誤解② 舞風優視点
店を出た私たちは海の見える公園に向かった。
公園に着くまではお互い無言だった。
「ここ、きれいに海が見えるでしょう?ちょうど桜も咲いているし。」
「うん・・・」
「じゃあ、話を聞くよ。」
「・・・・うん。まずは謝罪をしたい。1年半前、私は寺沢さんのことを好きになってしまった。それを隠していた。八瑠佳のことに結び付けて八瑠佳に黙って会ったこともあった。」
「うん。全部知ってる。」
「私が悪かった。きっちり八瑠佳に私が思っていることを話すべきだった。私は想いを隠すという選択をしたのにも関わらず、彼にキスをした。」
「うん。」
「本当にごめん。」
私は頭を深く下げる。
「そうだね。舞風優が想いを完全に隠していたら、私と彼は別れることはなかったかもしれない。」
「・・・・・」
「でも、そもそも舞風優が彼の背中を押してくれなかったら、私はきっと彼に振られたまま終わっていたよ。」
「いや・・・・時間をかければ・・・」
「それはないよ。」
八瑠佳は悲しそうな表情で首を横に振る。
「だからね・・・舞風優には感謝しているんだ。ありがとう。」
「・・・・・お礼を言われることなんて・・・」
「彼と別れた時、イライラしちゃって舞風優にあたっちゃった。本当に悪いことをしちゃった。許してくれる・・・?」
八瑠佳は泣いていた。
「な、なんで・・・」
私は八瑠佳に抱き着く。
「私もごめん。素直になれなくて・・・」
私も涙が止まらなかった。
私たちは2人泣きながらしばらく抱き合っていた。
どれくらい時間が経っただろうか・・・
辺りが暗くなっていた。
「今日どうするの?」
「それは・・・」
「一緒に来ているんでしょ。寺沢さんと。」
「うん。八瑠佳、私今寺沢と付き合っている。」
「そっか・・・想いが通じて良かったね。」
「・・・・ありがとう。」
「今日うちに泊まる?」
「いいの?」
「さすがに寺沢さんを泊めることはできないけど・・・」
「わかった。連絡してみる。」
私はスマホでメッセージを送る。
「・・・会わなくてもいいの?」
「うん。絶対に会わない。」
八瑠佳ははっきり言った。
「会うとまた、好きになりそうだから・・・」
「・・・・・」
きっと八瑠佳は今も寺沢さんのことが好きなんだ・・・でも私のことを想って・・・
「寺沢さんホテルに泊まるって。」
「じゃあ、私の家に行こうか。」
私たちは歩き出す。
「八瑠佳一つ聞きたいんだけど・・・」
「何?」
「私八瑠佳が怒っていると思っていたんだけど・・・」
「・・・それは誤解だよ。もちろん別れた直後は怒っていたよ。でも、私も悪かったところあるなーって思って。そもそも舞風優いなければ、付き合うことすらなかったし・・・」
「でも、電話もでないし、メッセージも返してくれなかったよね?」
「うーん。そうだね。私が関わるとややこしくなりそうだし、私のこと忘れて欲しかったんだよね・・・時間が経てば、忘れてくれるかなって・・・」
「私が八瑠佳のことを忘れることなんて絶対ないよ。だって・・・親友だから・・・」
「もう・・・何回泣かせる気・・・?」
「でも、今日勇気を出せたのは私のもう一人の親友のおかげなんだ・・・」
「へえー。それは妬いちゃうな・・・話は部屋でたっぷり聞かせてもらうかなー。」
「うん。じゃあたくさんお酒を買っていこう。」