築いてきたもの① 舞風優視点
少し夜が過ごしやすい気温になった。
私は居酒屋で、千愛希を待っている。
八瑠佳と話したことを直接愚痴りたかった。
自分のせいでこういうことになったので、自分の中にとどめておこうと思ったが、無理だった。
電話で八瑠佳と話してから、後悔ばかりしていた。
今更ながら、自分の行動が浅はかで、愚かであったことが思い知らされる。
1年前、私の中には、2人の仲を壊したくないという思いと彼ともっと近づきたいという思いがどちらもあり、両者がせめぎ合い、結果どちらにも最悪な形となってしまった。
私はやはり、自分の想いを自分の中に抑えておくべきだったのだろう。
「お待たせー」
千愛希が到着した。
「残業?」
定時で上がってからすぐ来たにして少し遅かった。
「寄るところがあったんだ。それだけ。私、杏露酒のソーダ割りにしよ。」
千愛希は注文して、椅子に座る。
「電話で話していたことだよね。」
「うん。私のせいで、別れたみたい。完全に私のせいだ・・・やっぱり私は想いを自分の内にとどめておくべきだったんだ・・・」
「・・・・・」
「結果として、2人とも不幸にしてしまった・・・」
「・・・幸せって難しいね。」
「え・・・」
「話が逸れちゃうけど、舞風優は今幸せ?」
「・・・わかんない。」
「私もわかんない。幸せって何なんだろうね・・・」
「「・・・・・」」
私たちは黙り込む。
千愛希の頼んでいた杏露酒のソーダ割りが届いた。
「私は親友に舞風優の想いを言うべきだったのかなと思うよ。」
「え・・・」
「舞風優は話すことで親友を傷つけてしまうと思って、想いを話さなかったって言ってたよね。」
「うん。」
「でも想いをぶつけ合わなきゃいけない時っていうのもあると思う。私はできなかったけど・・・いや、私はできなかったからこそ、舞風優にはして欲しいと思う。」
「・・・・・」
「それに、それまで2人が築いてきた信頼関係はそんなやわなものだったの?」
「そんなことない・・・!」
私たちの築いてきた約6年間はそんなやわなものではない。それは断言できる。
「でしょ?だったら話してたとえ喧嘩になって、傷つけあっても最後には仲直りできるんじゃない?」
「・・・・・」
「大人になるとさ・・・なかなか喧嘩することってないよね?」
「うん。」
「それに、大人になるとちょっとしたことで縁が切れたりする。喧嘩なんかせず・・・諦めちゃうのかな?大人になって諦めってどうしても覚えるよね?」
「うん。」
「縁が切れちゃったら、2度と繋がらないこともある。でも、舞風優は喧嘩してるよね。」
「・・・・・」
「それってまだ親友に戻れる可能性があるんじゃないかな?」




