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第5話:受付嬢より弱ぇー・・・ part3

学生時代に書いた短編小説を掲載してみました。

興味がある方は読んで、感想をお願いします。

ただ、異世界ファンタジー物ではなく、純文学を目指した小説のため、ファンタジーonlyだぜって方はスルーしてください。

https://ncode.syosetu.com/n3373gl/


ではでは、第5話を楽しんでください。





 引きずられるように移動しているのはわかっていた。

たぶんギルドの受付嬢だろう。

けれど、頭が覚醒を拒否している。

まるで自分の体ではないように動かない。

 

 あぁ、自分の体ではないか。


 なぜこうなったのかを考えた。

可能性は一つで、女神が間違えたとしか思えない。

そういえば転生する直前、様子がおかしかった。


 女神への不平不満が募っていく。

次にあったら絶対許さない。


 これはもう、あれだ。

女神より上の方に出てきてもらって、謝罪ともっとすごい祝福を授かるくらいしないと割に合わない。


「ちょっと聞いてる?」


 突然胸倉をつかまれ、頭を揺さぶられる。

一瞬意識が思考の渦から現実へ戻された。


 そういえば。


「俺って、いつからこんな姿をしている?」


 自然と最初にそんな疑問が口からこぼれた。


「は?最初からでしょ」


 覚醒しそうであった意識が、鈍器で思いっきり殴られたような衝撃を受けた。


 こんなきもいおっさんの顔で、イケメンスマイルをしていたのか。

最初にあった女性も、あのおばあさんも、この受付嬢にも。


 逆の立場であれば、こんなおっさんにあんな顔をされたら吐き気を催す自信がある。

これまで会った人たちにどんな顔をすればいいのか。

これから会う人たちとどう接すればいいのか。


 そんなことを考えながら、思考も視界もブラックアウトした。


 突然目の前に火花が散った。

その後訪れた強烈な頬の痛みが、目の前の人物に平手打ちされたと教えてくれた。


「っ!」


 じんじん痛む頬を押さえようとしながら、胸倉を離そうとしな受付嬢を見つめる。


「ふん!」


 受付嬢は容赦なく、返す手で俺の反対の頬を打ち据えた。


「ちょっ、まっ」


 問答無用である。

受付嬢の手首は速度を増し、俺は完全にノーガードとなった。

いわゆるフルボッコである。


「ふーっ、少しすっきりしたわ」


 何度受付嬢の手が、頬を往復したかわからない。

頬の感覚が完全に無くなったころ、その暴力は終わった。


「あど、ごればあんばりでが?(あの、これはあんまりでは?」


 俺の意識を呼び起こそうとしたのはわかるが、明らかに過剰である。

どう考えても、ストレスをぶつけられたとしか思えない。


「あんたがいけないのよ。今朝も、さっきも。意味がわからないから、ほんっっっとに

むかついてたのよ。わかる?」


「ぞれにば理由があっで」


「理由ねぇ、それなら話してみなさいよ。内容によっては許してやらないことも無いわ」


 いや、許す許さないというのは、すでに俺へと権利が譲渡されていると思うが?とは、口が

裂けてもいえなかった。


 なんかもう、美人の受付嬢が心底怖かったのだ。


 とりあえず、胸倉をつかんでいる手が微妙に首を圧迫していので話をし辛い。

軽く手で叩いて、離してくれとアピールする。

やっと気がついたのか、受付嬢は胸倉をつかんでいた手を離した。


 俺は一つ「ふぅ~」っと息を吐くと、これまでのことを説明し始めた。






「へ~、あなたが異世界からの転生者で、異世界では勇者とか英雄とか言われていたと。で、今の姿は女神が何かしら間違えたのであって、本当の姿はめっちゃイケメンだと」


 完全に信じていない。

受付嬢からの白い目は、間違いなく信じていないと伝えている。


「信じられないのは無理もない。けど、本当なんだって。どうにか女神と連絡さえ取れれば、

この体も、力も、元に戻るはずだ」


 受付嬢がやばいやつを見る目で見つめてくる。


まぁ、どう考えても信じることなんて無理だろう。

逆の立場でも信じるはずが無いし、それこそ嘲笑するか、腹を抱えて笑うだろう。


「到底信じられない話だけど、この際本当かどうかなんて一旦置いておいて、これからどうするかを考えるべきだと思うわ」


 受付嬢の言葉はもっともである。

俺は一度小さく頷くと、次の言葉を待った。


「実際問題、あんたは文無しで、宿無し、学も無しなんだから、とにかく生活し、食べていくことが一番でしょ?それに、ギルドから一度依頼を受けたんだから、それはきっちりこなさないとペナルティーがあるわよ。だからまずは、今受けている下水道の依頼を達成して、報酬を受け取るしかないでしょ?」


 まったくもってその通りである。

くよくよ悩む前に、今できることをする。

とにかく今は生きるためにお金が必要である。


 受付嬢は、今に絶望し、今後に絶望し、足を止めてしまった俺に道を指し示してくれた。

とにかく、できることをがんばってみよう。

俺は受付嬢の言葉に、少しだけ前向きになることができた。


「そうだな、うん、そうだ。まずは働いてお金を稼いで、生活基盤を確保しよう。どうするかなんて

悩むのはそれからだな。それに、ギルドに銀貨5枚の借金もあるし」


 自然と心が軽くなった。

最後は微笑むくらいの心のゆとりができていた。


 なんてことはない。

今よりも絶望的な修羅場など、これまで何度も乗り越えてきた。

あきらめることも、達成できなかったことも、希望を失うこともなかったから今の俺がある。


 俺は英雄であり、勇者である。

この程度のことで心が折れることなどあってはならないのだ。


「あんたの借金が銀貨5枚だけだと思ったら大間違いよ。私のこの鏡を割ったんだから、それも弁償しなさいよね。高かったんだから、金貨3枚もしたのよ!」


 そういいながら、受付嬢は割れた手鏡を見せ付ける。

 

 軽くなったと思った心が、どんどん重くなってくる。


 「やっぱもうだめかも」と心の中で呟いた。


「ほら、さっさと依頼に戻りなさい。考えるよりも動け、働け」


 受付嬢がドアを指差す。

その方向を見定め、俺は立ち上がりドアへ向かった。


「ところで、あなたのお名前は?」


 個室から出る直前、振り返って尋ねた。


「レーアよ」


 受付嬢の名前を確認すると、今度こそ個室から出た。

目指すはベンさんと最初に会った建物だ。

そこに、清掃に必要な道具がある。

魔法が使えないのなら、正攻法で依頼を達成するまでだ。


 俺はこのアクシデントさえも笑って乗り越えてやると不敵に笑った。


 この時の俺は、完全に下水道の清掃を甘く見ていたと後で気がついた。

ここで受付嬢とのやり取りはひと段落?です。

まぁ、これからも出ては来ますので、美人の受付嬢ファンはブックマークをお願いします。


次回からは清掃の話になります。


戦闘が好きな方はもう少し辛抱してください。装備整えたら討伐依頼とか受けますので。


よろしくお願いします。

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