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第4章 第5話 ステータス

「はい、できましたよー」


 写真を撮り終わってから10分後。完成したギルドカードが私に手渡された。



「おぉ……すごい……」


 100年前のギルドカードは、ただ写真と更新した時のレベルが表示されていただけだったが、今はこうなっているのか。



名前:ユリー・セクレタリー

種族:人間

誕生日:7月12日

年齢:117

レベル:100

体力:18

魔力:24

知力:100

異力:68



 書かれていたのは私のステータス。悔しいことに私の実年齢が正しく表示されているので、正確性はかなりのものだろう。そっか、そっか……。



「そっかぁ……」

「なんでへこんでんの? レベル100とかサイキョーじゃん!」


 この世界のことを何も知らないショウコが自分のギルドカードができるのを待ちながら励ましてくる。でもそうじゃないんだ、レベルの概念は。



「あのね、レベルっていうのは、自分の潜在能力に対し、どれだけ引き出せているかっていう指標なの。つまるところ最高であるレベル100は伸び代なしって証拠なんだよ」



 ちなみに他のステータスは、1~20が子ども並、21~40が一般人並、41~60が中級までの冒険者、61~80が上級冒険者、81~100がその道の頂点レベルといった指標になる。



 つまり私は完成しているのにも関わらず、身体能力は子ども、魔力は一般人。知力だけは最高だけど、異力は……



「異力ってなにっ!?」


 なんだこのステータス! 私知らないぞ!?



「異力についてはよくわかってないんですよー。最近表示されるようになったステータスなんですけどー、いくら調べても一貫性がないみたいでー。イユちゃん的には呪いの資質かなーって睨んでるんですけどー、現状は死にステですねー」


 触れることでステータスを表示させる水晶を持ちながら、受付にいるイユが自分のギルドカードを差し出してきた。そこに表示されているのは眠そうにしているイユの写真と、



名前:イユ・シエスタ

種族:人間

誕生日:1月12日

年齢:17

レベル:43

体力:21

魔力:27

知力:87

異力:13



「どうですかー。イユちゃん青の悪魔さんの上位互換って感じでしょー?」

「誤差でしょ誤差っ! 自慢できるほど高くないからねっ!?」

「でもイユちゃんまだ43レベですしー。伸び代の塊なんですよー」

「くっ……!」


 正直今はステータスより、17歳という若さが羨ましい。くそ、私だって容姿はそこで止まってるのに……!



「へっへーんっ! そういうことならわたし最強ですよっ!? どーんっ!」


 なんとなくそれぞれのギルドカードを自慢する流れになったところで、フィアがテーブルに投げつけるように自分のギルドカードを見せてきた。



名前:フィア・ウィザー

種族:人間(霧霞族(ミスト)

誕生日:9月15日

年齢:15

レベル:16

体力:14

魔力:100

知力:4

異力:6



「いや知力4って」


 魔力の高さに注目してほしかったのだろうが、ここを見逃せるほど私は大人じゃない。まだ17歳だから。



「なんですかーっ! わたしまだ16レベなんですよっ!?」

「いや、にしたって4ってことはないでしょ」


「で、でもステータス上では100になってますけど、ほんとはもっと魔力高いらしいんですよっ! それを加味したら……!」

「フィアって例えるなら、赤ちゃんがバズーカ砲を持ち歩いてて無限に撃ってくるみたいなもんだからね。正直フォローしきれない」


「ぐっ……! な、ならスーラちゃんのも見てくださいっ! わたしがいかに優れているかがわかりますからっ!」

「妹を使わないでよ。あたしのなんか見てもおもしろくないわよ。知っての通りダメダメだから」


 半ば無理やり振られ、スーラが不満げな顔で大人モードの写真が貼られているギルドカードを差し出した。



名前:スーラ・ウィザー

種族:人間(霧霞族)

誕生日:4月5日

年齢:10

レベル:79

体力:42

魔力:1

知力:56

異力:96



 ……んー、反応がしづらいな。


「でも霧霞族って体力が少ない人が多いのに42ってのはすごいよね」

「そーですよー。知力も普通にありますし、全然悪くないと思いますよー?」

「そうですかねっ!? 無駄なステータスの異力だけが高いとかだめもいいとこですよっ! わたしの方がすごくないですかっ!?」

「フィア……あなた……」


 この馬鹿、自分の妹を売って優秀さを誇示しようとしてきた。まぁもちろんネタだけど、やることコスイな。



「ていうかそれ! そもそも無効になったやつじゃないですかっ! 本物見せてくださいっ!」

「……はいはい、どうぞ」


 スーラがギルドカードをしまい、もう一枚のカードをテーブルに置く。それはステータス自体は同じだが、表示されている写真に違いがあった。



「なんこれ。子どもん時撮ったの?」

「これが本当のあたしよ。今は無理して大人モードになってるの」


 スーラの年齢は10歳。そして本来の容姿はそれに準じている。今姉であるフィアよりも大人らしい姿になっているのは、霧霞族の特徴であるカロリーを魔力に変える能力を駆使しているからだ。自分の限界値を超えているため常時痛みが襲っているはずだが、スーラはそれに耐えて大人モードを維持している。



「おい、あまり喋るな。貴様の不用意な発言が周りを危険に晒すことを忘れるなよ」


 少し遠くからショウコのことを見張っていたミューが背中の剣を引き抜く体勢のまま近づいてくる。確かに何も考えないで発言した結果、人を操る能力で殺してしまう可能性も充分ある。



「ミューさんって勇者なんしょ? ギルドカード見せてよ」

「ああ。っ! 貴様!」


 ショウコの言葉に素直にギルドカードを差し出したミューが、今度こそ剣を引き抜いて声を上げる。さっきの今で無意識に能力を使ってしまったのだろう。私は効かないが、危険極まりない能力だ。


名前:ミュー・Q・ヴレイバー

種族:人魔(勇者)

誕生日:10月7日

年齢:19

レベル:72

体力:78

魔力:3

知力:48

異力:5



「なんか意外と低スペだね」

「あ?」

「ス、ストップ!」


 思わず零れたショウコの感想にミューがブチ切れ顔で剣を抜こうとする。だがショウコの能力で動きを止められてしまった。



「まぁこんだけあれば充分上澄みでしょ。まだ伸び代もあるし」

「そ、そうか? ユリーに褒められると照れるな」


 私のフォローに顔を赤くして照れるミュー。ちょろくなってくれて助かる。


 実際のところは割と微妙ではある。私やフィアみたいに100があるのは異常だが、ミューにはこれくらいあってもらわないと困るのだ。



 だってミューは、勇者なのだから。



 少なくともノエル様は、こんなもんじゃなかった。



「やー、早く私のもできないかなー。私も魔法とかばんばん撃ちたいし、できれば適正あるといいなー!」

「はいはーい、できましたよー」


 ちょうどショウコが伸びをしたタイミングでイユがショウコのギルドカードを持ってきてくれた。



名前:イセ・ショウコ

種族:人間

誕生日:10月1日

年齢:17

レベル:28

体力:32

魔力:1

知力:34

異力:100



「どうかな? 私魔法使えるかなっ!?」

「無理でしょうね。下限が1だから何とも言えないけど、あたしと同程度なら下級魔法すら使えないわよ」

「えー、まじかー!」


 ショウコと同じく魔力1のスーラがそう告げると、わかりやすくうなだれてしまった。だが今はそれよりも気になることがある。



「異力100 ……これだけじゃわからないか」

「ですねー。ひょっとしたらと思ってたんですけどー」


 イユも同じことを考えていたのだろう。異力の正体について。



 この中で異力が高いのは、100のショウコ、96のスーラ、68の私。だがこの3人で共通している部分はない。イユの言う通り呪いの適正の可能性はあるが、そこはやらせてみないとわからないだろう。というかそれよりも手っ取り早いやり方がある。



「ライブラで調べればいっか」


 私たちが明日行くライブラにはこの世界の全ての情報があるとされている。


 そこで調べるのは、異世界転生、人型モンスターの正体、異力のこと。



 やることはたくさんだが、知識欲を満たす快感が、私の心を揺さぶっていた。

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