言えなかったこと③ 蓮視点
「私が何に対して悲しんでいるかわかってる?」
「舞風優とキスされたことじゃないの・・・?」
「もちろんそのことも悲しいよ。でも一番悲しいのは、私に告白する前に舞風優と会っていたことだよ。」
俺はわからなかった。なぜそこの方が悲しいのか。
「私に告白してくれた時、蓮君は明らかにこの前と変わっていた。自分で考えて、私に告白してくれたのだと思っていた。」
八瑠佳は俺を見て
「でも、違った。舞風優があなたを変えたんでしょう!舞風優が私に告白させるように思わせたんでしょう!」
「・・・・・」
俺は何も言えなかった。八瑠佳が言っていることはすべて正しかったからだ。
「ねぇ・・・何か言ってよ・・・」
「・・・・・八瑠佳が言っていることは・・・正しい・・・。」
「私はあなたの意志で、あなたの想いで告白して欲しかった・・・。」
「俺は・・・でも・・・」
「もう聞きたくないよ・・・すべて言い訳にしか聞こえない。私今日は帰る・・・」
「・・・」
八瑠佳をこのままいかせてはダメだ。ちゃんと謝罪しないといけない。
わかっている。けど、体が動かない。
八瑠佳の言っていることがあまりにも正論すぎて、言い返せない。
「ウソをつくなら、最後までウソをつき通して欲しかった・・・最後まで私を騙してよ・・・気づかせないでよ・・・」
「・・・・・」
八瑠佳はそれだけ言い残し、帰っていった。
俺はしばらく何も考えることができなかった。
脳が働くのをやめていた。
・・・・・・
気が付けば、周りに人が増えていた。ランチタイムになっていたらしい。
店にも迷惑になるし帰らなければ・・・
足が動かない・・・
立たなければ・・・
少し時間をかけ、俺は立ち上がった。
八瑠佳がいた場所に、千円札が置いてあった。八瑠佳が置いていったのだろう。
俺はそれをとらずに立ち上がる。
会計を済ませ、店から出る。
来る前はあんなに天気が良かったのに、今は曇天だ。今にも雨が・・・
「降ってきたな・・・」
もちろん傘など持っておらず、蓮はノロノロと歩き出す。




