バトンタッチ② 千愛希視点
「なんで・・・そう言えるの?」
「舞風優が本気で寺沢君のことを想っていると知っているからかな。」
「・・・・」
「もちろん。私も本気で寺沢君のことを想っているよ。でも、舞風優の想いもきっと私に負けていないと私は知っている。そして、願望も入っているよ。」
「願望・・・?」
「そうだよ。私が大好きな2人に幸せになって欲しい。過去にとらわれている2人が、それを乗り越えて欲しい。」
「千愛希っ・・・・」
「!?」
舞風優が抱きついてきた。
「千愛希、ありがとう。これからも友達・・・親友でいてくれる?」
舞風優から親友と言われたのは初めてだった。
きっと、現在喧嘩中の親友のことがあるからだろう。
「もちろん。私はいつまでも舞風優の味方だよ・・・」
「ありがとう。本当に・・・」
「寺沢君とは水族館近くの海岸で別れて、次の電車に乗るはず・・・寺沢君風邪ひいちゃうかもしれないし、早く行ってあげて。」
「うん。わかった。」
舞風優が離れる。
「私、行くね・・・」
「うん。頑張れ・・・あっ、ちょっと待って。」
歩き出した舞風優を止める。
「寺沢君、傘持っているかわからないし、持っていって。」
私は予備の折り畳み傘を渡す。
「ありがとう。」
「舞風優・・・後悔しないようにしてね。上手くいくといいね・・・応援してる。」
「うん。あとで連絡する。」
「待ってる。」
舞風優は早足で去っていった。
私は舞風優が見えなくなるまで、動かなかった。
「ふぅー・・・・」
終わった。
私にできることはここまで・・・あとは2人しだいだ。
これで良かったんだ。
本当は私が寺沢君を救いたかった。
でも、舞風優が救ってくれれば良い。
ちょっと嫉妬しちゃうけど・・・
「あれ・・・」
涙が頬を流れる。
「・・・止まらない・・・」
私は涙をこらえきれなかった。
私の恋愛は終わったんだ。
舞風優にバトンタッチをして、ようやく実感がわいた。
「ありがとう、蓮君。本当にスキだったよ。」
今までのことが頭に走馬灯のように流れる。
「さよなら・・・寺沢君・・・」