鏡
向かいのマンションからずっとこちらを見てくるひとがいる。わかることは、そのひとの髪の毛は短いことだけ。はっきりと見えるほど、距離は短くない。
いつも同じ姿勢で見てくる。ほんとうはマネキンかもしれない。
そんなことはない。
あちらのマンションは白色。だからか、窓の中は見づらい。周りの色が明るいと、見えやすいと思った。でも、そうではないらしい。
こっちは明かりを点けるよ。見えやすいように。
だから、そっちも点けてよ。点けてよ。
そうか。点けないのか。それなら、窓の近くの椅子に座るよ。
そちらが明かりを点けるまで。
待ってるよ。
はやく。
はやく。
はやく、点けてよ。