プロローグ 蓮視点
「本当に今進んでいる道は正しいのか?」きっと誰でも一度は思ったことはあるだろう。
社会人2年目になる寺沢蓮は最近いつもそれを考えている。蓮は大学を卒業し、大手アウトドアメーカーに就職し、仕事も一通り覚え、順調に社会人として歩んでいるように見えた。
しかし、ずっと何とも言えない違和感があった。この違和感を抱えたまま、このまま仕事を続けていける自信がないのだ。
ただ、仕事を辞めても自分に合う次の職場が見つけられるとは限らない。その上、自分の能力では今以上の給料がもらえる仕事につける自信もない。
このまま現状維持を自分は続けていけるのかもわからない。
そんなことを思いつつ、今日も蓮は仕事にむかう。
◇
「寺沢さん、東店の小島さんから電話です。」
最寄りの店舗に勤務する、新人のころお世話になった小島さんから電話があった。
「ありがとうございます。もらいますね。」
そう言って受話器を受け取る。
「お疲れ様です。寺沢です。電話変わりました。」
「お疲れ様です。明日のツアーの下見のことですが、天気が悪そうですが、どうしますか?道に迷うとところもないですし、当日は後ろについてもらうだけなので、今回は中止にしてもいいかなと思ってるんですけど。それか、雨でも行きます?」
来週にある山のツアーの下見を明日行く予定をしていたが、今回は中止になりそうだ。心配性の寺澤は本音を言えば、下見に行きたかったが小島さんと休みが合うのが、明日しかないため仕方ない。
「いやー、雨の中は行きたくないですね・・・明日は中止にしましょうか・・・。明後日が休みなので、一人で行きます。やっぱ、一応見ておきたいので。あとで明日もらうはずだった、地図を送ってもらっていいですか?」
「相変わらず真面目ですね。了解です。あとで地図FAXしておきますねー」
「よろしくお願いします。電話ありがとうございました。」
「お疲れ様です。」
こうして、明日の下見は中止になった。
「しゃーない、明後日一人で行きますかー。」
◇
「寺沢さん、お疲れ様です。」
「お疲れ様です。」
アルバイトが全員帰り、レジを締め始める。入社から約2年この作業も手慣れてきた。
「明日は予定がなくなったから、ゆっくり寝られるぞ。そうだ、帰りにラーメンでも食べていくか。」
そんなことをつぶやいている間に、レジ締めが終わり、施錠し店からでる。
「う・・・雨が降ってる・・・。今日はラーメン諦めよう。家になんか食べるものあったっけな?」
駐輪所まで走っていき、雨合羽を出し、着替える。
「ホント雨嫌い・・・」
帰宅し、家にあったカップラーメンを食べ、シャワーを浴びて、ベッドに倒れこみ、眠ってしまった。
これが寺沢蓮の一日である。
社会人になって3回目の夏が近づいていた。
初投稿です。
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