第81話:秘薬に弱ぇー・・・ part2
物語のストーリーにより、加筆と訂正を行いました。
夜になり、俺は自室を抜け出した。
既に、ユーヤの姿はどこにもない。
俺はポケットに入れている試験管を右手で握る。
左手にはある物を持っている。
両方そこにあることを確認し、急ぎ足で待ち合わ場所である校舎入り口へと向かった。
校舎入り口へたどり着くと、校舎の中からコンラートが現われる。
これはいつものことで、俺が来るまでコンラートがコウ達を見張ってくれている。
「おじさんこんばんは」
「あぁ、こんばんは」
毎夜毎夜礼儀正しく挨拶するコンラート。
本当に真面目な少年だ。
「コウ達は講堂にいるよ」
今日は講堂か。
とりあえず、あいつらの行動を監視しよう。
もし、本当にあいつらがスパイだという確証が得られたなら、相応の対応をしなければならない。
講堂に着くと、コウ達は相変わらず何かを探していた。
いや、何かというよりも誰かのような気がする。
では、いったい誰を探しているのだろうか?
「くそ。今日もダメだ。おい、ここまで見つからないってことは、俺達の手に負えないのではないか?」
「そうだとして、なら止めますなんてできるか? できねーだろ? そもそも、俺達が夜な夜なこうしていることにも意味があるんだぜ?」
どうやら今日も成果なしのようだ。
彼らは寮のほうへ戻っていく。
さて、そろそろ俺の目的を遂げさせてもらおうか。
「少年、少し俺に付き合ってくれないか?」
「いいけど、どうしたの?」
「まぁまぁまぁ、とりあえず移動するぞ」
そう言って俺はコンラートを連れ立ってラボがある地下の保管庫へ向かった。
もちろんラボに用があるわけではない。
リンカの推測が正しければ地下が怪しいとのこと。
ゆえに、実験するなら保管庫が最適だと思ったのだ。
「こんなところで何するの?」
「少年はとりあえず、魔道教典を読んでくれたらいい」
「え? 何で??」
「ちょっとした実験だ。予想が当たれば、後で説明するから」
「それならまぁ、いいけど」
俺はコンラートへ魔道教典を手渡す。
そしてポケットから試験管を取り出し、中身を一息にあおった。
「――――ゴフっ。ぬぇぇ、まっず!」
何だこれ。
以前嗅いだドブの味がする。
後味最悪だと思っていると、体中の魔力が瞳に集中していくのが感じられる。
何度か瞬きすると、視界がぼやけ始め、コンラートから出ている湯気が見えた。
「いいぞ。どこでもいいから読んでくれ」
「わかったよ。えーと、魔法使いは種族を超えた上位の存在である。ゆえに、下位の存在である者達を護る義務がある。彼のヴァン・フリードと共に戦った大魔法使いミカエラ・グリューゲルもまた同様の言葉を残している。それゆえ我ら魔法使いは――――」
コンラートが魔道教典を音読すると、コンラートの湯気が魔道教典へ移る。
この湯気の量が魔力量を表すとすれば、結構な量が魔道教典へ移動している。
誰だよ、微量とか言ったのは!
つか、この本を俺が読んだら数節で魔力欠乏症になるのではないか?
いつも任意授業で眠くなるのって、俺の防衛本能ゆえだろう。
よくやった俺!
ナイスだ俺!
自分を褒め称えつつ、魔道教典から湯気がどこへ行くのか見つめる。
湯気は一筋の線を作り、保管庫の隅へと伸びている。
よし、追うか!
「おじさん、どこいくの?」
「いいから続けてくれ」
ゴン!
返事をし、前方を振り向いた瞬間。
何かが俺の額に直撃した。
「あうちっ!」
額を押さえ、身を屈めながら進むと、今度は脛に何かが当たる。
「痛ってー! 今度は脛かよ」
脛を押さえ涙をこらえていると、数歩も行かない内にまたもや何かがぶつかった。
「膝が! 俺の膝小僧が! 大丈夫か膝小僧??」
さすがに膝小僧をやられては立っていられない。
痛みに呻き、うずくまる。
くっそ。
この保管庫、魔法具があり過ぎだろ!
まったく整理もしていないし、少しは中を歩く人のことも考えろ!
「おじさん、何してるの?」
これだけ大騒ぎしては、コンラートが心配になるのも無理はない。
仕方が無いか。
ここは俺の頭がおかしくなったわけでは無いと証明するため、少し説明しておく必要があるな。
「ここから先、何を聞いても、何を見ても他言無用を誓えるか?」
俺は膝小僧をさすりながらコンラートへ問いかける。
「う、うん。誓うよ!」
「よし。いいか? 先ほど俺が飲んだのは魔力の流れを可視化する秘薬だ。だけど、それには代償があって、その代償が視力低下なんだ」
「膝小僧じゃなくて?」
「膝小僧じゃなくて! それはそこで打っただけだ!」
思わず声を荒げてしまった。
「そんなに怒らないでよ。冗談だから」
どうやら俺は、10歳になるかならないかの少年におちょくられたようだ。
一瞬、声を大にして叱ってやろうかと思ったが、今はそれどころではないことに気づく。
やばい、早くしないと秘薬の効果が切れる。
「とにかく、俺は今魔力の流れが可視化できるから、その魔道教典から流れる魔力を追う。今は時間がない。説明は後でするから、とにかくそれを読んでくれ」
コンラートは釈然としない顔をしつつも、魔道教典の続きを読み始める。
俺は慎重に、でも素早く歩を進め、ついに魔力の湯気がどこへ向かっているのか突き止めた。
そこは保管庫の隅にある幅木と床の間である。
「少年、ここに穴を開けれるか?」
「うわっ。おじさんが変なこと言ってるよ・・・・」
校舎の床に穴を開けろというのには、さすがにドン引きのようだ。
「これは仕方がないんだ。そうでもしないと、この魔力がどこへいくのかわからない。なぁに、後で直せば問題ない」
「問題あるでしょ! 本当に、おじさんどうかしてるよ」
そう言いながらもコンラートは杖を取り出し魔法の準備をしている。
俺がどうかしているのなら、お前もどうかしているぞ。
普段の真面目さはどこへいった?
俺は床のシートを引っぺがす。
この下を掘れば、最悪直さなくてもシートを被せればバレないだろう。
そもそも、保管庫なんて俺のラボの仲間以外の人を見たことなんてほとんど無い。
つまり、すぐにバレることはありえないのだ。
「はぁ。それじゃぁいくよ? 地面を穿て、プロセシング」
コンラートの魔法により、地面に穴が開く。
大きさは大人がやっと通れるくらいだ。
「でかした!」
穴に頭を突っ込むが、下は暗く、何も見えない。
コンラートが魔法で作った光源をその中に浮かべる。
まぶしくて、余計何も見えない・・・・。
「石を固めて作った基礎があるね」
・・・・そりゃそうだ。
床の下は基礎。
常識である。
では、魔力の湯気はどこへいったのだろうか?
コンラートへ魔道教典を読むように指示を出す。
そうして確認すると、どうやら湯気は基礎に開けられた穴に吸い込まれている。
「少年、もう一度だ」
基礎を指差し指示を出す。
コンラートは、こいつマジか? と言うような顔をしている。
あぁ、マジだよ。
この程度で俺は揺るがない。
コンラートは諦めたのか、再度魔法を行使する。
すると、基礎にまで大人が通れる穴が開いた。
穴から、風が吹き出てくる。
つまり、穴は地中にある空間と繋がっているということだ。
「おじさん、どうする?」
不安そうなコンラートに俺は笑って答えた。
「そんなの決まってる。今から行くか、すぐ行くかの二択だ」
「つまり、行くってことね」
俺は魔法で小さな石を精製すると、穴に落としてみた。
しばらくして穴がそこに当たる音がする。
これは、かなり深い。
下手に飛び込んだら死へ一直線だ。
どうしたものか悩んでいると、一つ名案を思いついた。
「ちょっと待ってろ」
俺はラボへ向かい、魔法で鍵を扉の鍵を開け、中へ侵入する。
すぐに目当てのものを見つけた。
コンラートの元へ戻ると、2つある秘薬の内の一つを手渡す。
ちなみに、その間に体を何かへぶつけた回数は、計7回に上る。
たぶん体のあちこちに青痣ができているだろう。
「これは俺のラボの一人が作った浮遊できる秘薬だ」
「浮遊! それはすごいね」
「だが、問題があってだな。浮遊はできるが、効果が切れるまで地面に降りられないし、動けない」
「効果が切れるのは何時間?」
「5分だ」
「それなら大丈夫、かな?」
「多分な。よし、俺が先に行く」
俺は『ござる』が作った秘薬を飲む。
今度は吐き気がするほど甘ったるい。
うぇ~っと思っていると、体が地面から浮き上がった。
コンラートへ頷き、俺は穴へ飛び込む。
今日、この秘薬を飲んだ『ござる』を降ろそうと、俺達は手を尽くした。
高いところから落としたり、頭から落としたり、背中から落としたり・・・・。
しかし、結果は同じ。
床から30cmをキープする。
そんな実験結果があったからこそ、この秘薬を服用したのだが・・・・。
本当に大丈夫だろうか?
俺は落ちながら考えていた。
これだけの高さから落下させる実験はしていない。
もし秘薬の効果がこの衝撃に耐えられなければ、俺は煎餅みたいにペチャンコになるだろう。
それだけは嫌だ。
若干の不安を残しながら、俺は空洞の底へ向けて降下する。
底へ近づくにつれ、俺はその幻想的な景色に言葉を失った。
空洞の底が青白く光っている。
しかもその光は曲線となり、何かを描いているように見える。
それが何であるか、まだ確証はないが、推察はできる。
そんなことを考えていると、地面へ到達した。
そして、どうやら秘薬はしっかりと効果を発揮しているようだ。
地面に激突してペチャンコにはなっていないからだ。
俺が大声でコンラートへ報告すると、彼も俺と同じように秘薬を飲み、空洞へと飛び込んだ。
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