言えなかったこと① 蓮視点
八瑠佳と約束した日、蓮は約束した喫茶店で待っていた。集合時刻の30分前だった。さすがにまだ八瑠佳は来ていない。
この喫茶店は、蓮の家から徒歩でいける距離にある。八瑠佳とよく来ていた。
「・・・・・」
今日は八瑠佳に異動のことを話す日だ。それだけではない。
神谷さんとのことも話す。この一年間話せなかったことだ。
今日話せなければ、この先話せる気がしない。
表向きは八瑠佳のためだ。本音、自分が楽になりたかった。
俺は相変わらず自己中だ。
もしかしたら、今日で八瑠佳との関係が変わってしまうかもしれない。
それでもだ。この先八瑠佳と未来を行くためには話さなければいけない。
「お待たせ。今日はやけに早いね・・・」
「うん。決意を揺るがせたくなくてね・・・」
八瑠佳はコーヒーを頼む。
「不安は消えた?」
「全部は消えていないけど、蓮君のおかげで楽になったよ」
「良かった。」
「「・・・・・」」
2人は話さない。いつもなら、八瑠佳が話そうとするが、こちらの様子を見て黙っているようだ。
注文していたコーヒーが届いた。
「じゃあ、話をするよ。」
「うん・・・」
「話は大きく分けて2つある。関係していることだ。」
俺は深呼吸する。
「異動が決定した。早ければ9月頭に。」
「えっ・・・急だね・・・」
八瑠佳には異動が多い会社ということ話しているので、異動に関してはそう驚きはしないだろうと思っていた。
「そうなんだ。かなり急なんだ。」
「どこに?」
「・・・・・金沢。」
「・・・・・そうなんだ。」
2人とも何も言わない。
八瑠佳は何を考えているのだろう?神谷さんのことなのかもしれない。
「そっかー。異動かー。いつか来るとは聞いていたけど、ついにって感じだね。」
「うん。それが一つ目の話したいこと。二つ目は、俺が八瑠佳に隠していたことだ。」
「え・・・」
「本当はもっと早く話さなければいけなかった。けど、俺は話せなかった。わが身が大切という自分勝手な理由で。」
「・・・・・」
「俺は、神谷さんが金沢に旅立つ日。新幹線のホームで、俺は・・・神谷さんとキスをした。」




