心配 舞風優視点
一昨日は、八瑠佳が告白する日だった。昨日連絡は来なかった。うまくいったのか、それともうまくいかなかったのか、もやもやした気持ちで舞風優は仕事をしていた。
今、舞風優は異動の準備をしている。通常の業務に加え、次の担当に引き継ぎ、今まで取材させていただいていた方へのあいさつ、異動先での準備などやることは山積みだった。
「編集長。私これから、取材して直帰します。なにか引き継ぐことありますか?」
「うーん、特になさそうだね。行ってらっしゃい。」
「失礼します。」
舞風優は会社から出て、コンビニへ向かう。
「今日は天気もいいし、外で食べよう。」
舞風優はコンビニでサンドウィッチを購入し、公園のベンチで食事にした。
スマホを見ても八瑠佳からのメッセージはない。
(これは・・・ダメだったのかな・・・今日直帰だし、早めに取材終わったら、八瑠佳に会いに行こう。)
◇
「ありがとうございました。」
舞風優は頭を下げ、取材先の店から出る。時刻は16時になろうとしていた。
ここに来るのも、もうないのかもしれない。そう思うと少し寂しくなる。
(私って結構名古屋好きだったんだな。)
今更ながら、思う。名古屋には約6年半いたことになる。長いようで短かった。
そんなことを考えてながら歩いていると、八瑠佳の働いている店が見えてきた。
♪~~
「いらっしゃいませー。」
出迎えてくれたのは栞だった。
「こんにちは。栞ちゃん。八瑠佳いる?」
「ああー。一昨日のことですか?実は・・・」
栞はニヤニヤしている。舞風優は期待してしまった。
「ちょっと待って!自分で言うよ・・・ちょうど休憩だし・・・タイミングがいいのか、悪いのか・・・
」
八瑠佳が奥から出てきた。
「店長~。休憩入りますね。」
舞風優は八瑠佳と一緒の席に座った。
「結果から言いますと、告白できませんでした!!」
「・・・ん?」
「あれだけ、告白するって言ってね。これですよ・・・」
栞が注文したコーヒーを運びながら、言う。
「うん。八瑠佳らしいね。」
「いざ告白しようとすると緊張して、言えなくって・・・」
「まあ、まだ終わったではないんですよね?」
栞が八瑠佳の方を見る。
「現状維持って感じ。なんか情けなくなって、連絡遅れてごめんね?」
「・・・気にしてないよ。最初は振られたのかと思ったけど・・・」
「いやだなー。そしたら泣きながら電話するよー。」
八瑠佳の告白に対して舞風優と栞が色々いじりながら、時間は過ぎていった。
・・・・・
「じゃあ、私帰るね。仕事中にお邪魔してごめんね。」
「うん。じゃあ、またね。」
八瑠佳は出口まで送ろうとする。舞風優の出口で振り返る。
2人の視線がぶつかる。
「八瑠佳、今日何時ごろ家に着く?」
「?八時には着いていると思うけど・・・?」
「電話していい?」
ほんの一瞬、沈黙が流れた。
「・・・うん。」
舞風優は八瑠佳の返事を聞くと、店を出た。