初めての彼女③ 蓮視点
彼女と会う日になった。俺は久しぶりに森田さんと会えるということで嬉しかった。
待ち合わせ場所には一時間早く着いた。
彼女が来たのは待ち合わせ時間を5分ほど過ぎた時だった。
「お待たせ・・・待った?」
「全然まってないよ。じゃあ行こうか。パスタの店新しくできたし、そこでどう?」
「うん。いいよ。」
俺たちは店に入り注文をして、お互いの就職活動がどんな感じかなどたわいもない会話をした。
俺はとても楽しかった。これから距離を近づけたらいいと思っていた。
食事が終わり、食後のコーヒーを飲んでいた時だった。
「あの・・・メッセージで送った話のことなんだけど・・・」
「うん。」
「私達・・・別れようか・・・」
彼女は突然、静かに話した。
俺は思考が停止した。持っていたコーヒーカップを落とすかと本気で思った。
「え・・・」
「寺沢君・・・私といて楽しい?」
「俺は楽しいよ。」
「・・・・ありがとう。わたしさ・・・今精神的に余裕がなくてさ・・・寺沢君とこれ以上いてもお互いに苦しいはずだし。」
「そんなことない。」
「・・・・・私さ・・・寺沢君のこと良い人だと思うよ。でも、恋人として好きになれなかった。きっといつか寺沢君にぴったりの人が現われると思う。」
「・・・・・」
「だから・・・ね・・・」
「・・・・・」
じゃあ、なんで付き合ったの?そう聞きたかった。
でも、俺は聞けなかった。恐ろしい答えが返ってきそうで、聞けなかった。
怖かった。
「・・・・・わかった。でも、最後に一つだけ言わせて欲しい。」
「・・・・うん。」
「俺は森田さんのことが本当に好きです。今でも。」
「・・・・・ありがとう。こんな私を好きになってくれて。私も・・・短い間だったけど、楽しかったです。」
「「・・・・・」」
「じゃあ、出ようか・・・」
「・・・・うん。」
その後、何も考えていなかった。気が付いたら、駅にいた。
彼女は電車だ。
いつもなら家まで送るのだが、彼氏という肩書を失った俺に送る資格はないだろう。
「バイバイ・・・」
森田さんが手を振る。
「うん。バイバイ・・・」
俺は軽く手を振った。
彼女は改札を通って、駅のホームに行ってしまった。
当たり前だが、振り返ることはなかった。
俺たちはこんな感じであっさり別れた。
俺は彼女が消えた後もずっと駅から動けなかった。
「大丈夫ですか・・・?」
「はい・・・すみません。」
俺は駅員に話しかけられ、やっと我に返った。