別れ⑥ 舞風優視点
「私、そろそろ行くね。」
「八瑠佳も来るって言ってたんだけど、間に合わなかったか・・・」
「みたいだね・・・」
私は荷物を持つが、動けない。
彼に聞きたいことがあった。求めている答えが返ってくることがないのはわかっているのに・・・
「もしさ・・・水族館で待ってた日に、八瑠佳が来なかったらどうしてた?」
「次の日も待つよ。」
彼は間髪入れずに答える。答えには迷いを感じさせなかった。
「・・・そっか。」
(そうだよね・・・もしもという展開はないよね・・・)
私は深呼吸をして、
「八瑠佳を大切にしてね・・・きっと今のあんたなら、八瑠佳を幸せにできるよ。」
「もちろん。幸せにしてみせるよ。あの日、神谷さんに怒られたことを教訓にしてね。」
彼は時計を見る。そうだ、もう時間だ。
「じゃあ、金沢でも元気で。八瑠佳と会いに行くよ。」
これで本当にお別れだ。
わかっているのに。ダメだってわかっているのに・・・私は動いてしまった。
この先に未来はないとわかっているのに・・・どうして・・・
私は手に持っていたボストンバックから手を離す。
「ゴメン・・・・・!」
私は寺沢さんにキスをした。
私は一瞬で唇を離し、荷物を持って、新幹線に乗り込む。
寺沢さんが呼んでいるのが聞こえたが、振り返ることができなかった。
ちょうど新幹線が走り出した。
私は倒れこんでしまった。
「うぅ・・・」
私は泣いていた。
この涙はいったい何の涙なのか?八瑠佳に申し訳がないという罪悪感からくる涙なのか?もっとしっかり想いを伝えたかったという後悔の涙なのかはわからない。
私はしばらく泣いていた。
少し落ち着き、私は席を探す。
八瑠佳に会わせる顔がないな・・・
八瑠佳が来てくれたら、こんなことにならなかったのに・・・
いや、私が悪いな。全部。
窓から外を見ると、雨が降っていた。
本当に私の心のようだ・・・




