夏の終わり② 八瑠佳視点
「やっぱり気になるんですね・・・」
「・・・・・」
「顔を見ればわかりますよ。」
そんな不安そうな顔をしているだろうか?
「まあ、気持ちはわかりますよ。自分を抱いていた男が、別れた瞬間に他の女を抱くとか、嫌ですよね・・・」
「・・・・・私・・・私、彼に抱かれたことないよ・・・」
「え・・・マジですか?一年以上付き合ってそんなことあるんだ・・・」
「あ・・・」
言わなければよかった。完全に自爆だ。
「まあ、その話も気になりますが、それは置いといて。さっきの話の続きですが、私がここにいるのが答えです。」
私はほっとした。私と彼はもう恋人でもないのに何で安心しているんだろう。
「当分恋愛はいいって断られてしまいました。あなたのことまだ好きって言ってました。」
「・・・」
「あーあ。せっかく勇気を出したのに、振られちゃった。」
「ごめん。なんて言っていいかわかんないよ。」
「別に慰めなんかいらないです。というか求めてません。ただ愚痴りたかっただけです。」
「そう。」
「もし慰められたら、怒ってたかもしれません。そんな口だけの慰めいりませんって言ってます。みじめすぎますよね、それ。」
「・・・・・」
「好きな人の元カノに慰められるって、最悪ですよね。というか、自分の顔鏡で確認したらどうですか?」
「え・・・」
「ものすごくわかりやすくほっとしてますよ。」
顔に出てしまっていたらしい。
「振ったくせに未練があるなんて、最低です。もう彼の何者でもないくせに人の恋路を邪魔するなんて・・・」
「・・・・・」
「すみません。ただの八つ当たりです。さっきも言ったようにあなたはもう彼のなんでもないんですもんね。」
その通りだ。私はもう彼と、何の関係もない。
「話を聞かせてくれてありがとう。私行くね・・・」
「ええ、つまらない話に付き合わせてすみませんでした。」
私はベンチに座っている山下さんに背を向け、歩きはじめる。
「寺沢さん、来週の月曜日の昼頃に、大家さんに鍵を返して、金沢に向かうみたいです。」
「え・・・」
私は足を止める。
「いえ、大きな大きな独り言です。気にしないでください。」
私は、再び歩き出す。
少し秋らしくなってきたのか、肌寒い。
夏が終わる。そして、秋が来る。




