流れている瑠美奈も馬鹿になるのでは?」

「お嬢は天才肌で、反面教師なんすよ」

「ああ言えばこう言うとはこの事でしょうか? きっと私が何を言っても貴方たちはそれと反対の言葉を言うのでしょうね」


 やれやれと子供相手に疲れた様子を見せる。


「さて、此処にいるという事は、瑠美奈は私が持つ二つの宝玉以外を取り込んだと考えて良いのでしょうか?」

「まだ。憐のほうぎょくはもってない」


 まだ瑠美奈は四つしか取り込んでいない。


「四つを取り込んで生きている。もっとも支配する時間が合ったからなのでしょう。ならば、残りの宝玉を一度に取り込めば貴方は死ぬ」

「ひていしない」


 鬼殻は肯定されたことで「ふふっ」と笑う。


「鬼殻、お前はどうしてそんなに瑠美奈を殺したがる? 宝玉だけを破壊するのじゃダメなのか」


 気になっていたことを尋ねると「その方法は既に試しました」と答えられる。


「私が持っていた青の宝玉。壊れないのですよ。どれだけ重圧をかけても、どれだけ熱しても、凍らせても、機関銃で連射してみても、超電磁砲を試しても、傷一つつけることは出来ませんでした。唯一亀裂を作る事が出来たのは、宝玉の過剰使用による過負荷。ですが、生憎とそれを七つ分するのは時間がかかり過ぎる。効率も悪く美しくはない。何といっても、宝玉が粉砕する前に宝玉の過剰エネルギーによるオーバーロードで宿主は爆散してしまう」


 透明の宝玉を鬼殻は持ち言う。偽廬が宝玉に拒絶されながら宝玉の力を使おうとして反発しあってしまった結果僅かにでも亀裂が出来ている。


「なので、私は考えたのです。完全に取り込み支配できてしまえば、宝玉は器に溶け込む。宝玉を全て取り込んだ器を殺してしまえば、宝玉は消失して厄災を停める事が出来るとね」

「だから、適合率の高い瑠美奈に宝玉を全て与えて殺すのか」

「ええ、その方が被害も少なく効率的です」

「全て支配して瑠美奈が管理するだけじゃダメなのか」

「意味がないでしょう。宝玉が揃う場所に厄災は発生する。言わば目印でしかないのですよ。強力なエネルギー体に引き寄せられて厄災は起こる。全てを支配した瑠美奈のもとに厄災はやって来る。一人孤独で生きるより、此処で誰かに看取られた方が幸せだと思いますが?」


 孤島に瑠美奈を置いても島が厄災で消し飛ばされてしまえば、意味がない。規模が分からないのだ。いつだって厄災の規模は測定不可能。瑠美奈が人から離れて生活しても世界を滅ぼす規模ならばどれだけ離したって意味がない。


「どうせなら、宇宙にでも飛ばしますか? 常闇の宇宙に打ち上げて、定期的に食事をロケットに乗せて、飼い殺しますか?」

「てめえっ。何言っても良いと思ってんすか!」


 瑠美奈が何処に行こうと厄災が付いて来るのなら、全てを支配した瑠美奈が宇宙に行けば厄災は宇宙に発生する。だが、それによって太陽や月が消失するかもしれない。他の惑星が爆発して隕石として地球に降り注いでしまう可能性だってある。

 宇宙にいる瑠美奈だけが生き延びて、地球にいる生きとし生けるもの全てが隕石で滅びるか。瑠美奈を殺して厄災を消し去るのなら誰だって後者を選ぶに決まっている。


「何を言っても良いと思っていますよ? 貴方たちはそれをしようとしませんから、言うだけなら許される。もっとも近年は言うだけで罪に問われるので生きづらいとは思っていますがね。言葉狩りも大概にしてほしいものです。憐君、貴方に言っているんですよ? 貴方のような人が過剰反応するから私のような会話が好きなものが駆逐されてしまう。それなのに個人の主張性を求められる。何とも理不尽でならない。けど、捨てられないものですよね。これほど迫害されていると言うのに、私は世界の為に妹を殺さねばならないのですから」

「それじゃあ、何も解決しないわよ」


 黙っていたミライが口にする。


「瑠美奈が宝玉を全て支配しても厄災が起こるのなら、廬たちがしていることも無意味。糸垂棉葉は言っていたわ。宝玉を持つ者が死んでも次の宝玉が生まれるって……鬼殻、あんたのしている事に意味はないわよ」


 廬の中に合った透明の宝玉。そのまま廬が持っている状態で死んでいた場合、透明の宝玉は何処かでまた生まれる。ならば、瑠美奈が全てを取り込み瑠美奈ごと宝玉を抹消したところで再び厄災はやって来る。


 瑠美奈が無駄死にになる。


「ええ、知っていますよ?」

「っ!?」


 平然と言った。鬼殻は不思議なことは何もない。

 まるで「今更そんな事?」と言いたげな純粋無垢な顔をしていた。

 その事に罪を感じていないし、いけない事だとも思っていない。


(コイツっ……まさか)


「まさか、あんた。厄災の法則をぶち壊すつもり?」

「そのまさかですよ。何もかも貴方と言う魔術師の言う通り。私は、厄災を消したいのではありません。厄災を一時停止したいのです。瑠美奈を殺せば暫く厄災はやってこないでしょう。様々な罪が集合した結果、宝玉と言う形で生まれる。それまで世界は平和が保たれます」

「そんなまがい物の平和に何の意味がある!」

「意味ですか? んー。答えても良いですが、ご自分で考えてみてはいかがでしょうか? もっとも一時停止してもすぐに復活してくるでしょうけど……なんて言っても各国は戦争好きが多いですからね。血と涙が満ち宝玉は罪を吸い上げて完成するでしょう」

「連鎖を続けるのか。無意味の連鎖を! それはお前の言う穢れじゃないのか」

「厄災は穢れていると思いますが、宝玉その物はとても美しいものですよ。純粋の罪。これほど美しいものはないと思いますが? 可視化出来ない善意よりも私は好意的ですよ? 世界にはそれだけ罪が蔓延っている。世界がいつ罪に気が付き争いをやめるのか。今から楽しみです」


 争いを辞めなければ世界から厄災はなくならない。


「小さな争いから大きな争いまでこの世のありとあらゆる罪が無くなれば、きっと私が理想とする世界が完成する」

「きもっ」


 ミライは呟いた。咄嗟の事だったがそれを否定するつもりはなかった。

 喧嘩までもが罪だと言うのなら、こんな世界は厄災が全て吹き飛ばしてしまえば良い。厄災が消えたのならミライが全てを滅ぼしてしまうだろう。


「異世界人には理解出来ないことでしょう?」


 鬼殻が言った瞬間、ミライの目の前に鬼殻がいた。


「なッ!」

「私をただの新生物と同じにしないでください」


 鬼殻が仕掛けて来る前に魔術で空中退避しようとするが間に合わずビルの中に投げ飛ばされた。


「ミライっ!」


 憐が向かおうとすると鬼殻は憐に標的を変えて向かった。


「貴方が一番、仕留めるが簡単なんですよね」

「ッ!? クソがっ」


 自慢の脚力を使い後退する。

 憐の特異能力は、憐自身には意味をなさない。


 憐は鬼殻に手首を掴まれて地面に叩きつけられると炎が憐を襲う。


「あ"ァ"あ"あ"あァッ!!」

「憐っ!」


 ミライは瓦礫の中から何とか憐を浮遊させて炎を消し止めるが身体が痙攣して動けなかった。


「二人撃沈です。さて、次はどうします?」


 鬼殻が楽し気に笑う。

 瑠美奈も廬も儡もその速さには付いていけなかった。

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