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ホンモノノスキ  作者: リンゴ
言えない本音
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答え②     蓮視点

「俺は・・・」


蓮は勇気をもって切り出す。


「俺は河瀬さんと出会って、毎日が楽しかった。会うたび新しい発見があって、すごく充実していた。このまま一緒にいれたらと思った。でも・・・俺は河瀬さんに釣り合わない。俺は君にいいところしか見せていないんだ。」


「え・・・」


「俺は河瀬さんに良く思われたいという思いで良い自分を演じ続けてきたんだ。」


「誰だってそうです。私だって・・・」


河瀬さんの声が震えていた。


(俺は河瀬さんを傷つけてしまっている。でも、自分を肯定するわけには、こんなクズな俺を俺は認めることができない。)


「じゃあ、こんな寺沢蓮を河瀬さんは受け入れられる?」


そう言い蓮は自分のスマホを見せる。


そこには部屋の写真が映し出されていた。


「え・・・これって・・・」


「そう、俺はいわゆるR18のゲームをして、こういう裸同然の女の子のタペストリーを貼っているキモオタなんだよ。河瀬さんが思っていたアウトドア好きの好青年はどこにもいない。すべて偽物なんだよ。」


「私は・・・」


河瀬さんは黙ってしまう。そうだろう。思っていた通りだ。


「だから、もう俺と会うのは今日で最後にしよう。俺はこれ以上河瀬さんを騙したくないし、傷つけたくないから。」


「・・・・・・・・・・・」


河瀬さんは黙ってしまった。


「「・・・・・・・・・・・・・」」


1分たっただろうか。この1分はとても長く感じた。


「いやー、そうだったんですね。確かに私とは趣味が合わなさそうですね。今まで無理して私に付き合ってくれていたんですね・・・」


(一体何を言っているんだ。そんな答えは求めていない。)


「違う!無理して一緒にいたわけではない。俺は・・・」


蓮ははっとした。河瀬さんの目には涙が浮かんでいた。


「私は寺沢さんと過ごした時間はとても楽しかったです。今までありがとうございました。さようなら・・・!」


早口で言い、河瀬さんは離れていく。少し離れて立ち止まって、こちらを振りかえる。


「さっきも言いましたけど、短い間ですがありがとうございました。・・・ごめんなさい・・・」


遠ざかっていく河瀬さんを蓮は追うこともしなかった。


「なんで・・・なんで謝るんだよ・・・俺のこと悪く言ってくれよ・・・」






蓮は自宅に帰ってきた。どのように返ってきたのかはよく覚えていない。


完全に日が沈むまで、蓮は河瀬さんと別れた場所から動くことができなかった。ふと我に返り、ノロノロ動き出したことだけ覚えている。


(人を拒絶するってこういう気持ちなんだな・・・今まで拒絶されることしかなかったからわからなかった・・・彼女もあの時こういう気持ちだったのかな・・・)


そんなことを想いながら、蓮は最悪の気分のまま眠りについた。





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