初めての彼女② 蓮視点
初めての彼女だった。
森田さんも男性と付き合ったことはないらしい。
遊園地に映画などメジャーなスポットは行った。
彼女が喜びそうなことは何でもした。
俺はどうにか距離を近づけたかった。
俺のことを見てもらいたいと思っていたが、そうはならなかった。
俺は森田さんにかっこいいところを見せたかった。しかし、かっこつければつけるほど、俺は素を見せることができなくなった。
それでも、いつか心を通わせることができるのではないか、自分を見てもらえるのではないかと思った。
俺にできるのは手をつなぐことぐらいだった。それも彼女の最寄駅から家までの短い距離だった。
2ヶ月経っても俺たちは苗字で呼び合っていた。付き合ってから少しして、名前で呼び合うことも提案したが、却下されてしまった。
それでも俺は彼女のことが好きだった。
しかし、お互いに就職活動も本格化し、会う時間も減ってしまった。
メッセージは毎日送ったが、一日過ぎても帰ってこないこともざらだった。
電話もしたが出てもらえなかった。
彼女も忙しいんだろうと自分に都合の良いように思いこんだ。
今思うと俺は相当重い男だったと思う。
彼女の話を聞きたかった。俺のことも知ってもらいたかった。
しかし、距離は近づくことはなかった。
むしろ彼女の心が離れているのが分かった。
就職活動が終われば、会うことさえできれば、まだ何とかなると思った。
付き合って5ヶ月程が過ぎたころ、彼女からメッセージの返信が返ってこなくなった。
バイト先に行って会うことも考えたが、就職活動で出勤が減っている上に、嫌われたらどうしようと思い合いに行けなかった。
メッセージが返ってこなくなって1ヶ月が過ぎた。
めったにメッセージが来ない俺のスマホにメッセージが届いた。
森田さんからだった。俺はすぐに中身を確認した。
久しぶりです。
メッセージ返せなくてごめんなさい。
私の都合で申し訳ないのですが、会うことはできますか?
場所はいつものショッピングモールでいいですか?
俺は久しぶりにメッセージが返ってきたことで喜んだ。
やっと俺の想いが通じたと思った。
そして何とか距離を戻したいと思った。
今思うと俺たちの距離は全く近づいていなかった。当時の俺はそんなこと全く思ってなかった。
別れ話をされるなんて考えなかった。