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ホンモノノスキ  作者: リンゴ
言えない本音
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後悔     舞風優視点

「寺沢さんいい人だったね。」


舞風優は、運転しながら言う。


「何かお礼した方が良かったよね?連絡先聞いとけばよかった・・・」


八瑠佳は後悔しているようだ。


「終わったことを後悔しても、仕方ないよ。今後こんなことがないようにするのがお礼になるんじゃない?」


「そうだね・・・もうちょっと体力つけるよ。」


「それより体調は大丈夫?八瑠佳の家に着くまで時間かかるし、寝てていいよ。悪いとか思わなくていいから。」


「体調は結構良くなったよ。ただ、疲れちゃったから寝るね。舞風優には悪いけど。」


「気にしないで。ゆっくり休んで。」



それから10分もしないうちに、八瑠佳は寝てしまった。


舞風優の気分は重かった。


(何もできなかった・・・)


たまたま寺沢さんという知識もあり、八瑠佳を背負える人が通りかかっただけで、もし彼と会えなかったら、彼がこちらを気にしてくれなかったらどうなっていたのかわからない。


有事の際の対処ができないくせに初心者の八瑠佳を連れていくというおろかなことをしてしまった自分が腹立たしい。


(八瑠佳には悪いことをしてしまった・・・でもきっと八瑠佳は優しいから、体力がない自分が悪いとかいっちゃうんだろうなぁ・・・)


後部座席で眠っている八瑠佳をミラーで見ながら舞風優は思う。


(明日も仕事だけど、家に帰ったら飲もう・・・このもどかしさはお酒で流してしまおう・・・)


先ほど八瑠佳が言ったことをふと思い出す。


(確かに何かしらのお礼はした方が良かったのかもしれない。)




「八瑠佳ー。着いたよ。」


車を走らせて約一時間で八瑠佳のアパートに着いた。


「んっ、もう着いちゃった?ごめん、結局ずっと寝てしまったね。」


「気にしないで。それよりしっかり休んでね。明日は仕事だったよね?」


「うん。今日はゆっくり休むよ。明日の朝まで体調悪かったら、店長に言って休ませてもらうよ。」


「なら、安心した。私は帰るね。」


「今日はありがとう。また、連絡するね。」


舞風優は車を、Uターンさせる。


「待って・・・」


八瑠佳が呼び止める。


「なんか、忘れ物?」


「今日のこと気にしないでね・・・結果的に私が熱中症になってしまったけど、私はすごく楽しかったから・・・今日は誘ってくれてありがとう。また登山いこうね。」


「・・・そうだね。じゃ、次回までには体力つけといてねー」


「善処します・・・じゃあ、バイバイ。」


八瑠佳はそう言い、手を振った。


「バイバイ。」


舞風優は車を走らせた。八瑠佳はまだ手を振っていた。



八瑠佳と別れて、約20分後舞風優はマンションに着いた。


荷物をそのまま玄関に放り投げ、服を脱ぎ捨て、シャワーを浴びる。今日の汗が流れていく。


「八瑠佳に私が今日のこと気にしているの、ばれてたな・・・」


八瑠佳とは大学からの付き合いだが、彼女は時々鋭い。普段は天然であるが、周りの空気に敏感で、他人に優しい、正直いってなんで自分と友人関係が続いているかわからない。


八瑠佳と一緒にいるのは居心地が良い。だが、同時に気を使ってしまう。矛盾している感じがするが、これが率直な感想なのだ。


友人とは難しいものである。つくづく舞風優はそう思う。八瑠佳とは友人であると思っているが、なかなか本心を言えていない。今日だって、本当は土下座する勢いで謝罪したかった。


八瑠佳にあんなこと言われたくなかった・・・いっそ今日は最悪だった、二度と登山いかないって言ってもらった方が良かった。そうしたら、思いっきり謝罪して、終わりとできたのに。


舞風優はバスルームから出て、冷蔵庫から缶ビールを出して飲む。


「~~~!やっぱこれだわ。」


それから舞風優は3缶を飲み干し、そのまま寝てしまった。


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