恋敵(こいがたき)と書いて、恋敵(ともだち)と読む① 千愛希視点
私は舞風優に喫茶店に呼び出された。
大事な話があると。
私は心当たりがあった。
寺沢君のことだろう。
舞風優は寺沢君のことが好きで間違いない。
でも過去のことがある。
私は舞風優にどうして欲しいのだろう?
彼への想いを持ち続けながら、応援してもらう?
それは、舞風優の過去の恋愛と同じだ。
きっと辛いだろう。
舞風優に辛い思いをしてもらうのは嫌だ。
だけど・・・恋敵になったら?
私は応援できるのだろうか?
舞風優が前を向いてくれるのは嬉しいし、応援したい。
だって、友達だから。
相手が寺沢君以外であれば・・・
運命とは残酷だ。
どっちを選んでも、舞風優は傷つくだろう。
でも・・・私は・・・
「ごめん。待った?」
「気にしないで。」
舞風優は席につき、コーヒーを頼んだ。
舞風優は何も話さなかった。
でも、目は私の方を向いていた。
(舞風優はそっちを選んだんだね・・・)
目を見ただけでなんとなくだがわかってしまった。
お互いに無言のまま、見つめ合ったまま、5分が過ぎた。
注文したコーヒーが届いた。
舞風優は一口だけ口をつけ、カップを置いた。
「じゃあ、メッセージで送った件だけど・・・」
こんなに5分が長く感じたのは初めてだった。
「うん。大事な話だよね。」
「うん・・・まずは謝らせてほしい。千愛希・・・本当にごめんなさい。私、千愛希の恋応援できない・・・」
舞風優は私の目をまっすぐ見て言った。
迷いがないように見えた。
「千愛希には本当に申し訳ないと思っている。金沢に来てから、精神的に辛かった私を助けてくれた。千愛希がいなければ、私はどうなっていたかわからない。何か恩返しをしたかった。だから、千愛希の恋愛を応援したかった。」
「・・・・・」
「でも、ごめん。できない。私・・・私は寺沢さんのことが好き。私が話した名古屋で好きだった人は寺沢さんのこと。最初は身を引くべきだと思った。そして、もう一つごめん・・・私寺沢さんと2人で食事に行った。」
舞風優の声は少し震えていた。
「そして・・・寺沢さんに好きって言った。」
「・・・・」
「その時は自己満足のつもりだった。想いを伝えて、未練をなくすつもりだった。告白する
だけで良かった。あきらめるつもりだった。だから、答えは聞かなかった。でも・・・あきらめられなかった。」
「うん・・・そっか・・・」