別れ③ 蓮視点
「私、そろそろ行くね。」
新幹線の出発まであと5分だった。
「八瑠佳も来るって言ってたんだけど、間に合わなかったか・・・」
「みたいだね・・・」
神谷さんは立ち上がり、荷物を持つも動かない。
「もしさ・・・」
神谷さんはゆっくり話す。
「水族館で待っていた日に、八瑠佳が来なかったらどうしてた?」
「次の日も待つよ」
俺に迷いはなかった。
「・・・そっか。」
神谷さんはゆっくり深呼吸をして、
「八瑠佳を大切にしてね・・・きっと今のあんたなら、八瑠佳を幸せにできるよ。」
「もちろん。幸せにしてみせるよ。あの日、神谷さんに怒られたことを教訓にしてね。」
蓮は時計を見つめる。もうじき2時になる。
「じゃあ、金沢でも元気で。八瑠佳と会いに行くよ。」
「・・・・・」
神谷さんは黙っている。
ドンと大きな音がする。神谷さんが持っていたボストンバックを落としたようだ。
その音と同時に
「ゴメン・・・・・!」
俺は音がした方を見たところを、神谷さんにキスされていた。
ほんの一瞬だった。
すぐに唇を離し、神谷さんは振り返らずに、荷物を持って、新幹線に乗り込む。
「ちょ・・・神谷さん・・・」
蓮が声をかけるも、ドアが閉まり、新幹線は走り出してしまった。
「・・・・・」
俺は何が起こったか理解するのに、時間がかかってしまった。
俺は神谷さんにキスをされた。なぜ?
よろよろとベンチに座る。
答えはわからない。
このことを八瑠佳に話そう・・・いや、言えない・・・言えるわけがない・・・
このことを知ってしまったら、八瑠佳は悲しむだろう。
彼氏がほかの女性にキスをされたことを知るとともに親友を失ってしまうかもしれないのだから。
「・・・・・」
・・・・・・・
どれくらいの時間がたったのだろうか。
「おーい、蓮君ー。」
八瑠佳が到着したようだ。
時計を見ると14時10分だった。10分しか経っていない。
「お待たせ・・・結局間に合わなかった・・・ごめんね・・・。」
「いいよ、気にしないで。」
「封筒渡してくれた?」
「うん。渡したよ。」
「ありがとう。大丈夫?汗すごいよ。」
「大丈夫だよ。」
すると雨が降ってきた。
「降ってきたね・・・」
「うん・・・」
「帰ろっか・・・」
「そうだね・・・」
俺たちは歩き出す。いつもと同じ感覚で隣にいるのに、なぜか2人の距離が離れているように感じた。




