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第61話:突然の来訪者より弱ぇー・・・ part3

更新いたします。

今回は文字数が少し少ないですが、切りがよいところまでになります。



 エルアルドが誇る富裕地区、西側。

その宿屋の一室に、三人の女の子が集まっていた。

彼女達にはそれぞれの部屋があるが、女子会をするために集まっている。


 彼女達の側らには、果実酒とお菓子が並べられていた。

農業主体のエルアルドであるが、基本的に陸地で取れる食べ物に関しての流通のほとんどを担っている。

ゆえに、果実酒もお菓子も非常においしい。


「それで、どうして私の部屋に来たのでしょうか?」


 ティファニアは困惑していた。

そもそも彼女はエルフ族であるから、人族を下に見ているきらいがある。

もっとも、普段はそのような態度をおくびにも出さない。


 そんな彼女であるが、レーアとリンカについては一目置いている。

あの最強の男であるセリアを手懐けているレーア。

そして、幼き頃より天才と謳われてきたティファニアの魔法を凌駕しうる実力をもつリンカ。


 人族であったが、彼女達と出会えたことは幸運だと思っている。

だからこそ、無下に扱うことはない。


「だって、明日にはエルアルドから出るんでしょ? そしたら野宿とかになるし、今日しかゆっくりと休める日は無いじゃない。リンカもそう思うでしょ?」


 ティファニアはそれなら早めに寝るべきでは? と思った。


「こ、これ、食べてもいーい?」


 リンカの目にはお菓子しか映っていないようだ。

食べても良いか確認しながら、すでに封を切っている。

その瞳は夜だというのに、爛々と輝いている。


「いいわよ。せっかくたくさん買ったんだし」


「やったー!」


 リンカはクッキーやケーキを口いっぱいに頬張り始める。


 レーアはティファニアと自分のコップに、果実酒を注いだ。


「ほら乾杯。ここの果実酒はおいしいから、ティファニアもきっと好きになると思うわ」


 そう言って果実酒を口に含むと、おいしそうに微笑む。

ティファニアも一口飲んでみると、そのおいしさに目を見開いた。


「おいしい・・・・」


「でしょー! 他の味も買ったから飲み比べしよ」


「でしたら、セリア様も呼んだほうがいいのではないですか?」


「嫌よ。これは女子会だから、女の子限定なの。それに、女の子の部屋におっさんが入るなんて危ないと思わない?」


 酷い言われようである。

それを聞いて、ティファニアは苦笑するしかなかった。


「私は大丈夫ですが」


「あのねー、ティファニアは美人なんだからもっと周りの目を気にした方がいいわよ。そうよねー、リンカ?」


「ん? 何どあなじですがー?」


 もぐもぐと口を動かしながらリンカが答える。

ダメだ。

食べるのに夢中で、まったく聞いていないと二人は思った。


「ところで、せっかくパーティーを組むなら名前をつけないといけないんじゃない?」


「それもそうですね」


「ティファニアは何か案はあるの?」


「そうですねぇ・・・・、『聖剣の担い手(セリア・グランディア)』とか、『救世主セリア』とかどうでしょうか? あるいは、『セリア様を囲む会』とか」


「無いわー、それは無いわー」


 レーアが呆れたような声を上げる。

一方で、お菓子に夢中のリンカには何の反応も見られない。

もしかしたら、自分には関係ないと思っているのかもしれない。


「では、レーアならどんな名前がいいですか?」


「私なら・・・・ん~」


 レーアは腕を組んで考える。

これと言った案は考えていなかった。

とは言え、もうティファニアに頼るつもりもない。


「よし、『黄昏の―――』・・・・」


「しっ!」


 突然ティファニアが人差し指を立て、レーアの言葉を途中で遮る。


「どうしたのよ?」


 レーアが小声でティファニアに尋ねる。


「屋根の上に誰かいます」


「え?」


「千里眼を使います。集中しますので、話しかけないでください」


 レーアが黙って頷く。

ティファニアは一度ゆっくり目を閉じた後、瞳を見開いた。


「5、6、7・・・・全部で14人。全身黒の装備で、闇にまぎれています。彼らの目的は何でしょうか?」


 疑問を口にしながらも、()()から視線を逸らさない。


「さぁね。でも、さすがに私達ってことは無いと思うわ。たぶんこの宿屋に泊まっている誰かじゃない?」


 そこそこ高級な宿屋だから、王族、貴族がお忍びで泊まっている可能性もある。


「ここの地区は安全だからという理由で、この宿屋にしたような気がしますが?」


「そ、そのはずなんだけど、どうして―――」


「レーア! リンカ! 戦闘準備。彼らの狙いはここです!!」


 レーアの言葉を遮ってティファニアが声を荒げる。

常に冷静な彼女にしては珍しいことである。


「え? なんで?」


 とっさに行動できたのはリンカだけである。

リンカはお菓子を食べるのをやめ、ベッドの杖を取りに向かう。


 レーアは動けなかった。

疑問だけが頭を支配し、行動に移すことができない。

彼女には、そのような経験が圧倒的に不足していたからだ。


 リンカが杖を手に取った瞬間、外と接している3つの窓が一斉に割れ、全身黒色の彼らが姿を現す。

否、窓だけではない。

廊下と接するドアも蹴り破られ、()()が侵入する。


 彼らはレーア達3人を見定めると、問答無用で襲い掛かった。

手には小振りの短刀を握っている。


「二人とも、私から離れないでください」


 ティファニアが自分達を囲むよう結界を展開する。

それと同時に、リンカが魔法を放った。


「風よ、舞え」


 暴風が彼らを襲い、壁に、床に、天井に叩きつける。

リンカは風を操作したまま、気絶した彼らを外へ追い出した。


「流石です」


 難は去ったように見えるが、ここへ入ってきたのがたった6人である。

屋根には彼らの仲間がまだまだいる。

おそらく、中の様子を確認しているのだろう。

まだ、入って来る気配はない。


 ティファニアは彼らが落とした短刀を拾い上げた。


「レーア、これを見てください」


 レーアはティファニアから短刀を受け取ると、刃の部分を見た。

刃には何かが塗られている。

黄土色の中に、赤い繊維が薄っすらと見える。


「・・・・これって、ティグリアの根の毒じゃない」


「やはりそうですか」


 ティグリアの根は猛毒である。

それが刃に薄く塗られている。

かすっただけでも死に至るとされており、ティグリアについては使用者だけでなく、生産者、所有者、採取者を含めて処罰の対象とされている。


「とにかく、セリア様の元へ行きましょう」


 ティファニアの提案にレーアは頷き、手早く荷物をまとめた。


「準備できたわ。行こう」


 カーン!


 レーアがそう言ったとき、ティファニアの結界に短刀が当たり甲高い音が響いた。

振り向くと、彼らの一人が窓から半身を乗り出し、短刀を投擲したようだ。


 リンカがまた、風の魔法を発動する。

しかし、今度は窓から姿を隠して避けられた。


 カーン!

今後は入り口から短刀が投擲された。


 これは非常にまずい。

ティファニアはそう思った。


 倒してしまいたいが、短刀で傷つけられたら死ぬというリスクがある。

上級魔法を使用した場合、無関係な人達も巻き込む可能性もある。

更に、レーアもいるのだから迂闊に動くことはできない。

レーアには自分の身を守る術がない。


 ドーン!

衝撃と共に、入り口のドア付近が粉砕した。


「すみませーん、少し力を入れすぎましたー」


 短刀を投擲した男が気絶している。

ティファニアはそれを確認すると、2人へ指示を出そうと口を開きかけた。


「二人とも、とにかくあいつと合流するわよ」


 レーアはそう言って廊下へ向けて走り始める。


 ティファニアはその姿を見て、僅かに、自然と笑みがこぼれる。

レーアには恐怖を飲み込む気概がある。

だからこそ、いつも通りの彼女を演じることができる。


 ティファニアとリンカはレーアの後を追う。

ティファニアは二人が結界から出ないよう細心の注意を払いつつ走る。


 その間も、結界に短刀が何度もぶつかった。

その都度リンカが魔法で攻撃を仕掛けるが、敵も手練のようでなかなか仕留めるまでには至らない。

とにかく、この状況をセリアなら打開してくれると信じ、三人は廊下をかけた。


おもしろい、続きが気になるという方は、

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また、感想もお待ちしておりますのでお気軽にお願いします。


改善点、クレーム、矛盾点等どしどしお待ちしております。

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