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第77話:酒に弱ぇー・・・




「まず結界魔法の構造について整理しまーす。いいですか? 以前あの結界魔法は、魔法陣か魔法具を媒体にしてるかもって言ってましたが、あれは間違いです。どうやら、魔法陣と魔法具の両方を媒体にして発動しているようでした」


 両方か。

ならばあれを成しているのは複雑な魔法構造ゆえだろう。


「しかもですよ? 使用されていたのは聖遺物のようです」


 聖遺物か。

古の魔法使いが作成した魔法具。

伝説の戦士が使っていた武具。

そういった物が長い年月を経て巨大な魔力を内包したものだったか。

転生前の世界では、聖遺物を作ったのはほとんどがエルフ族だった。

この世界はどうなのだろうか。


「その聖遺物をつかっても、2年ないしは3年程度しかもたないようです。結界魔法が発動されてから、百年以上は経過していますので、考えるだけでも恐ろしいほどの聖遺物が消費されたことになります。ただ、二十年ほど前、私の曾おじい様とおじい様が新しいシステムを構築したようなのです。でも、その情報はどこにもありませんでした」


「なぜ、新しいシステムを構築したと分かる?」


「聖遺物って現存している物はそんなに数多くないのです。だから、それらがシュタットフェルト魔法学院へ届けられたかどうかの履歴を調べました」


 おそらくユイにでも頼んで書類を持ってこさせたのだろう。

島内であれば魔法のポーチみたいな収納魔法も使えるのだから。


「・・・・ユイってここによく来るのか?」


「ほとんど毎日来てるわね。ちなみにあんたのことは逐一報告してもらってるから」


 げっ! マジかよ。

つか、ユイくらいの上級生になれば自由に学院から出られるのか?


「話を戻します。その新しいシステムというのが何なのか分かりませんが、聖遺物に頼ることなく膨大な魔力を結界魔法へ送っているということは分かります。では、どうやってそれだけの魔力を補充していると思いますかー?」


 リンカが人差し指を立て、問題を提示してくる。

どうやら彼女には答えが分かっているようだ。


 俺は腕を組み、必死に考える。


「セリアさんだったらどうするかを考えてみてくださーい」


「俺だったらか・・・・。そうだな、俺なら魔物を飼うかな。それもかなりの魔力を持ったやつをだ」


「え!・・・・」

「えぇー・・・・」


 二人の声が重なる。

何だよ。文句でもあるのか?

止めろよお前ら。

そんな目で見るなよ!!


「ちょっとさすがに今のはドン引きだわ」


「私もです。魔物を飼うという発想がそもそもヤバいのですが、更にかなりの魔力を持ったって、そんなのいたらメデゥカディア島なんて消滅してますよ・・・・」


「だったら、答えは何だ?」


「答えは簡単です。この島に住んでいる70%以上は魔法使いです。彼らから少しずつ魔力を吸い取ればいいんですよ」


 なるほど。

確かに島民から魔力を吸い上げれば、結界魔法くらい維持できる。

問題は・・・・。


「魔力を貯蔵する聖遺物か何かが必要だろ?」


「そうですね。それについては分かってませんが、この島の人たちから魔力を吸い取る方法はわかりました」


 リンカが一冊の本を取り出した。

魔道教典。

この島の住民の七割以上が魔法使いであるなら、当然この本を所持している。

更に言えば、魔法使い達はこの信仰こそ正しい教えだと思っている節がある。


「試したのか?」


「はい。ですが、魔力が吸われているような気はしますが、はっきりとはわかりませんでした。おそらく、それ程に微量だと思います」


 確定ではないが、リンカには確信があるようだ。

彼女がそう言うのだから、おそらく間違いないのだろう。

こと魔法に関しては、リンカへの信頼は絶大である。

・・・・それ以外はダメダメだけどな、こいつ。


「結界魔法の構造はなんとなく分かった。俺がすべきことは、魔法陣と魔法を貯蔵するなんらかのシステムを探せばいいってことだな?」


「はいそうです。ちなみにですが、この結界魔法は半円の形をしていました。その中心がシュタットフェルト魔法学院です。なので、学院の上か下に秘密があると思います」


 上か下?

学院の最上階か、地下か。

最上階は理事長室。

地下は俺のラボがある魔法具の保管庫がある。

地下なら色々な生徒が勝手に入っているし、可能性が高いのはやはり理事長室か。


「わかった。やれるだけやってみる」


「よろしくお願いしまーす。さーて、私ができることはここまでです。後はセリアさんの報告待ちですねー」


 どうやらこの一ヶ月間、必死に色々な情報を集め、精査していたようだ。

さらに外へ出られないことで、ストレスをかなり溜め込んでいると見受けられる。


「さて、晩御飯の準備をするとしますか」


 レーアが立ち上がり、台所へ消えていく。

その姿を見送って俺はリンカへ尋ねた。


「そういえば、ティファニアは?」


「まだ戻ってないようですー。心配ですねー」


「まぁあいつなら大丈夫だろう」


「・・・・それもそうですねー。ティファニアさんですし」


「だな。ティファニアだし」


 天才と言われたリンカであるが、魔力量だけみればティファニアが上回っている。

それが分かっているのか、リンカもティファニアへの信頼は厚い。


 それから俺とリンカは学院の話をした。

授業のこと。

教師のこと。

ラボのこと。

理事長のこと。


 しばらくするとレーアが晩御飯を運んできた。

俺達はそれを食べ終わると、それぞれの部屋へと戻る。


 幸い、俺の部屋は出た時のままである。

俺はベッドに横たわり、今後の予定を頭の中でシミュレートする。

そうしていると睡魔が襲って・・・・来ない!

アレだ。

昼に寝すぎたせいで全く眠くならない。

そんなことを考えれば考えるほど眠くない。

これはまずい。


 俺は起き上がり、リビングへと向かう。


 小腹が空いたなどと思いながら部屋中を物色する。

すると台所の下台の中からいい物を見つけた。

瓶に貼られているラベルには『聖剣』と書かれている。


「魔法により精製、熟成させた魅惑の酒。魔法の偉大さが凝縮された至高の一品。*なお、本製品は蔵元でのみの販売になります、か。謳い文句が自信満々のようだが、どれ、一つ試してやるか」


 コップに液体を注ぎ飲んでみる。


「お~! これはうまい」


 これほどの酒は久しく飲んでいない。

転生前に飲んだドワーフ族秘蔵の酒に匹敵するうまさだ。


 俺は辺りを見回し誰もいないことを確認すると、酒とコップを思って忍び足で自室へ戻った。


 夜の闇が深まっていく中、俺はちびちびと贅沢な時間を楽しんだ。




 目が覚めるたのは昼前である。

どうやら酒を飲みながらいつの間にか眠っていたようだ。


 ベッドから立ち上がると、体がふらつく。

どうやら二日酔いのようだ。


 リビングへ行くが、そこには誰もいない。

レーアはとっくに仕事へ出たのだろう。

リンカは自室にいるようだ。

まだ寝ているのかもしれない。


 水差しから水を飲むと、二日酔いは幾分か収まった。


 自室に戻り、手早く学院へ向かう準備を整える。

その際、連れて行って欲しいと酒瓶が懇願するので、仕方なくコップと共に鞄へ詰め込んだ。

仮にこれがレーアの物だとしても、次に会うのは一ヵ月後くらいになるだろう。

さすがにそこまで怒りを持続させるのは難しいと思う。


 リンカの部屋の前で、出発する旨を伝えた。

しかし、反応は皆無である。


 一ヶ月前と同様、誰にも見送られることなく家を後にした。


 学院の自室へ戻り荷物を置くと、食堂へ向かい昼食を食べる。


 その後図書館を覗くとコンラートがいた。

何やら難しい本を読んでいる。

本当に勉強熱心で真面目な奴だ。

若いのに感心である。


 それから夜までの間、適当に時間を潰した。

ユーヤが部屋へ戻ってきたのは、夜も遅い時間であった。

完全に酔っ払っており、自分のベッドへ倒れ込むように突っ伏した。

どうやら休日を満喫していたようだ。

何よりである。


 ユーヤの様子を見ると、どうにもお酒が飲みたくなる。

この学院ではお酒の持ち込みについての記載はなかった、と思う。

たぶん、きっと。

一応周りの目を気にしながら、俺は布団に潜って一人酒盛りを始めた。

『聖剣』という酒は本当に美味い。

二日目だというのに、いくらでも飲めてしまう。

これはしばらく、夜の楽しみができたと嬉しくなった。


 明日からはまた授業が始まるが、今宵、この時はまだ休日である。

俺は最後まで休日を楽しみ尽くしたのであった。

いつもご愛読ありがとうございます。


続きが気になる方、気に入っていただけた方は是非ブックマーク、評価をお願いいたします。


シュタットフェルト魔法学院編はここから一気に展開が動くと思います。


楽しんでいただければ幸いです。


それでは今後とも何卒よろしくお願いいたします。

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