連絡先 八瑠佳視点
いよいよ、寺沢さんにお礼を言いに行く日になった。
「あー緊張するなぁ・・・」
今ならあの告白してきた男の子の気持ちがわかる気がする。自分の想いを伝えるのってこんなに勇気のいることだったんだ。初めて知った。
寺沢さんに助けてもらってから2週間ずっと彼のことが頭から離れなかった。むしろ存在が大きくなっていった。仕事している時も、友人と遊んでいる時も彼のことを考えてしまう。
今までわからないという理由で、避けていた恋愛。苦しいが、楽しい。なるほど、これはみんなしたいというはずだ。
「大丈夫?めっちゃ緊張してるね。八瑠佳のそんな顔久しぶりに見た。」
いろいろ考えているうちに店に着いた。
「よし、じゃあ入ろうか。今日寺沢さんいるとは限らないけどね・・・」
「うん・・・」
いよいよだ。
「いらしゃいませー。」
2人は店の中を見て回る。
「あ・・・」
彼はいた。どうやら接客中のようだ。
「今、手が離せなさそうだし、ちょっと離れてようか。」
「うん」
そう言いながら、八瑠佳は離れようとせず、ずっと彼のことを見ている。
舞風優は、しょうがないなみたいな顔で八瑠佳から、そっと離れた。もちろん八瑠佳気付いていない。
(がんばれ八瑠佳・・・)
◇
「ありがとう。」
「ありがとうございます。またのご来店をお待ちしております。」
どうやら接客が終わったようだ。
「あの・・・」
「あ、河瀬さん久しぶりです。あの後大丈夫でしたか?」
「はい。寺沢さんのおかげで、すぐに良くなりました。」
「それなら、良かったです。」
違う。早くお礼を言わないと・・・
「あの・・・この前は本当にありがとうございました。今日はお礼をどうしても言いたくて。」
「気にしないでください。言ってましたけど、僕も以前に迷惑かけちゃったので、今回はその経験を生かして、助けられて良かったです。」
「ありがとうございます。」
そこで会話が途切れた。
「今日はわざわざありがとうございました。」
蓮は離れようとする。
「ちょっと待ってください・・・。あの・・・これ・・・私の連絡先です。連絡待ってます。」
「え・・・」
「じゃあ、失礼します。」
そう言うと八瑠佳は足早に去ってしまった。蓮も唖然としている。
「八瑠佳ってば・・・」
八瑠佳の後を、舞風優が追いかける。舞風優は蓮にお辞儀をして店から出ていった。
◇
「八瑠佳ってば・・・」
店を出て、やっと舞風優は八瑠佳に追いつく。
「舞風優・・・私上手くできた?」
八瑠佳は泣きそうな顔で尋ねる。
「・・・うん。できてたよ。しっかりお礼を言って、連絡先を渡せたじゃん。よく頑張った!」
舞風優は八瑠佳の方を優しくたたく。
「あーーー良かった。ホントに緊張した・・・」
遅れて達成感がやってくる。
「あとは連絡がくるかだね・・・」
私にできることはすべてやった。
「今日はスマホを手放せないね・・・」
「舞風優、今日はありがとう。本当に助かったよ。」
「私は何もしてないよ。」
舞風優は微笑む。
「居てくれるだけで心強かったんだよ!きっと一人ならできなかった。」
「そ。付いてきたかいがあったよ。うまくいくといいね。」
「そうだね。」
しかし、0時を回ってもその日連絡は来なかった。
◇
「♪♪~~~~」
「朝・・・あまり眠れなかったな・・・」
八瑠佳は、蓮からの連絡が気になりすぎて、1時間おきにスマホを確認していた。
そして、スマホを確認するも、蓮からの連絡はなかった。
「・・・ダメだったのかな?」
そんな落ち込んだ気持ちで、八瑠佳は仕事に行く準備を始めた。