分岐点② 舞風優視点
私は家を出た後、電車に乗っていた。
(・・・あいつがいないか確認するだけだ。)
駅で八瑠佳に電話したが、彼女は出なかった。メッセージにも既読はついていない。
私はどうしても彼を放っておくことができなかった。
(あいつのことが好きとかではない・・・今回のことのきっかけは私でもあるから気になっているだけ・・・)
私は誰もいるわけではないのに、心の中で言い訳をする。
◇
水族館の最寄り駅に着いた時刻は20時15分だった。
すでに雨が降り始めていた。
まだ八瑠佳からのメッセージの返信はない。
ここからあいつがいる公園は5分ちょっとで着くはずだ。
(本当にいるのだろうか?)
心の中でそう思うも、私にはあいつが待っているという確信に似たものあった。なぜ確信できるかのかはわからない。
「公園のどこにいるんだろ・・・」
雨の影響もあって、人通りはほとんどない。水族館も閉館している時間の上に、今日はそもそも平日だ。
公園を回りながら、彼を探す。
すると、誰かが走っていく足音が聞こえた。八瑠佳だった。
「八瑠佳・・・・・」
八瑠佳は一直線に走っていく。
私は動くことができない。一瞬見ただけで、八瑠佳の真剣さが伝わった。
八瑠佳が走っていく先を見るとあいつがいた。
私は思わず隠れてしまった。
(隠れる必要なんてないのに・・・)
2人は何か話しているが、距離が少し離れているのと雨のせいか聞こえない。
(盗み聞きは良くないな・・・帰ろう・・・)
私は2人に背を向け、反対側に歩きはじめる。
(・・・・・なんで、なんでこんな虚しい気持ちなんだ・・・)
ぼんやり、歩いているといつの間にか駅に着いていた。
♪~~
メッセージがきたようだ。
確認すると八瑠佳からだった。
連絡なってごめん。舞風優にも心配かけてごめん。
今寺沢さんと合流できました。
私はすぐに返信する。
良かった。また結果聞かせてね。
「帰ろう・・・」
持っている傘が重く感じる。
◇
私は家に帰ってきた。足取りは重かった。
荷物をおき、ベッドに横たわる。
行かなければよかった。
行かなければ、こんな気持ちになることもなかったのに・・・
この気持ちを上手く言い表せない。
私はどうすればよかったのか?
早く行けばよかったのか・・・?
あと5分早ければ、私が先についていた。たとえ八瑠佳と出会っても、私がおせっかいをしただけと思われて終わっただろう。
いくらでも早く出る機会はあった。
ただ私が素直にならなかった。いや、自分に対して本音を言い出せなかった。あいつにあんな説教をしておいて。
今日は分岐点だった。彼と私の関係が変わるかもしれなかった。
私はあいつとどうなりたいのか?答えはわからない。
ただ、あいつともっと話したいと思っていた。なぜかはわからないが、彼となら本音で話せた。
「ダメだ。こんなこと考えてはいけない。」
私は思考を停止し、眠った。




