ウソの中のホンモノ⑤ 舞風優視点
「今まで言いたいことを思いっ切り言ったことなんてなかったからさ・・・実は八瑠佳も同じだったみたいなんだよね。周りに人が集まるから、良い自分を演じなきゃいけないっていう辛さがあったみたい。ずっと。だから、ゼミも私と同じ理由で選んでいたんだって。」
「・・・・・」
「喧嘩の後、私たちは親友になった。別に親友になろうとか言ったわけじゃないけど。お互いがそう思っていたと思う。その後は寺沢さんも知っている通りの関係になったって感じ。」
「・・・・・羨ましい関係だね・・・」
「私、八瑠佳と喧嘩してわかったんだ。私の欲しかったもの。」
「親友ってこと?」
「うーん。半分当たりかな。正解は本音を言い合える人。ウソばっかりだった私の人生でできた初めてのホンモノだった。でも・・・私が壊しちゃった。」
「・・・・・」
「ごめん、暗い話をしちゃって」
「いや・・・聞けて良かったです。でも一つ言わせてもらっていいですか?」
「・・・うん。」
「いつか、神谷さんは八瑠佳と仲直りできますよ。俺はそう思います。親友ですよね。」
「・・・・!」
私の頭に千愛希の言葉が浮かぶ。
(ああ、やっぱり2人はお似合いだ・・・だから・・・)
「あの時、新幹線のホームでキスをしてごめんなさい。私・・・私、あなたのことが好きです。今でも。」
私はまっすぐ彼の目を見る。
「いつ好きになったかはわからないけど、あなたの優しさ、話やすさに惹かれました。」
「俺は・・・」
「わかっている。というか何も言わないで・・・これは私の自己満足だから・・・しっかりあなたに一度言っておかなければいけなかった。あなたに向き合わなければいけないから・・・」
私は、席を立つ。
「ごめんなさい・・・私、いくね。お金は置いておくから・・・」
「待って!」
手首をつかまれる。私の足が止まる。
私は後ろを向かずにそのまま、話す。
「離して・・・」
「俺と向き合ってくれて、ありがとう。俺は・・・また君に向き合う勇気をもらった。だ・・」
「良かった。あなたには向き合う人がいる・・・もう言わなくてもわかるよね?」
「ああ、わかってる。だから、彼女と向きあっ・・・」
私は彼言葉を最後まで聞かずに手を振りほどき、居酒屋を出た。
そのまま振り返らず、走った。
頬を流れる涙が、凍りそうなほど外の気温は寒かった。




