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ホンモノノスキ  作者: リンゴ
ウソをつくということ
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ネックレス③     舞風優視点

「彼はね、私のことを好きだって言ったの。だから、もう一度やり直せないか?悪いところは全部直すからってお願いされたんだ。」


「本当に千愛希のこと好きだったんだね。」


「本当に驚いた。別れを切り出されると思っていたから。でも、私の答えは決まっていてて、恋愛対象として好きになれなかった。ごめんなさい、別れましょうって言ったんだ。すると彼は、悲しそうな顔をしてわかったって言ったんだ。彼と別れる時、彼から見るから作り笑いってわかる笑顔で、ありがとうって言われたんだけど、私はさよならって言って彼を振り返ることなく歩いたんだ・・・」


「それからは会ってないの?」


「うん。バイトもやめちゃたし、メッセージのやり取りもしていない。」


「そっか・・・」


「別れた後私は全然引きずらなかった。未練はなかったつもりだった。でもすぐ後に気づいた。私が本当に欲しかったのは優しさだったんだって。手に入れていたんだって。」


「え・・・」


「結局就職活動が上手くいかなくて、友達に相談してもみんな自分のことで精一杯だったんだ。聞いてくれるけど、それだけって感じ。彼のように寄り添ってくれない。」


「・・・・・」


「自分が苦しくても他人に優しくできること。それがホンモノの優しさだって気づいたんだ。失った後に気づくって滑稽だよね・・・」


千愛希は悲しそうな顔をする。


「私恋愛がどういうものか全くわかっていなかった。終わってから、好きなるなんておかしいよね・・・」


「そんなことないと思う。恋愛には色々な形があるし。連絡してみたら?」


「・・・とてもできないよ。今更好きなりましたなんて・・・彼を傷つけた私に連絡する資格はないと思う。それに、拒否されたりしたら、それこそ怖いよ・・・」


似ている・・・状況が。前に進むことができなくて悩んでいる様子があいつと重なった。居酒屋であいつを怒ったあの日を思い出した。


1年前の私なら、千愛希を後押しすることができただろう。


しかし、前に進むことを、傷つくことを恐れて、八瑠佳からもあいつからも逃げた私は、あの時と同じ言葉を口にできない。


「わかるよ・・・こわいよね・・・進まなきゃいけないってわかっていても進めないよね・・・」


こんな千愛希の言葉に同意したようで、今の自分の気持ちを表したような言葉をつぶやくことしかできない。


「ありがとう。わかってくれて。話せてすっきりした。」


「愚痴とか悩みとかあれば、いつでも聞くよ。」


「ありがとう。」


すっかり、コーヒーは冷めてしまっていた。

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