返信 蓮視点
「ふーーー、今日はいつもより疲れたな・・・」
仕事が終わり蓮は自宅に帰ってきた。
今日は大変だった。普通に忙しかったというのもあるが、河瀬さんから連絡先を渡された後に、皆に根掘り葉掘り聞かれたのだ。
「なんで人は他人の恋愛話が好きなんだろう・・・?」
皆からは早く連絡しろや付き合っちゃえなど色々言われた。
店長に「客と恋愛するのは良くないですよね」と聞くと
「まあ、褒められたことではないよね。ただ、客と結婚した人も結構いるし、禁止されているわけではないしね。」
店長はニヤニヤしながら話を続ける。
「俺が面白いからオッケー!」
「・・・」
これは全従業員に知られてしまうな・・・蓮は確信した。
「今時大胆な子だよねー。」
「確かに他のお客様からだいぶ見られちゃいましたしね・・・視線が痛かったです・・・」
「まあ、止めないからガンガン行っちゃっていいよ。」
「えぇ・・・」
蓮は今日もらった連絡先を眺める。きれいな文字だった。
本音を言えば、めちゃくちゃうれしい。
神谷さんにモンタで働いていることを河瀬さんに教えていいか聞かれたときから、少し期待してしまっていた。
河瀬さんはお礼を言いに来るだろうとは思っていた。それ以降店に来るようになって、徐々に親しくなっていく・・・そんなことを妄想してしまっていた。
しかし、現実はもっと早く話が早く進んでしまった。
「店長のお墨付きをもらってしまったし、連絡するのはいいとして、なんてメッセージ送ろう・・・」
もう、文面を考えるだけで一時間以上経過している。
「あんまり、遅い時間に送るのは良くないよな・・・」
堅苦しい感じにするとつまらない人間だと思われそうだし、いきなり色々聞くのもチャラいと思われそうだし・・・
「こういう時に相談できる友人がいればな・・・」
蓮には、あまり友人といえるような人はいない。自分の性格上相談できたとも限らない・・・
蓮は昔から人に、本音を言うことが苦手だった。というか言った記憶がない。
本音をいうということが弱みを見せるような気がして、言うことができなかった。
「どーしよ・・・」
蓮はベッドに倒れこむ。そのまま眠気が襲ってきて、眠ってしまった。
◇
「・・・!今何時だ?」
時刻は7時を少し回っていた。
「ふー。寝坊しなくて良かった。シャワー浴びて仕事行こう・・・」
蓮は服を脱ぎ捨てる。
「やべぇ・・・河瀬さんにメッセージ送ってない・・・」
急いで、スマホにメッセージを打ち込む。
モンタの寺沢です。連絡遅くなってごめんなさい。
昨日はわざわざ店まで来ていただきありがとうございました。
「これでいいかな・・・」
結局堅苦しくなってしまった気がする。
「なるようになるさ。」
そうつぶやき、メッセージを送り、スマホを置いて浴室に入る。
「期待なんかするなよ、寺沢蓮。」
あんな美人が自分に好意を抱くはずがない。
俺は自己中心的だし、見た目も良くない。最近お腹も出てきたし、そして何より・・・俺はオタクだしな・・・
蓮はオタクであった。しかも、女性受けが相当悪い18禁ゲームのオタクなのだ。部屋には肌色多めのタペストリーが飾ってあり、ベッドの上には、抱き枕も置いてある。
きっと河瀬さんもこれを知れば、失望するに違いない。
送ったメッセージに既読が付いたのは、メッセージを送ってからわずか1分後であった。