秋の始まり② 蓮視点
「ありがとうございました。」
今日は一人番の日だ。名古屋の時と違い、完全に一人の時がある。
この日は自分しか頼れない状況が多々ある。今日が2回目の一人番だった。
前回は何もなかったが、今日はクレームが2件あった。
ちょうどクレーム対応が終わり、水分補給をしていた。
「ふー。よし、がんばろ・・・」
俺は両手で頬を叩く。
今日はまだ、もう一波乱ありそうな予感がしていた。
・・・・・
18時になり、仕事終わりのスーツのお客様が増えてきた。
「すみませんー。ちょっと聞きたいんですけど・・・」
「はい。」
俺は返事をして、他のスタッフを確認するが、全員ご案内に入っている。
俺が行くしかないようだ。
「どうされましたか?」
俺は接客を始めた。
・・・・・
「ありがとうございました。」
「また、何かあったらお声がけください。」
お辞儀をして、その場を離れる。
「すみません・・・」
後からまた声をかけられる。俺は振り返る。
「どうさ・・・え・・・」
「久しぶり・・・だね・・・」
「うん・・・約4年ぶりかな。金沢に就職していたんだ・・・」
「うん。言ってなかったよね。」
「寺沢さーん、今レジ大丈夫ですか?」
俺は他のスタッフに呼ばれる。
「ごめん、行くね・・・」
俺はその場を離れた。
「うん。またね。」
俺は急いでレジに入る。
レジを打ちながら、彼女のことで頭が一杯だった。
まさか会うとは思わなかった。俺の初めての彼女の森田 千愛希と。
金沢に家を探しに来た際に、彼女らしき人を見たが見間違いだと思っていた。
しかし、見間違いではなかった。
あの日見たのは森田さんだったんだ。
レジが落ち着き、店内を見渡すと彼女はすでにいなかった。
・・・・・
「お疲れ様でしたー。」
「お疲れ様です。」
アルバイトさんを見送り、俺は店に一人になる。
レジを締め、店を閉め始める。
今日会った森田さんのことを考える。
もともと森田さんはアウトドアをするタイプではなかったし、うちの商品を普段使いするタイプとも思えない。
俺に会うために、わざわざ店に来たのか?
なぜ・・・今更。
俺は店を閉め終わり、外に出る。
「そろそろ上着が欲しくなるな・・・」
スマホを確認すると、森田さんからメッセージが入っていた。
今日は仕事中に声をかけてしまってすみません。
寺沢君のことを見かけてついつい声をかけてしまいました。
もし、良ければ久々にゆっくり話したいです。
今度ご飯でも行きませんか?
「・・・・・なんなんだよ。昔は自分から誘うことなんか一度もなかったのに・・・」
俺はどうしたらいいのか、すぐ答えが出せずスマホをしまった。




