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ホンモノノスキ  作者: リンゴ
ウソの中のホンモノ
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本心     舞風優視点


千愛希に送り出され、しばらくすると海岸線に出た。

街灯は少なく、かなり暗い。

水族館も閉まったんだろう。


「いない・・・?まさか、帰った・・・?」


私は辺りを確認しながら、歩く。

雪も多くなってきた。


(そういえば、あの日は雨が降っていたな・・・)


私は昔のことを思い出す。

彼と八瑠佳が付き合った日のことを。


あの日も私は傘を2つ持っていた。

あの日私は見ているだけだった。


自分に素直になれなかったから、本心を言えなかったから。

でも、今は違う。


私を励ましてくれた人がいる。

その人が背中を押してくれたから、私は前に進めた。


「あ・・・・いた・・・。」


私の探していた人はベンチに座り、うなだれていた。



私はゆっくり歩きながら、千愛希から受け取った折り畳み傘を開く。

音がしたが、彼は顔を上げない。


「風邪ひくよ。」


私はそう言いながら、傘で彼の頭のを覆う。


「え・・・」


寺沢さんが顔を上げる。


「なんで・・・神谷さんが・・・」


驚いていた。


「千愛希に聞いた。」


「そういうことか・・・ホント森田さんは・・・」


「?」


彼は頬を叩く。


「俺も一歩踏み出さないと・・・」


彼は立ち上がる。


「傘貸してもらっていい?」


「もちろん。」


「俺の答えを聞いてもらいたい・・・」


彼はまっすぐ私を見る。


「はい。」


「・・・時間がかかったけど、俺はやっと答えを出せた。」


「うん。」


「俺と一緒にいて欲しい。」


短く話す。

声が少しだけ震える。


「俺はダメな奴だから・・・君がいないと俺ダメだったみたいだ・・・俺は君のことがす・・・・・・」


言葉に詰まる。


私は傘を放りだして駆けだしていた。


「えっ・・・」


そして彼に抱き着いた。

彼は驚いている。


「・・・・言わなくていい・・・無理に言って欲しくない・・・」


「・・・・・」


「私達・・・まだ、連絡先すら交換していないんだよ・・・まずはお互いを知ることから、もう一度最初から始めようよ・・・」


「・・・・ごめん・・・こんな情けない告白しかできなくて・・・」


「いいの・・・・今は何も言わなくても・・・ただ・・・想いが伝わっていれば・・・・」


「うん・・・」


それから、俺たちは無言でしばらく抱き合った。

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