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神様は泣いていた。  作者: 神影聖(みかげひじり)
3/3

〜とある巫女の1月1日Ⅲ〜

もう!貴姫(きき)ちゃんったら!可愛すぎでしょ!!⁦(ฅ>ω<ฅ)

「で、貴姫(きき)の好きな人って、誰なの?」

ワセリンの容器の蓋を開けながら、和花(わか)が切り出した。貴姫(きき)が恋愛御守りをつまみ上げた時から気になっていたのだが、聞く暇がなかったのだ。さり気なさを(よそお)(ため)(ふた)を横に置いて、中のワセリンに人差し指を突っ込んだ。

(ちまた)(うわさ)のイケメン高校生。和花(わか)って長谷本(はせもと)君一筋(ひとすじ)だからさ、名前聞いても知らないと思うけど。」

さらっと答えてから、貴姫(きき)が横目で和花の顔を見やる。和花(わか)裕也(ゆうや)以外の異性に全く興味を示さない。誰がイケメンだとか、誰がそのイケメンと付き合ったとか等の、(ちまた)(うわさ)(うと)い。

「あはは、だって私にとっちゃ裕也(ゆうや)以外イマイチだもん。」

和花(わか)微笑(ほほえ)んだ。微笑(ほほえ)むといっても、普段とは少々(こと)なる。それは大切な人を(いと)おしむ、とても優しい笑みだった。和花(わか)本人は慣れた手つきでワセリンを塗り伸ばしているから無意識なのだろうが、貴姫(きき)和花(わか)裕也(ゆうや)の話をする時に、必ずこの表情になることを知っていた。

青上真(あおがみまこと)っていう、六木高等学校(むつぎこうとうがっこう)の2年生なんだけどさ、この前、公園で1人でバスケの練習してるのを見て、一目惚(ひとめぼ)れしちゃったんだよね。なんか、こう、自分でもよく分からないんだけど、カッコイイなって。私、やっと恋する乙女の気持ちが分かるようになったよ。」

鳥居(とりい)の上に止まった夫婦鳥(ふうふどり)を眺めて、貴姫(きき)がしんみりと語った。ふいに、夫婦鳥(ふうふどり)が飛び上がり、貴姫(きき)の視界から消えた。

貴姫(きき)の初恋かぁ〜!」

和花(わか)貴姫(きき)にワセリンの容器を差し出した。その顔はにやりと笑っている。恋する乙女となった貴姫(きき)を面白がるような顔だ。

「何よ、偉そうに。和花だって初恋じゃん。」

少しむくれた態度で貴姫(きき)が言い返し、ワセリンの容器を引ったくった。

「私の方が片想い歴長いでしょ。」

ふふん、と和花が背伸びをして、貴姫(きき)を見下ろす。貴姫(きき)は手の甲にワセリンを塗りつつ、和花(わか)を見上げた。

「片想い歴長いって、それ悲しい事だよ、自慢にならないよ。」

貴姫(きき)がツッコんで、笑声(しょうせい)が起こる。もう、日は西の空に(かたむ)き始めていた。ひとしきり笑いが続き、それが(おさ)まると、2人は境内(けいだい)を見渡した。チラホラと人が減り始めている。夕方だしそろそろ年寄りが増えてくるかな、と和花(わか)が考えていると、貴姫(きき)があっ、と声を上げた。

「見て見て、あの人、青上(あおがみ)さんかも…!?」

貴姫(きき)が指差す方を見ると、コートを着込んだ長身が2人の方に近づいて来ていた。貴姫(きき)はらしくもなく慌てふためいている。

貴姫(きき)、ほらしっかり!」

和花(わか)貴姫(きき)の背を叩き、無理やり前に押し出す。丁度(ちょうど)社務所(しゃむしょ)の前に立ち止まった青上(あおがみ)がにっこりと微笑んだ。貴姫(きき)(ほお)に赤みが差す。横で見ていた和花(わか)は、イケメンというより美しいと感じた。

「明けましておめでとうございます。えーと、この2番の安全御守りの青をください。」

青上(あおがみ)から先に挨拶して来た。客に先に挨拶させるのは接客上(せっきゃくじょう)失礼だ。和花(わか)は横目で貴姫(きき)(にら)み、その背を押した。貴姫(きき)がよろめいて1歩前に出る。和花(わか)に押されて接客しなければならなくなった貴姫(きき)は緊張しながらも口を開いた。

「あ、明けましておめでとうございます…!えと、2番ですね!分かりました!」

和花(わか)に目で合図する。和花(わか)はこくりと(うなず)き、紙袋を取り出した。

「600円になります。」

うわずった声で貴姫(きき)が言うと、青上(あおがみ)は笑顔のままコートのポケットから財布を取り出した。優雅(ゆうが)所作(しょさ)が彼の美しさを際立(きわだ)たせている。カルトンに百円玉が6つ、丁寧(ていねい)に置かれた。青上(あおがみ)見惚(みと)れていた貴姫(きき)が慌てて百円玉を手に取る。そんな貴姫(きき)を見つめて、青上(あおがみ)がふと呟いた。

「やっぱり巫女さんは可愛いなぁ。」

「っえ。」

貴姫(きき)が手から百円玉を落とした。和花(わか)さえも思わず片手で口を押さえてしまった。好きな人に可愛いと言われ、貴姫(きき)の顔が極限(きょくげん)まで真っ赤になる。

「あっ、そ、そのっ…!思わず…。」

青上(あおがみ)が真っ赤になっている。思わず口をついて出た言葉に自分でも驚いたのだろう。

「えと、あの、あ、ありがとうございます…!?」

貴姫(きき)が慌ててその場を取り(つくろ)う。そして落とした百円玉を拾う(ため)にしゃがんだ。貴姫(きき)!百円玉なんて私が拾うから、接客してよ……!と内心慌てながら御守りを袋に詰める和花(わか)。親友の初恋を応援したかった。しかし、当の貴姫(きき)は百円玉を(にぎ)()めたまま立ち上がろうとしない。

「あのぅ……、大丈夫ですか?」

青上(あおがみ)がおずおずと(たず)ねる。しゃがんだまま立ち上がらない貴姫(きき)を心配したのだろう。そして次の瞬間、ハッとした(よう)に顔を青くした。

「もしかして、さっきの僕の発言で気を悪くしてしまいましたか!?申し訳ありません!」

そう叫ぶや否や大きく頭を下げた。和花(わか)呆気(あっけ)に取られた。青上(あおがみ)が、(ちまた)(うわさ)のイケメンが、まさかこんなに的外(まとはず)れな心配をしてくるとは。貴姫(きき)が顔を上げて困った(よう)な可笑しい(よう)な表情で和花(わか)を見つめた。和花(わか)(かす)かに(うなず)く。それを見て貴姫(きき)は意を決した(よう)に立ち上がった。

「い、いえ、大丈夫です。その、少し足が(しび)れてしまって…。」

貴姫(きき)はあはは、と笑顔を作り、百円玉に目を落とす。「丁度(ちょうど)600円ですね。」と(つぶや)いた。引き出しを開けると、貴姫(きき)和花(わか)の方に顔を向けた。

和花(わか)、ほら。」

貴姫(きき)が御守りを持った和花(わか)と代わろうと横に退(しりぞ)く。しかし、和花(わか)は御守りの入った紙袋を貴姫(きき)に押し付けた。

貴姫(きき)が渡して!」

小声で伝える。

「え、でも…。」

和花(わか)は困惑する貴姫(きき)の手から百円玉を(うば)い取った。ついでに青上(あおがみ)の前に貴姫(きき)を押し退()ける。

(おきて)なんて気にしなくていいから!」

親友に気圧(けお)されて、貴姫(きき)青上(あおがみ)に紙袋を差し出した。ニカッと笑顔付きで。2人の手が触れる。青上(あおがみ)(ひとみ)が揺れた。貴姫(きき)はさっきよりは緊張が()けたが、それでも体が熱くなるのを感じた。

「あり、がとうございます。」

(なか)呆然(ぼうぜん)と受け取った青上(あおがみ)に、貴姫(きき)の顔が(くも)る。そんな貴姫(きき)を見て、青上(あおがみ)が付け加えた。

「その、君の手が、冷たかったので。女の子なんだから、体を冷やすと良くないし、あんまり長く外に居ない方が良いと思います。あっ、そのこれはあくまでも僕の思い付きなので、気にしないで…下さい…。」

最後は消え入りそうな声だった。(うつむ)いて、紙袋をぎゅっと()()めた青上(あおがみ)。自分がまた失礼な発言をしたと思い、自己嫌悪(じこけんお)(おちい)ったのだろう。完全に緊張が()けた貴姫(きき)がふっと微笑(ほほえ)んだ。

「ありがとうございます。でも大丈夫です。貴方がこんなふうに心配してくれて、心が温まったから…。」

最後は自分で言って、赤くなる貴姫(きき)和花(わか)微笑(ほほえ)ましい2人のやり取りに満足した。そして、私の恋も、貴姫(きき)の恋も叶うといいな、と祈るのだった。

4話書くのが楽しみ!

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