空中の旅
少女に助けられてもう10…15分か?
どうやら「月魔術」なるものが使えるらしい。
月…空にある天体…そう考えるとこの魔術もそれに準じるものだろう。
「…そろそろ何か話してくれませんか?なんで能力が発現してないんですか、普通学校で発現しますよ?」
どうやらこの世界にも学校なるものがあるらしい…
「そ、そうは言われても…名前すら覚えてないんだよ…」
はぁ〜、と溜息をついた。
そういえば、助けられたお礼をしていなかった。
「あ、ありがとう…ええと…」
「タニアです、タニア・エルビング」
そう言うと彼女はこっちを睨んできた。
「それで、そっちは…名前すら覚えてないんですか?それは困りましたね…」
そしてこの光の球体が向かう方に目線を向けた。
「こっちは街の方角です。とりあえずは助かりましたが…」
またこちらを睨む。
その綺麗な真朱色の目には、疑いの炎が燃えて居るのを感じる。
「まずは身元確認からです。ちょうど今、街に“高度神官”が来ているので調べてもらいましょう」
「…光度震撼…?」
「“高度神官”です!そんな事も分からないなんて…何者なんですか…」
溜息をつき、この2人きりの状況を気まずく思ったのか再び話してきた。
今度の目は、疑ってはいないようだ。
「しょうがないですね。じゃあ私が街に着くまでの間、簡単に授業をしてあげましょう。」
何か呪文を唱えると、チョークと黒板の様なものが出てきた。
「いいですか、人間は基本的に、個人差が有るものの「能力」を保有しています。」
「は、はぁ…」
「個人差というのは…能力の違いだったり、発現する年齢等が挙げられます。」
……
「私は5歳の頃に『月』の能力を発現しています。」
この人と初めて会ったのに、何故か話が長くなる気がする。
「しかし能力にも種類が…」
眠い………
「これは学会の研究ですが…」
zzz…
「そして能力は…」
………すやすや…
「…寝てますね、しょうがない…『フォール』」
寝ていると、急に頭に重い物体が降ってきた
「痛っ!さっきの化け物か!?」
「違います!寝てるからです!はぁ…折角教えてあげたのに。」
そういえばそんな話だった。どうやら寝てしまったらしい
「…もういいです。それより街に近づいてきましたよ。早く降りましょう、『ルナ』」
タニアが唱えると、すぐに球体が地上に降りて、光が霧散した。
「それじゃあ、行きましょうか。あなたの事を必ず調べてやります。」
そう言って、手を引っ張って街へ駆け出した。