別れ⑨ 八瑠佳視点
私は駅に到着した。急いできたので、息が上がっていた。
時刻は2時になる5分前だった。
「舞風優まだ、新幹線に乗っていないかな・・・」
私は入場券を買って駅のホームまで走る。
平日なので人は少なかった。ホームに上がるとすでに新幹線は到着していた。
「蓮君と舞風優は・・・」
私は立ち止まって、周りを見渡す。
「いた・・・」
距離は離れていたが、2人に間違いない。今にも舞風優は新幹線に乗り込もうとしているところだった。
2人のもとに走り出そうとしたその時だった。
舞風優が蓮君にキスをした。
「ウソ・・・だよね・・・」
私は動けなくなった。
蓮君が何か言っているようだが、舞風優は止まらず、新幹線に乗り込んでしまった。
蓮君は金縛りにあったように固まっている。
すぐに新幹線は動き出した。
まだ、蓮君は動かなかった。
私は頭が真っ白になるも、今蓮君に会うのはマズイと思い。ホームから離れる。
階段を下りながら、私は思う。
(なんで・・・こんなことになったんだろう・・・)
考えても分からない。
店で考えていた最悪な予想が的中してしまった。
この感情を上手く言い表すことができない。悲しい、哀しい、悔しい・・・色々思い浮かぶも、ピンとこない。
わけがわからな過ぎて、涙もでない。
私が、今日蓮君に行ってもらわなければ・・・店長が来る前に店を出ていれば・・・私が傘を取りに店に戻っていれば・・・あったかもしれない未来が思い浮かぶ。
きっと、これは2人を信じきれなかった私への罰だ。
・・・・・
10分ほどたった。
私はもう一度ホームまで、上がる。
蓮君は力なく、ベンチに座っていた。
「おーい、蓮君ー。」
私はいつも通りを装って呼びかける。
「お待たせ・・・結局間に合わなかった・・・ごめんね・・・。」
(あれ・・・苦しい。上手く話すことができない)
発した言葉は息切れしたように、途切れ途切れになってしまった。
「いいよ、気にしないで。」
「封筒渡してくれた?」
「うん。渡したよ。」
「ありがとう。大丈夫?汗すごいよ。」
私はもしかしたら、蓮君が話してくれるかもしれないと思いつつ聞く。
「大丈夫だよ。」
すると雨が降ってきた。
「降ってきたね・・・」
「うん・・・」
「帰ろっか・・・」
「そうだね・・・」
私は蓮君と共に歩き出す。距離はいつもどおりのはず。
近いけど、遠いそんなことを感じてしまった。




