送別会 八瑠佳視点
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「はーい。」
私は玄関に向かう。
「舞風優、いらっしゃい。」
「おじゃまします。」
今日は舞風優の送別会だ。どこかの店でやっても良かったけど、ゆっくりお酒を飲みたいということで私の家ですることになった。
「久しぶりだね~。」
「梅雨が明ける前だから、1ヶ月くらい会っなかったね。私も引っ越し準備とかで忙しかったからね・・・」
「そうだよね。あと一週間だもんね・・・」
「そうそう。へえー、色々用意してくれてるじゃん。これ手作り?」
テーブルに並べられている料理を見ながら、舞風優が尋ねる。
「全部ではないよ。でも、今日は揚げ物作ってみたんだ。」
「へぇ・・・。すごいねぇ。今まであんまり料理しなかったのに。」
「蓮君に料理する機会あるかもしれないし、練習しとかないとね・・・」
「恋人らしくなってきたね。」
「じゃあ、料理たべよ。」
私たちは座る。
「では、舞風優の金沢での活躍を願って・・・乾杯!」
「乾杯。」
私たちは、グラスに入ったワインを飲む。
「このワイン美味しい・・・」
「でしょー。結構いいの買ったんだ。料理も食べて。」
私は舞風優が食べるのを、見つめる。
「美味しいよ。」
「良かったー。ほっとしたよ。」
「寺沢さんには、料理ふるまったの?」
「うん。でも、チャーハンぐらいしかメニュー見ずに作れなくて。」
「スマホでレシピ見たらいいのに・・・」
「そうだけど、やっぱり料理できるって思われたくて・・・」
「なるほどね・・・寺沢さんとは上手くいってる?」
「うん。前会った時についにキスしちゃいました・・・」
舞風優は驚いていた。
「・・・・・おお。彼は思っていたより積極的なんだ・・・。」
「・・・?違うよ。私からしちゃったんだ。」
「そうなんだ・・・。順調だね。これなら私はいなくなっても大丈夫みたいだね。」
「舞風優がいないと、本音で相談できる人いないし、さびしくなる。舞風優ほど私のことわかってくれる人はいないよ。」
「そっか・・・」
「来週いつ出発だっけ?」
「14時に新幹線で名古屋駅発だね。高速道路崩落の影響で高速道路使えないから、下道でいこうかと思ったら、新幹線使っていいって言われた。」
「見送り行くね。」
「いいよ、今生の別れでもないし・・・」
「いや、絶対に行く。」
私は譲らない。
「わかった、わかった。」
「じゃあ行くね。そういえば、車はどうするの?」
「引っ越し会社に相談したら、料金変更なしで運んでくれるって。」
「そうなんだ。引っ越しの準備はできた?」
「ほとんど終わったよ。部屋がさびしくなっちゃったけど・・・」
2人はしばし沈黙する。
「そうだ、今日は舞風優にプレゼントがあるんだ。ちょっと待ってて。」
私は席を立って用意していたプレゼントを持つ。
「大したものではないけど・・・」
「ありがとう。開けていい?」
「うん。」
舞風優が包装紙を開ける。コーヒーカップと写真立てだった。
「ありがとう。使うよ。」
「仕事中とかに使ってもらえると嬉しいです。さあ、ワインもまだまだあるんだし、食べよう。」
私たちは大学時代のことなど今までの思い出話をした。いま思うと約6年間私の隣にはずっと舞風優がいたことに改めて気付いた。嬉しいときも悲しいときもずっとだ。
本当に舞風優に出会えて良かった。
「舞風優本当にありがとう。」
「なにを今更。私もありがとう。」
・・・・・
ワインが空になった。時刻は22時前だ。
「私そろそろ帰るね。」
「泊まっていきなよー。」
「明日も色々することあるし、ごめん。」
舞風優は荷物をまとめ始める。
「わかった。玄関まで送るよ。」
私は舞風優の用意ができるのを待って玄関まで、行く。
「あっ!忘れてた!」
「なにを?」
「実は蓮君からメッセージあったんだ。」
「え・・・・」
私はスマホを操作し、読み上げる。
「神谷さんお久しぶりです。
始めて山で2人に出会った日には、まさか八瑠佳と付き合うことになるとは思いませんでした。
あの日、おんぶを遠慮していた八瑠佳を見かねて、神谷さんがおんぶをしてくれって言いましたよね。それがなければ、俺と八瑠佳は付き合ってることはなかったでしょう。本当にありがとうございました。
金沢にはまた、八瑠佳と旅行に行こうと話しているので、またお会いしましょう。
八瑠佳のことは任せてください。誠実に向き合って彼女を大切にします。
寺沢 蓮」
「・・・・・・・」
「もおー蓮君かっこつけすぎだね。読んでいるこっちが恥ずかしいよ。」
「・・・・・・・」
「舞風優?」
「あぁ、ほんとにね。じゃあ帰るね。」
「うん、バイバイ。」
舞風優はドアを開けて、外に出ようとする。しかし、止まってしまった。
「・・・・・寺沢さんと幸せになってね・・・・・。」
舞風優はこちらを見ずに話す。
「うん・・・。」
「じゃ・・・バイバイ」
ドアが締められる。
「・・・・・・最後のどういうこと?」
私は舞風優の気持ちをある程度はわかっているつもりでいた。でももしかしたら、そんなことはなかったのかもしれない。
「・・・・・まさかね。」
何とも言えない不安が湧き上がってきた。




