気になっていたこと② 八瑠佳視点
「寺沢さんって以前お付き合いしていた女性はいますか?」
「・・・・・」
寺沢さんは沈黙した。
「いるよ。」
そう短く答えた。
「ごめんなさい。私嫌な彼女ですよね・・・」
「そんなことないよ。俺だって、河瀬さんから彼氏いたことなかったって聞いてなかったら、気になって聞いてしまうと思うし。」
「そういってもらえるとありがたいです。」
「さっきなんでも聞いてって言ったのは俺だし、他にも質問したいことあったら聞いて。その・・・元カノのことでもいいよ。」
正直、いてほしくないと思っていた。でもたまに見せる少し女性慣れしている様子がどうしても気になっていた。
「じゃあ・・・元カノさんとは何で別れたんですか?」
「・・・難しいなぁ・・・簡単に言うと、相手は俺のことを好きじゃなかったみたいで、付き合っているのに限界があったんだと思う。聞いたわけではないから、あくまで想像だけど・・・」
「・・・・?。なんで好きではないのに付き合っていたんですか?」
「それはわからない。告白は俺からしたんだけど、断るのも悪いと思って付き合ったのかも・・・」
「そりゃそうですよね・・・今でも連絡とっているんですか?」
「いや、とってない。連絡先は残っていると思うけど・・・今どこにいるのもわからないし。」
「今更ですが、いつの頃なんですか?」
「大学3年生の冬から4年生のゴールデンウィークぐらいまでだったと思う。最後の1ヶ月は音信不通だったけど・・・」
「そうなんですね・・・」
「・・・・・」
2人は黙り込んでしまう。
先に口を開いたのは寺沢さんだった。
「昔から人に好かれるということに自信はなかったけど、彼女にふられてからさらに自信がなくなっちゃって・・・恋愛を避けていたというか・・・人と付き合うことが怖くなってしまったんだ。」
寺沢さんは哀しそうに笑う。
「でも、河瀬さんに出会って、この人なら信じていいんじゃないかって思った。けど、俺みたいな人間が河瀬さんと付き合っても上手くいくわけがないって思って、自分から拒絶してしまった。」
「・・・・・」
「けど、やっぱり河瀬さんのことが好きってことに気づいて、あきらめられなくて、あんな強引な方法で河瀬さんを呼んで告白したんです。」
私は顔を近づける。
「あの・・・河瀬さん?」
「ありがとうございます。私を好きになってくれて、私もあなたのことが好きです。」
私は寺沢さんの唇に、自分の唇を近づける。彼も避けることはしなくて・・・
「・・・しちゃいましたね。キス。」
「・・・うん。」
「あの、呼び方なんですけど、下の名前で呼んでもらっていいですか?」
「いいの・・・?」
実は付き合い始めた日、寺沢さんからお互い下の名前で呼び合わないかということを提案された。でも私は恥ずかしくて、もう少し経ってからにしましょうと言ってしまった。
「八瑠佳・・・」
彼は控えめだけど、優しく名前を呼んでくれた。
「蓮さん・・・」
私も呼び返す。
「さんつけなくていいよ。同い年だし。」
「じゃあ・・・蓮君・・・?」
「うん。」
どちらともなく唇を近づけ、2人は再びキスをする。
私は幸せだった。今日で彼のことを一層好きになれた気がする。
これが愛するということだろうか。
2人は日が傾くまでキスをしていた。




