予感① 千愛希視点
私は勇気を出して、寺沢君を誘った。
「・・・・・うん。いいよ。」
(やった。)
心の中でガッツポーズをとった。
「近くのバーでいい?」
「いいよ。あんまりお酒強くないからたくさん飲めないよ。」
「うん。知ってる。じゃあ行こう。」
私は寺沢君の横に並んで歩き出す。
「神谷さんとは仲がいいんだね?」
「そうだね。休みは一緒に過ごすことが多いね。友達こっちには舞風優以外いないし・・・」
「そっか・・・とても仲良さそうだったから・・・羨ましいなって。」
「そう見えているのなら嬉しいな。寺沢君は仲の良い友達・・・とかいないの?」
私は含みを持って聞く。
「・・・残念ながら、そういう友達はいないね・・・少し前までは・・・」
「あ・・・ごめん。ここだ。」
「おおう・・・」
目的のバーを通りすぎようとしていた。
「話遮っちゃってごめんね・・・続きは中に入ってからにしようか。」
「そうだね・・・」
遮ってしまったが、寺沢君が何を言おうかわかってしまった。
きっと大切な人がいたんだろう。
いて欲しくないと思っていたが、そうもいかない。私も聞く覚悟を決めなければいけない。
私たちはバーに入った。
◇
「お待たせしました。」
頼んでいた飲み物が届いた。
「さっきの続き、聞きたいな・・・」
「・・・続きって?」
わかってるくせに。とぼけるんだ・・・
さっきのは口を滑らせてしまったのかな。
「少し前までは・・・の続き。」
「・・・・・・」
寺沢君は黙り込む。
「話しにくかったら・・・」
「いや、いいんだ。」
私の言葉を遮って寺沢君は話し出す。
「少し前、2か月前までは、俺には大切な人がいたんだ・・・将来を考えた人が・・・」
話すのも辛そうだ。
「でも俺のせいで別れてしまったんだ。」
「そうなんだ。」
やっぱり、大切な人がいたんだ。
「俺が後ろめたいことを隠していたのが悪いんだ。黙っていることが正しくないとわかっているのに、黙っているのが誠実だと思い込んでいたんだ。」
「・・・・・」
「いや、彼女にバレるのが怖かったんだ。それが原因で振られちゃうんじゃないかって。」
「そうだね・・・誠実か・・・」
誠実については、舞風優にも話した。その時から考えは変わらない。だから・・・
「私は誠実ってさ一つの決まった形はないと思う。その人に適した誠実があると思う。」
同じことを言った。
「だね。そして誠実は1つではないし、時と場合によって変わってくる。」
「誠実って難しいね・・・」
「ほんとにね・・・」
寺沢君は一気にカクテルを飲み干し、注文する。私も頼んだ。
「嫌だったらいいんだけど、寺沢君の大切だった人のこと詳しく聞いていい?」
「・・・いいよ。長くなっちゃうけどいい?」
「もちろん。」
注文したカクテルがいいタイミングで届いた。
「俺が彼女に出会ったのは・・・仕事の下見で山に行った下山の終盤だった。」
寺沢君はゆっくり話し出す。




