第54話:グリフォンより弱ぇー・・・ part2
更新遅くなりました。
グリフォンを目指し獣道を進む。
道中、岩狼や黒豹などと遭遇したため討伐した。
出現率から見ても、ここが既に魔物の領域であることがわかる。
近づくにつれ、グリフォンのプレッシャーが増大する。
それは姿を目視で確認できたとき最大となった。
山の頂に一際立派な大木があり、グリフォンはその頂点に鎮座している。
幻想的な羽と恐ろしい爪、獰猛なクチバシ。
自分自身が魔物の中の雄であることを、その存在感が示している。
俺には決意と意志がある。
だが、これほどまでプレッシャーを放つ存在を前に、自信の無力さを痛感した。
こいつにとっては、俺など羽虫程度の存在だろう。
勝てるだろうか・・・・、ティファニアが。
ティファニアを見ると、ニッコリと満面の笑みで返された。
こいつ余裕だなぁ。
それならば、大丈夫かもしれない。
更に近づくと、グリフォンの眼球が俺達を捉えた。
「囲まれていますね」
ティファニアが小声で呟く。
俺は横目で周囲を確認する。
どうやら、魔物に囲まれているようだ。
「グゥアァァァゥゥ? (愚かな人間よ。何ゆえここに来た?)」
グリフォンの叫びと同時に、脳内に直接言語が伝わってくる。
なるほど、さすが聖獣だ。
意思疎通ができることに驚いた。
意思疎通ができるのであれば、俺達がここへ来た理由を伝えるか。
「近隣の村があなたたちに襲われました。だから私たちが、・・・・いえ、聖剣の担い手があなたを討ちに来たんですー!」
リンカが宣戦布告する。
うん、まぁ言っていることは合っているといえば合っている。
けど、聖剣の担い手は余計だ。
どう考えても、俺ではこいつとまともに戦えない。
リンカは宣戦布告した後、俺に目配せする。
その目は、言ってやりましたので、さくっと聖剣で倒しちゃってくださいと物語っている。
いや、そんなことされても無理だから。
もう、魔力回復薬もないし・・・・。
「クェー・・・・、クゥェェアァァァアァァ(聖剣か・・・・、おもしろい! ならばやってみるがいい)」
グリフォンが叫ぶと同時に、周囲の魔物が襲い掛かってきた。
四方八方、全方向からの襲撃に、俺ならまだしもレーアは対応できないだろう。
「ティファニア!!」
「了解です」
大声で叫ぶと、ティファニアが返事をする。
「我が魔力を糧とし、万物の時を止めよ。フローズンワールド」
ティファニアが右手をかざすと、そこを中心に冷気が発生する。
そして、すべての時が止まった。
幸い、俺達はティファニアの障壁により凍ることはない。
対照的に、今まさに襲いかかろうとしていた魔物は凍り付いている。
「グリフォンは?」
冷気が去った後、グリフォンのいた木を見上げる。
いない、どこだ?
更に見上げると、上空から見下ろす勇壮な姿を見つけた。
「上だ!」
俺の叫びと同時に、グリフォンが翼をはためかせた。
たったそれだけで突風が巻き起こる。
俺は剣を地面に突き立て、レーアを庇うように地面に伏せた。
ティファニアとリンカは各々で魔法障壁を展開する。
突風は凍った魔物も、木も根こそぎ空へと巻き上げる。
どうにか踏ん張り、前を向く。
リンカが魔法障壁を張りながら、杖を軽く振るのが見えた。
「プロセシング」
詠唱すると空を舞う木々の根元が削れ、杭のような形になる。
そして風に逆行し、グリフォンへ襲い掛かる。
グリフォンは回避行動に移るが、木々が追跡する。
その隙をティファニアが逃すはずも無く、突風の制御を奪い取った。
そのまま突風をグリフォンへ向けると、グリフォンは木々と突風に挟まれた。
グリフォンが急上昇し、どうにか難を逃れる。
今度はグリフォンが急下降し、鉤爪をティファニアへ向けた。
ティファニアはギリギリでかわすと、すれ違い様に剣で胴体を斬りつけた。
しかし、グリフォンは魔力による物理障壁によってそれを阻む。
目の前で攻防がめまぐるしく変わる、超常の戦いが繰り広げられている。
俺はそれを茫然と見ていた。
入り込む余地など皆無である。
「それで、あんたは何してるのよ?」
レーアがグリフォンから視線をはずすことなく尋ねる。
「することが・・・・ない」
レーアが俺の方を向く。
冷たい視線を感じる。
「あんた、聖剣が使えるんでしょ? だったら今、ここで使わなくていつ使うの?」
いつ使うのだろうか?
使う日は果たしてくるのだろうか?
そんなことを考えながら戦況を見守る。
どうやら、一進一退のようだ。
リンカは純粋な魔法使いのため後衛を務めている。
必然的に、ティファニアが前衛を担っている。
即席にしてはうまく連携を取っている。
だが、決め手に欠けている。
二人の火力ではグリフォンの障壁を突破できないのだ。
グリフォンの攻撃も、二人は障壁で防いでいる。
一見すると互角に思えるが、魔力の総数が違う。
いずれ魔力切れを起こすのはティファニアとリンカだろう。
さらに、疲労だけは隠しようがない。
「あんた、何か方法はないの? このままだと負けるわ!」
「ないこともないが・・・・」
「だったらしなさいよ!」
レーアが俺を叱咤する。
グリフォンの障壁が魔力によるものだと俺にはわかる。
そうであるなら、この剣が有効だ。
だが、今の俺の膂力ではグリフォンの障壁を突破しても、肉体にどれだけダメージを与えられるかわからない。
可能性があるとしたら、超加速による突撃くらいだろう。
「ティファニアを一旦下げさせる。何か、グリフォンの注意を逸らす方法は無いか?」
「だったら、これね」
そう言ってレーアが拳ほどの袋を取り出した。
「これは?」
「幻覚作用のあるキノコを干して粉状にすり潰したものよ。吸い込めば、さすがの聖獣でもしばらくは混乱すると思うわ」
こいつ、何て物をもっていやがるんだ。
俺は慎重に袋を受け取ると、地面に魔法陣を描いた。
さらに、魔法のポーチから肉体強化の指輪10個とピアス2つを取り出して身につけた。
準備が整いグリフォンを見ると、おあつらえ向きの高さまで高度を下げている。
これなら俺の力で命中させられる。
肉体強化の魔法でさらに膂力を底上げすると、レーアから受け取った袋をグリフォン目掛けて投げつけた。
よし、これならグリフォンの顔に命中する。
そう思った時、一陣の風が袋をさらった。
「――――なっ!」
原因はリンカである。
なぜ飛んでいた袋を、魔法まで使ってキャッチしたのか意味がわからない。
「おま・・・・ちょっ・・・・待てよ!」
しかも袋を開けようとしている。
こいつ、なんで警戒心も無いんだ。
俺の必死の叫びに、リンカが気付いて首を傾げる。
俺が首を傾げたいわ!
「それは幻覚を見せる粉だ。グリフォンにぶつけろ!」
そう指示すると、リンカが頷いた。
どうやら伝わったようだ。
そう思い横を見ると、レーアの様子がおかしい。
「また、お前か! ぅるぁあぁぁ!!」
虚空へ拳を振りぬいている・・・・。
まさか!
俺は急いで口元を袖で隠し、その場を後にした。
「おい、粉が漏れてるぞ!」
リンカのいる位置は風上で、こちらが風下である。
リンカは粉を吸っていないが、レーアが吸い込んでしまったようだ。
「わかりましたー!」
リンカはそう言うと杖を振り、魔法の風で袋を覆った。
そのままグリフォン目掛けて袋を操る。
グリフォンが気付いたときには、袋が目の前でぶちまけられたところであった。
「グゥオォオォォ!」
グリフォンが奇声を上げる。
どうやらうまくいったようだ。
「ティファニアこっちへ来い!」
「了解です」
前衛をしていたティファニアが急いで俺の方へ駆けてくる。
続いて、リンカも俺の方へ駆ける。
いや、お前は呼んでないけど・・・・。
ティファニアは魔法陣と俺が握る剣を見て全てを察した。
何度も頷き、尊敬のこもった瞳で見つめてくる。
リンカは相変わらず首をかしげている。
レーアは・・・・、見るのを止めた。
どうやら誰かにブチ切れているようだ。
右手が音速で虚空を殴っている。
「リンカはレーアの対応を頼む」
「は、はい」
リンカもレーアの恐ろしさにたじろいでいる。
普段優しい分、恐ろしさも一入である。
「よし、じゃぁいくぞ!」
俺の号令で、ティファニアが魔法陣に魔力を注ぎ込む。
次の瞬間、俺はグリフォンの上空へ転移した。
俺の考えた策は、意識外から俺がグリフォンを強襲することである。
サムウェルからもらった剣は魔法を斬り裂く。
だからこそ、グリフォンの障壁も容易く斬り裂けるはずだ。
そのために上空へ転移したのだが・・・・。
高い。
俺の想定より遥かに高い。
雲の上からの落下である。
しかし、これはいくら何でも高すぎるだろ。
グリフォンが位置を変えたら、俺の力では落下コースを変えることは難しい。
更に加えて、これが一番問題なのだが、剣は障壁を破るが俺の体は障壁に激突して潰れるのではないだろうか?
空に真っ赤な花が咲くような気がする。
「だぶげでー!!」
うん、無理だ。
声を張り上げても、口の中に大気が入り込んでくる。
言葉にならない。
それに、ティファニアへは届かない。
剣を前方に構える。
幸い、グリフォンはまだ正気にもどっていないようだ。
これなら、強襲は成功する。
俺は頭をフル回転させ、どうにか自分が助かる方法を探している。
肉体強化は、アイテムと魔法で今できる限界まで底上げしている。
それでも、さすがにこの高さからの衝撃には耐えられない。
身体能力でも無理、魔法でも無理ならば、後は己の技量に頼るしかない。
俺は剣の構えを突きの状態から、右肩に担ぐようなものへ変化させた。
ぶつかる瞬間、斬撃を放って衝撃を軽減する。
更に体を回転させることで受身を取るしかない。
それを達成するには刹那の時を見極めなければならない。
俺には、それができるだけの技量と経験がある。
グリフォンの背中が近づいてくる。
ここからは、瞬き一つ許されない。
必死に目を開けタイミングを計る。
3、2、1。
「ここだ!」
力強く剣を振りぬくと、剣先が障壁を貫通し皮膚を斬り裂く。
そのままの勢いで宙を前転し、障壁の上を転がる。
どうにか、死は免れたようだ・・・・。
――――しまった!
生きることに必死で、グリフォンに致命傷を与えることができなかった。
今から斬りつけても、俺の力では薄皮一枚斬るだけしかできない。
俺が悔やんでいると、空から五つの原初の炎が飛来する。
それは俺が先程斬り裂いた障壁の隙間へ殺到する。
「グォオォォォァァ!!!」
原初の炎が直撃したグリフォンが悲鳴を上げ燃え始める。
俺は慌てて背中から飛び降りた。
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