残すモノ① 蓮視点
「この部屋こんなに広かったんだ・・・」
荷物がなくなった部屋を見渡し、蓮はつぶやく。
昨日、荷物を引っ越し業者に預け終わり、部屋にはほとんど何もない。
3年半過ごした部屋だ。あっという間だった。
大人になると、時間が経つのは本当に早くなった。
すぐに30歳になってしまうだろう。
鍵の受け渡しは11時だったが、不動産会社の都合で一時間早くなった。
何もない部屋で、さらに1時間ちょっと過ごすのは暇なので、俺にとっても好都合だった。
♪~~~
ちょうど不動産会社の人が来たようだ。
「はいー。」
・・・・・
「キレイに使っていただいているので、追加で料金をいただくことはないと思います。」
「良かったです。電話で確認していたことなんですが、これのものを捨ててもらっていいですか?」
俺はダンボールを含む箱の廃棄をお願いした。
「かしこまりました。では鍵をお預かりしてもよろしいでしょうか?」
「はい。ありがとうございました。」
鍵を2つ渡す。
「これから金沢に向かわれるんですか?」
「はい。」
「気を付けていってらっしゃいませ。」
「ありがとうございます。手続きはもう大丈夫ですか?」
「はい。大丈夫です。」
「それでは失礼します。」
俺は最後まで捨てるか悩んだ荷物を持って、3年半住んだ部屋を後にする。
最後まで、捨てるか悩んだものの中身は八瑠佳からの手紙だった。
彼女は節目ごとに手紙をくれた。記念日が多かった。
未練を捨てきることがどうしてもできなかった。
本来は捨てるべきなんだろう。
彼女との思い出を捨てることができなかった。なので、仕方なく持っていくことにした。
ただ、あれだけは・・・八瑠佳に別れを告げられた日に渡そうと思っていたあれだけは・・・捨てた。
あれがあると俺は前に進めない。
俺なりの八瑠佳との決別だった。
想いは捨てるから、思い出に浸るぐらい許してくれるよな・・・?
だから、手紙ぐらいいいよな・・・
俺は車にのりこんだ。
名古屋でやることはすべて終わった。
時刻は11時前だ。金沢には14時ぐらいにはつくだろう。
「さよなら・・・名古屋。」
俺は車を走らせた。




