思い出③ 蓮視点
「私があの時、蓮君の告白を受け入れて付き合ったのは・・・付き合っていくの内に好きになるのかなと思ったから。蓮君のことは人として好きだったし、この気持ちが恋愛感情になっていくと思っていた。」
「そっか・・・」
「それに・・・その断り方が分からなかったんだ。蓮君が私に好意を抱いてくれているのはなんとなくわかったし、いつか告白されるとは思っていた。たぶん、人の好意を拒絶するということが怖かったのかもしれない。」
「・・・今思うと、俺の気持ちバレバレだったよな・・・」
「うん。バレバレだった。話を戻すね・・・私が蓮君のことを好きになったのは、別れてしばらくしてからだった。いや、好きっていう気持ちを理解したのはかな?私、恋愛を全くわかっていなかった。」
千愛希は空を見上げる。
「蓮君と別れる直前ぐらいかな・・・就活が全然うまくいかなくて、友達に話してもモヤモヤしていて・・・イライラしていた。今思うと蓮君に相談したらよかった。私は、蓮君はジャンルが違うからって相談しなかったし、慰めてとも言わなかった。自分の都合の良い時だけ、甘えるなんて自分自身が嫌だった。」
「そうだったね。俺は千愛希の就活の状況は全く知らなかった。」
「蓮君はメッセージで相談にのるよとか、愚痴聞くよとか言ってくれていたのにね・・・私は、蓮君が優しくしてくれるほど、自分がキライになってしまいそうで・・・蓮君に別れを告げた。」
「そっか・・・聞けて良かった。」
「「・・・・・」」
千愛希が俺の方へ目線を戻す。
「ねえ・・・私たち・・・別れない可能性もあったよね・・・?」
「・・・・・そうだね。あったかもしれない。俺が自分勝手な恋愛をせずに、もっと千愛希のことを思いやって・・・千愛希が素直に俺に相談する・・・うん、あったと思うよ。」
「お互い子供だったね・・・」
俺たちは目を合わせ笑い合う。
「そのまま付き合って、卒業し、就職して・・・付き合っていく内に大人になっていって・・・喧嘩もしちゃうけど、仲直りして・・・一緒にいるのが当たり前になっていく。その先も・・・」
「・・・・・」
「私・・・本当に後悔している。早くに別れるって答えを出したこと。もっと、素直にならなかったこと。ぶつからなかったこと。時を戻すことはできないけど・・・私たちの止まったことをもう一度進めること・・・できるかな・・・?」
声が震えていた。
「あなたのことが好きです。大好きです。もう一度、私と付き合ってください。」