第4話:受付嬢より弱ぇー・・・ part2
美人の受付嬢再びです。まだまだこれからも出ます。何度だって出ます。
レーアはいつもの喧騒の中にいた。
お昼時である今は、もっとも冒険者ギルドが混む時間帯でもある。
口説いてくる冒険者を軽くあしらい、冒険者に依頼を発注する人には報酬と難易度設定の説明を行い、依頼達成した冒険者にはねぎらいの言葉をかけた。
そろそろ昼時という一日の中間だというのに、いつも以上に疲れていた。
レーアはすでに、ギルドマスターであるサムウェルに午後から半休を取る旨を伝えている。
もっとも、その理由が朝の男のせいだとは言っていないのだが。
受付をしていたレーアの前の列が、ちょうど途切れた。
キリが良いので仕事を切り上げようと、伸びをして席を立とうとする。
その瞬間、勢いよくギルドの扉が開かれ、そこには一人の男が立っていた。
レーアはその姿を見定めると、せっかく治りかけていた頭痛がぶり返すのを感じた。
ドーン!
レーアはこぶしをカウンターに叩きつけていた。
「だから、もう来んじゃねぇっていっただろ」
誰にも聞こえないようにボソッと呟く。
レーアがカウンターを殴った音に、周りにいた冒険者がビクッと反応する。
そして、いったい何が起きたのかレーアを不思議そうに見つめた。
レーアは血走った目で男をにらみつける。
幸いレーアの前には誰もいなかったため、レーアのものすごい形相に気づいたものはいなかった。
男はそんなレーアの様子など意に返すことなく、真っ直ぐにレーアの元へ向かっていく。
レーアは半休を理由に逃げ出したかった。
しかし、男の瞳はレーアを捕らえて逃さない。
レーアは男の様子が、朝とはまったく違うことに気づいた。
朝は気持ちの悪い笑顔を浮かべ、無駄に堂々としていた。
しかし、今は何かに急きたてられているのか、表情は真剣そのものである。
「何か御用でしょうか?」
レーアの前にたどり着いた男へ、抑揚の無い口調で尋ねた。
もし感情を込めていたら、罵詈雑言が口から飛び出しただろう。
「鏡を、鏡をもっていないか?」
男は余裕のない表情でそう言った。
必死そのものである。
レーアは断りたかったが、うむを言わせない、見えない圧力が襲ってきた。
仕方が無いかと、あきらめて机から装飾に凝った手鏡を取り出す。
結局のところ、レーアはお人好しなのである。
「私の手鏡ならあるわ。丁寧にあつかいなさいよ」
レーアは男の手に手鏡を渡す。
この世界では、鏡は非常に高価なものである。
小さな鏡を買うのにも、金貨が必要とされている。
しかし、世の女性の大半が手鏡を持っている。
それは女性にとって大切な、化粧をするときに必須だからである。
一般的に、女性が始めての給料で買うものは鏡だとされている。
また、お金を溜めて買うものも高価な鏡である。
レーアも例に漏れることなく、お金を溜めてお気に入りの手鏡を購入していた。
今それは、頭のおかしい男の手にわたっている。
男はレーアから手鏡を受け取ると、恐る恐る鏡を見つめる。
次の瞬間。
「アーーーーッ!!!!」
男はムンクの叫びよろしく、両手を頬に添えて奇声を発した。
そして魂が抜けたように体から力が抜け、床に崩れ落ちた。
同時に、レーアの鏡が床に落ちて割れる音が響く。
男は奇声を上げたとき、手鏡を上へ放り投げていたのだ。
「ちょっと、あんた!!」
レーアは魂の抜けた男を見た後、周りを見渡した。
ギルド内にいる冒険者や依頼人など、すべての人が何事かとこちらに集まってくる。
レーアは急いで手鏡の破片を回収すると、男の腕をつかむ。
「ほら、一旦こっちへ来なさい」
レーアは男をギルドの奥にある個室へと、引きずって連れて行った。
残ったのは、怪訝そうに見つめる他の冒険者たちだけであった。
「それで?何がどうしてこうなったわけ?」
ギルドには職員と冒険者が個別に打ち合わせをする部屋がある。
その個室には、レーアと男の二人だけしかいない。
そう聞くと甘美な響きではあるが、実際は違っている。
レーアは苛立ちや怒りといった負の感情を隠そうともしない。
レーアは先ほどの質問に男の反応が無かったため、男が座っている椅子を蹴り上げた。
そこでやっと男の意識がわずかに戻ってきた。
それでも視線は定まっておらず、口はパクパクと何かを言っている。
「あの女神が間違えやがったんだ。俺の完璧な姿がおっさんって、なんでだ。あの女神目を閉じて承認印を押してやがったし、絶対間違えやがったんだ。ざっけんなよ、くそが」
男は小声でぶつぶつと呟く。
その内容はレーアにはさっぱりわからない。
「ちょっと聞いてる?」
レーアが男の胸倉をつかむ。
するとどうにか男の視線がレーアを捕らえた。
「俺って、いつからこんな姿をしている?」
「は?最初からずっとでしょ」
質問の意味がわからない。
「ずっとということは、あのときも、このときも、俺はこのおっさんの顔であんなことを言っていたのか」
男の呟きは次第に声が小さくなり、仕舞いには白目を剥いて失神した。
レーアはつかんだままの男をあっけにとられ。見つめていた。
しかし、次第にフラストレーションが溜まっていくのを感じていた。
朝も、そして今も、まったく理解できない男に怒りがこみ上げてくる。
「ふっざけやがって。今日はてめぇのせいで厄日だわ、このクズが」
レーアは手を思いっきり振り上げ、そのまま男の頬に全力で振り下ろした。
次回も美人の受付嬢とのやり取りが続きます。
受付嬢がタイプって方は、ブックマークして、どこがタイプなのかを感想にて教えてください。
ちなみに受付嬢は美人で出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでるバランスの取れたスタイルをしています。