秋の始まり① 蓮視点
俺が金沢に来て一か月が過ぎた。
暑かった夏は終わり、季節は完全に秋に変わっていた。
怒涛の一か月だった。
金沢店は忙しいと聞いていたが想像以上に忙しかった。まず、圧倒的に人員が不足している。
店舗での販売業務はもちろん、店外イベントも土地勘のない中行った。休日も利用して下見を行った。
名古屋中央店と違うところは店内のイベントがあるところだ。
自分の知識が足りていないのもあって、苦労した。人前で話すのは慣れたつもりではあったが、より大人数に向けて話すということは一味違っていた。
慣れない環境で、忙しい業務を送って毎日がくたくただった。
でも俺はそれで良かった。
毎日がくたくたで、何も考える暇がなかった。家に帰ったら、インスタントの食事をして、泥のように眠る。
休日に何もない日は一日中部屋で眠っていた。
そんな日々の繰り返しだった。
他に変わったことがあるとすれば、R18のゲーム関係をすべて売り払ったことだ。
八瑠佳と付き合っていた時に全部売ろうとしたことがあったが、八瑠佳から止められたということがあった。それも俺の一部でしょと言われ、ずっとダンボールにしまったままだった。
恋愛のことを考えるのが嫌だった。
集めるのに100万円はゆうに超えていたが、俺はためらうことはなかった。後悔もなかった。
その結果俺は無趣味になってしまった。
つまらない人間になってしまったと思う。
そして、一人で過ごす時間が多くなった。
友人も恋人もいない自分にとって、恋人という存在は大きかったんだなと改めて感じる。
・・・・・・
♪~~~~
「ん・・・・」
俺はゆっくり覚醒した。
「またか・・・」
たまに八瑠佳のことを無意識に思い出す。その際俺は必ず泣いている。
鏡で顔を洗い出勤準備をする。
ひどい顔をしていた。
忘れなきゃいけないのに、忘れられない。
この恋愛感情だろうか、この感情を消し去りたかった。
だから、俺は恋愛を徹底的に避けた。
俺はまた、八瑠佳に出会う前の後ろ向きで人に本音を言えない寺沢蓮に戻ってしまった。




