第64話:予想外の展開に弱ぇー・・・ part2
更新します。
次回は更新が遅れるかもしれません。
「あんた達、少し黙りなさい。話が進まないじゃない!」
ついにレーアの怒りが頂点に達した。
リンカとユイはレーアの言葉に、一瞬だけ体をビクッと震わせると借りてきた猫のように黙り込む。
その姿を確認した後、レーアが言葉を続ける。
「ユイさんと言ったかしら? 私達にはまだあなたを信用することができないわ。だから私の質問にだけ答えてくれるかしら?」
圧が強いレーアの言葉に、ユイは何度も頷くことしかできないようだ。
まるで蛇に睨まれた蛙である。
「まず、あなたはどうしてここへ来たの?」
最初は答えやすい質問をすることで、質問に答えることを慣れさせるつもりだろうか?
レーアは少し声を優しくし、問いかける。
「私はリンカ様がいなくなられてからいつお戻りになられても良いよう、定期的に部屋の掃除をしていたました。それでたまたま・・・・」
「たまたま、ねぇ。まぁいいわ。それじゃあ次よ。全身黒装束の男達に心当たりはない?」
「・・・・いえ、ありません」
少し考えた後、ユイが答える。
「レーアさん、ユイちゃんが知るわけないですよー」
何言ってるの? とでも言いたそうにリンカが口を挟む。
「あのねー、さっきの黒装束の男達はあんたのことを知っていたのよ? だったら狙いはあんたの可能性が高いわ。しかも昼にはあんたを探す依頼だってギルドに上がってきていたのよ? 偶然とは思えないわ」
俺も同意見だ。
ティファニアを見ると、彼女も同じようで小さく頷いた。
「もしそうだとするなら、一番怪しいのはあんたの祖父のここの理事長でしょ? 私達は敵の真ん中に飛び込んだ可能性もあるのよ」
「おじい様が私の命を狙っている・・・・・」
リンカの表情が暗くなる。
いやいや、まだ可能性の話で確定ではないぞ。
真に受けるの早すぎだろ!
「それを踏まえて、あなたは何かしりませんか?」
レーアがユイに向き直る。
「わかりません。ですが、理事長はリンカ様がいなくなられて大変気落ちしておりました。それなのに命を狙うとは思えません」
それはわからないだろう。
何か事情があるのかもしれない。
俺達から見れば、ユイが嘘をついている可能性もある。
「次の質問は俺がしてもいいか?」
「どうぞ」
俺はレーアから質問を引き継いだ。
「ユイと言ったな。では俺から質問だ。なぜティファニアを見て、エルフがここにいることにあそこまで驚いた?」
・・・・・ん?
あれ、ユイは反応がない。
どういうことだ?
「おーい、ユイさーん?」
「ユイ、どうして質問に答えないの?」
たまりかねてレーアが問いただす。
「私は、レーアさんからの質問にしか答えません。そう言われましたので」
それは確かにレーアがそう言っていたが、何事も臨機応変が大切だと思うのだが。
「じゃぁ、私から。さっきのセリアの質問に答えて」
ユイが一瞬、俺を嫌そうな目で見てから口を開いた。
「エルフはバンドーンの手先ですから、私達の敵です」
今度はティファニアを見て、憎しみのこもった声で言った。
「エルフが敵? それにバンドーンって、ユイちゃん、いったい何があったの?」
リンカが驚き、ユイに問いかける。
ユイはしばらく感情を整理した後、リンカの問いに答えた。
リンカの問いには答えるんだな・・・・。
「リンカ様がいなくなられてすぐのことです。これまで友好的であった隣国のバンドーンが突然国交を断ってきました。それから程なくして宣戦布告があり、シュタットフェルトとバンドーンは戦争状態になりました。その原因は、西の森に住むエルフと手を結んだからと言われています」
俺にはさっぱり情勢がわからない。
俺以外の三人はそれぞれ何か考えることがあるのだろう。
深刻そうな顔で考え込んでいる。
俺だけが蚊帳の外である。
ただ、なぜ港に船が多いのかはわかった。
要するに戦争のためだ。
島国ではどうしたって、船が必要になる。
「バンドーンって傭兵国家のバンドーンよね?」
レーアがリンカへ確認する。
「はい、そうです。これまで各国、特に魔王軍との最前線で戦うサンドレット王国とベルレアン公国へシュタットフェルトが魔法使いを、バンドーンが傭兵を供給してきました」
どうやらシュタットフェルトもバンドーンも大陸の南にあるため、魔物の脅威がほとんどないようだ。
そのため、前線へ戦力を供給する後方支援的な国になっている。
ただ、やはり平和ボケした国だ。
ここまで人族が魔王の脅威に晒されているというのに、人族同士で戦争など愚者の極みである。
「本当にエルフ族が人族の争いに力を貸しているのでしょうか?」
ティファニアがユイへと問いかける。
「はい。それは間違いありません。これまで何度か小競り合いがあった際、エルフに同胞が殺されたと聞きました」
ティファニアはショックを受けたのか、それっきり黙り込んだ。
西の森のエルフと交流はあったのだろうか。
それにしても、ティファニアの質問にも答えるんだな。
俺の質問には答えたくないと。
どういうことだ?
おっさんいじめか?
俺は問いただしたい気持ちが膨らむのを感じたが、この質問は至極個人的なため我慢した。
まぁ、いい。
折を見て聞いてみよう。
「ユイちゃん、ティファニアさんは大丈夫です。彼女は、ここからずーと北西にいったところに住むエルフ族ですから、西の森のエルフとは無関係ですよー」
リンカの言葉に、ユイが少しだけティファニアへの警戒心を和らげる。
ユイのリンカへの信頼度は絶大だ。
これでユイから聞きたいことはある程度聞き終わった。
さて、これからどうするか。
「よし、整理するぞ。まず俺達の目的だが、シュタットフェルトから出てエルアルドへ戻るってことでいいよな?」
俺が三人に確認を取る。
三人が同時に頷く。
これは言うまでもないだろう。
「そのためには結界を解くか、結界から出るしかない。今の俺達に不足している情報はこれだ。だからまず、この情報を得なければならない」
「そうね。ちなみにリンカはどうやってこの島からでたの?」
「私は、学院を卒業した時に得た権利を使いました。学院を卒業した者は島の外に出ることができますので、それを使っておじい様には黙って船に乗りましたー」
なるほど。
シュタットフェルト魔法学院を卒業すれば島から出られるのか。
「じゃぁ、その船に潜り込むことは?」
「難しいと思いますよー。常に探知魔法が作動していますので」
「そう。それなら船をジャックするしか・・・・」
おいおい、レーアの考えが怖すぎる。
これが冒険者ギルドの受付嬢の思考か?
過激すぎだろ!
「と、とにかくだ。まずは情報を収集して確実な方法を見つけ出そう。それで、やはり俺達のことは誰にも知られずに行動した方がいいよな?」
「私はそう思うわ。まだ、理事長と黒装束が無関係という確証を得られた訳でもないし」
「私もその方が助かります。おじい様には黙って出ましたので、もし見つかったらもう旅ができないかもしれませんー」
「最大の懸念材料は彼女には知られたということですね。やはり口を塞ぎますか?」
ティファニアが腰の剣に手をかける。
「わ、私は誰にも言いません」
「そうです。ユイちゃんは信用できます」
「本人もリンカもそう言っておりますが、セリア様どうしましょうか?」
おいおい、嫌な言い方をするなぁ。
これだと決定した責任は俺が取らなければならないだろ。
皆の注目が俺に集まるのを感じる。
「正直に言うと、俺もユイを100%信用できるとは思っていない」
ユイが酷い顔で俺を睨みつける。
お前もレーアと同じかよ!
心の中で、レーア2世と呼ぶことにする。
「だが、危害を加えるつもりもない」
今度はレーアが、「それならどうするのよ?」といったような顔で俺を見る。
本当に、こいつらは・・・・。
「制約の魔法陣でもユイに刻むか?」
制約の魔法陣とは、定められた制約を破ることができないようにする魔法陣である。
ちなみに刻み方は、火魔法もしくはナイフなどで直接皮膚に刻むことになる。
「鬼畜」
「最低です」
「セリア様、それはちょっと・・・・」
三人とも、俺を酷い目で見る。
いや、ティファニアは口を塞ぐとか言ってたからそれよりマシだろ?
俺の発案に、当人であるユイが体を震わせる。
俺を睨む目つきがどんどん酷くなる。
まるで親の敵でも見るような目だ。
「こいつの言うことは過剰だけど、それにしても何か方法を考えないといけないのは確かよ」
珍しくレーアが助け舟? を出してくれる。
「ユイちゃんは大丈夫ですよー」
「リンカは彼女との付き合いが長いかもしれないけど、私達はたった今会ったばかりなのよ? すぐに信用なんてできないわ」
平行線である。
ここで判断を誤るわけにはいかない。
もし、ユイが俺達のことを広めた場合、最悪また命を狙われることになる。
しかも転移できない状況下で・・・。
「でしたら、私から提案があります」
未だ意見をぶつけあるレーアとリンカへ対し、堪らずユイが手を挙げた。
「提案って何?」
「この、特待章を使えば、一人だけ島の外に出ることができるはずです」
そう言ってユイは胸に着けているバッジを手に取った。
「ユイちゃん、それは・・・・」
リンカがユイを止めようとするが、ユイは首を振る。
「この特待章は学院で最も優秀な生徒に与えられる特権です。階級制度はないですが、この島では魔法の実力がすべてです。特待章を見せれば乗船の拒否はできません」
「でもそれだと、ユイちゃんに迷惑が・・・・」
「大丈夫とはいえませんが、これが一番私を信用してもらえる方法だと思います」
ユイはそう言って、特待章を差し出す。
「これはそんなに重要な物か?」
「はい。これを得るためには、一生懸命魔法を修練しー、勉学に励まなくては手に入りませんー」
うーん、リンカが言うと何だか軽い物に思えてくるんだよなぁ。
そう思いつつ視線を特待章に移す。
これを使えば一人は島から出られるのか。
誰が出るのが最適か考える必要がある。
「セリア様、誠に勝手なことを言いますが、特待章を私に譲ってはいただけませんか?」
ティファニアがわがままを言うとは珍しい。
「理由は・・・・、西の森のエルフか?」
「はい」
ティファニアにとって重要なことなのだろう。
であれば、断ることはできない。
「わかった。島の外へはティファに行ってもらう」
俺はレーアとリンカを見る。
二人とも、納得し頷いた。
「ありがとうございます」
「いや、いい。それよりも、行くからにはしっかりと状況を見定めて来て欲しい。今は人族もエルフ族も戦っている場合ではない。必要ならエルアルドへ戻る前に介入するつもりだ」
「わかりました。必ず、ご期待に応えて見せます」
ティファニアがそう言うのなら、何も心配はないだろう。
彼女にはそれほどの力がある。
問題は、残された俺達がこの後どうするかだ。
俺は腕を組み考える。
情報が必要だ。
では、どうやって得るか。
そして、どこに拠点を構えるか。
窓の外を見る限り、この建物にはいくつもの部屋がある。
ここはその一つだ。
だから、ここにいては誰かに見つかるのも時間の問題だろう。
実際、ユイには見つかったのだから。
「私に考えがあります」
リンカが勢い良く手を挙げる。
「聞くだけは聞く」
大した期待はしていない。
リンカは本当に、魔法以外はアホの子だからだ。
「その前に確認です。レーアさんは魔法って使えるんですかー?」
「使えないわ」
レーアが肩を竦めながら答える。
「そうですか、わかりましたー。それでは私の提案ですが、セリアさんが学院に入学すればいいんですよ
ー」
・・・・。
・・・・。
・・・・。
「なんでやねん」
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