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令嬢たちのおはなし

婚約破棄された令嬢は夢を叶える

作者: alma

大変短いです。

細かい所とか考えないでササっとお読みください!

(※細かく修正しました、若干内容が増えたりしています)

「悪いが、お前とは婚約破棄をさせて貰う。私の婚約者となるのは彼女だ」


漆黒の髪にペリドットのような透き通る黄緑の瞳を持つその男は、私を睨みつけながらそう宣言した。

彼の横には、私と同じプラチナブロンド持つ妹、マリナがにやにやと笑みを浮かべ、彼の腕に寄り添っていた。


「そう……。もうお父様にお話は?」


「勿論全て把握しておられるわ。あとは貴女がこの屋敷から出ていくだけよ!」


「……わかりました。お父様にご挨拶が済み次第、出ていきましょう」


いつかこうなる予感はしていた。だから私は、もう荷造りを終えていた。


こつ、こつ、とゆっくりと廊下を進み、階段を上る。


長年歩き慣れた我が家に一抹の寂しさを感じる。


「お嬢様……」


涙声が聞こえ振り向けば、私の専属侍女のカリサが、涙を堪えながらハンカチを握りしめていた。


「私もお嬢様に付いて……っ!」


「……いいえ、それは駄目よ。貴女はここでこの屋敷を守って」


カリサの言葉に甘えそうになったけれど、これから私の行く道に彼女を犠牲にするわけにはいかない。


「カリサ、今まで本当にありがとう。またいつの日か、会いましょう。元気でね」


「はい……、はい……!必ず……!」


こんな私にずっと付き添ってくれてありがとう、カリサ。


「お嬢様!!」


この声は料理長のマドック。私の為にいつも特別に料理を作ってくれていた。彼のお陰で私はいつも元気に過ごす事が出来た。


「もう、お嬢様に料理が作れねぇと思うと……俺は……俺は……!俺もお嬢様と……!!」


その甘い誘いにぐっと頷きそうになる。


「だめよ、マドック。何の為に貴方はここにいるの?貴方には成し遂げたい事があるのでしょう?それを忘れては駄目よ」


「……そう、ですね。俺、いつまでもお嬢様のお帰りをお待ちしておりますんで!!もっともっと腕を磨いときます!!」


「ええ、楽しみにしているわ!」


他にも沢山の使用人に涙ながらにお別れの挨拶をしていく。私はこんなにも愛されていたんだ、と改めて実感する。


そして、最後の挨拶は。


「行くのか」


「はい。今日、ここを出ていきます。今までお世話になりました」


「そう、か。……寂しく、なるな」


珍しくお父様は声が震えていた。


「ここまで育てていただき、ありがとうございました。……では行って参ります、お父様」


「ああ、いってらっしゃい」


人生の中で一番の優しい声でした。


最後に私の部屋へと向かった。ベッドの上に置かれた鞄一つを手に持ち、自分の部屋を見回す。


元々物があまり無かったとはいえ、全て無くなれば、心にぽっかりと穴が開いたような寂しさを感じた。


未練を断ち切るように部屋を後にした。


「さて、行きましょうか」


そして私は、屋敷を背に一歩踏み出した。




――




姉が、出て行った。


私の大好きな姉。


何よりも大好きだった姉。


でも後悔は微塵もない。


先程の笑みは消え、彼の腕を濡らしながら抱き着く。


「ふぐ……うぅぅ……」


大きな声で泣けば、姉は一目散に戻ってきてしまうだろう。姉は、とても耳が良い。


ぽんぽんと頭を撫でられる。


「よく頑張ったな」


とても優しい声で私を慰めてくれるのは姉の元婚約者で私の今の婚約者。


今も昔も、姉と共に彼が大好きだった。


ずっとこの3人で居られたらと思っていた。でもそれは姉の望みではない。


「これで、よかったの。そう、よかったのよ」


私は自分にそう言い聞かせた。



――




私の婚約者は、とても美しかった。


十人が彼女を見れば、十人とも見惚れる程。


それが私にはとても重荷だった。


彼女の妹もとても可愛らしいが、それは一般的に、だ。


私の腕にしがみつき涙を我慢するマリナを実に愛らしく思う。


「よく頑張ったな」


私はマリナが姉をとても愛していた事を知っている。これからは、私が彼女の代わりに支えていかなくてはいけない。マリナはとても、弱いのだ。


そして私の元婚約者は出て行った。


「君に幸あらん事を」


彼女の行く先を見据え、そして祈った。




――




私には目標があった。


それは、全てを犠牲にしなければ達成できない。


「挑戦者は前へ」


だから、この場に来れたのは皆のお陰だ。


「よく、ここまで来れましたね」


穏やかに彼女は告げる。


「容赦は致しません。全力で掛かって来なさい」


送り出してくれた皆の為にも、私は持てる力全てを出し彼女を倒す。


闘技場の神である、私の母を。


胸の高まりが抑えられない。


ああ、やっとここまで来れたのだ。


「参ります、お母様」


静かに宣言し、全身全霊を込めた一撃を、母へと向けた。


――


男は元婚約者を思い出す。


本当に美しかった、彼女のあの打撃は。


私には重過ぎる一撃だったな、と少し切なくなった。

幸せな婚約破棄を目指したらいつの間にか闘う令嬢が生まれました。

続き?のお父様目線を投稿しました!

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