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第44話:超巨大ミミズより弱ぇー・・・

いよいよ、佳境に入りました。




 冒険者ギルドへ転移すると、訓練所の控え室は話に聞くほど汚れてはいなかった。

確かに血の跡は残っているが、魔物の死体などは見当たらない。

レーアの言い分が大げさだったのだろうか?


「今日一日かけて掃除させたのよ・・・・。ギルドマスター絶対怒ってるわ」


 レーアは俺の視線に気付き、そう言った。

どうやら急ピッチで掃除させたようだ。


 疲れた俺達がギルドのホールへたどり着くと、迎えたのはサムウェルの怒り狂った視線であった。

俺達をものすごい形相で睨んでいる。

どうやらレーアの言ったことは誇張ではなかったようだ。


「レーア」


 サムウェルがレーアの名前を呼び、手で招き寄せる。

レーアは覚悟を決めたような顔をしてサムウェルのほうへ行く。

レーアが二言、三言伝えると、次第にサムウェルの表情が穏やかになり、ついには満面の笑みを浮かべた。

おそらく、緋狐の毛皮の件だろう。


「皆、ご苦労だった。疲れただろう? 今日はホールで好きなだけ食べて飲んで、明日に備えてくれ」


 お! サムウェルのおごりか!

太っ腹だな。


「食べて飲んでかかった費用は、魔物の肉を売却した利益から引いておく」


 俺達自身の稼ぎから計上されるようだ。


「あのー、セリアさん」


 チョイチョイっと服の袖を誰かが引っ張る。

見ると、キャロルが目の前にいた。


「どうした?」


「えっとですねー、ギルドマスターの機嫌がよくなったのって、魔物の毛皮をあげるからですよねー?」


「たぶん、そうなんじゃないか?」


「いいなー! セリアさん、私も真っ白な毛皮が欲しいですー!」


 上目遣いにキャロルがねだってくる。


「それなら、一つキャロルにもあげよう」


「ホントですかー? 約束ですよー!」


 俺が頷いて見せると、キャロルは嬉しそうに両手で小さくガッツポーズを作った。

あぁ、かわいいな。

キャロルはやっぱり俺の癒しである。


 キャロルはそのままスキップしてカウンターへ戻っていった。

その後姿から、本当にうれしそうだと思い、俺もうれしくなった。


「ねぇ、あんたまさかキャロルにも毛皮をあげるとか言ったんじゃないでしょうね?」


 レーアがジト目で俺を見る。


「言ったけど、何か問題でも?」


「はぁ~、あんたキャロルに毛皮をあげたんなら、他の職員にもただで毛皮をあげるの?」


 それは無理だろう。

それほど毛皮がたくさんあるわけではない。

それに、いくらなんでも全部ただというわけにはいかない。


 俺が首を横に振ると、レーアが呆れたように言う。


「キャロルには私から言っておくわ。毛皮をもらった私がいうのもおかしいけど、もう他の人にただであげるなんてことはしないように。わかった?」


「お、おう。了解しました」


 俺の返事を聞いた後、レーアはキャロルのほうへ歩いていく。


「ところで、魔物の肉の売価だが、まだすべての集計が終わっていない。でもな、金貨200枚は超えそうだ」


 金貨200枚! すごい金額だ。

俺はサムウェルの言葉に驚いた。


「ちなみに、白熊の毛皮は1つ金貨50枚、緋狐の毛皮は1つ金貨30枚くらいになりそうだ。オークションとかならもっと行くかもな」


 毛皮ってそんなに高いのか・・・・。

こりゃぁ、ホイホイ人にあげるものではなかった。


 俺は皆にキャロルにも毛皮をあげる約束をしてしまったことを伝えに、飲食スペースへ向かった。

結果として、全員好意的に了承してくれた。

俺はそんな気のいい仲間と食事をし、明日に備えて帰宅した。




 翌朝、万全の準備を整えた俺達は冒険者ギルドの訓練所の控え室に集まった。

これから転移し、いよいよ30階層の攻略へ向かう。


 皆を見渡すと、ある程度疲れは残っているものの体力、気力共に十分な休息ができたようだ。

よし、これなら問題なく攻略できそうである。


「ティファニア、魔力のほうはどうだ?」


「はい、ほぼ100%まで回復しています。ご心配おかけしました」


「それならよかった。それじゃあ、転移するか。『黒牛』が待っている」


 ティファニアは頷くと、魔法陣に魔力を注いだ。

俺達の体を淡い光が包み込み、30階層へ転移した。


「お! 戻ってきたか」


 『黒牛』の三人が出迎える。

顔色を見る限り、元気そうだ。


「見張り助かった。三人とも、体調は大丈夫か?」


「あぁ、全く問題ない。魔物も出なかったし、十分休ませてもらった。30階層へ行こうぜ!」


「よし、30階層へ向かう」


 俺の号令で、30階層へと続く階段へ向かった。


 階段を降りている間、今日の探索の配置を考えていた。

『黒牛』の三人は、しっかり休み体調は万全だと言った。

しかし、いつ魔物に襲われるかもわからない迷宮では、常に緊張状態であったはずだ。

街で休んだ俺達とは、疲労の蓄積具合が全く違う。

だから、彼らには申し訳ないができる限り負担の少ない場所に配置したい。


 そんなことを考えていると、30階層へ到着した。

30階層は砂漠地帯であった。

砂漠地帯はもう3回目であるから、特に驚きはない。

逆に、見晴らしの良い分、ある意味運がよかったのかもしれない。

30階層は区切りの階層であるため、この階層にいる魔物をすべて駆逐しなければならない。

見晴らしが良いということは、打ち漏らしを探すのが楽だということだ。


「皆、警戒しろよ。特に砂の下には注意だ」


 砂漠地帯ならば、魔物が砂の下にいるということが往々にしてある。


 緊張感を保ち、砂漠を進む。

やはり、しっかりと休息がとれたことは大きい。

俺も含め、集中力が違う。

これならば索敵は完璧だと思った矢先、それは現われた。


 目の前の砂が突然盛り上がり、小高い丘を形成する。

驚きと共に警戒を強める俺達の前に、砂から紫色の何かが現われた。

それは俺達の周りをぐるりと一周囲んでいる。

間違いなく魔物である。

それも、超弩級の大きさだ。


 魔物の体はぶよぶよとし、見ただけで気持ちが悪い。

体の半径だけで俺の身長くらいあり、長さは不明である。

おそらく、周りを囲んでいるだけでなくもっと長いだろう。


「この色と形は、間違いねぇ、超巨大ミミズじゃねぇか?」


 ダンカンが叫び声をあげる。

言われて見れば、確かに目の前の魔物はミミズのような気がする

では、頭はどこだろうか?

ここからでは見つけることができない。


「どうしますか?」


 そろそろ二周目の包囲が終わりそうである。


「ティファ、魔法でやれるか?」


 質問してきたティファニアへ指示を出す。


 ティファニアが魔法の詠唱を開始したと同時に、超巨大ミミズが動き出した。

ものすごい勢いで包囲を狭めてきたのだ。

それも全方向からである。


 まずい。

非常にまずい。

ティファニアの魔法は、詠唱を聞く限り原初の炎である。

だが、それで全方向網羅することは不可能である。

もしそれをしたら、俺達自身が丸焼けになるからだ。

では、前方のみを攻撃したらどうなるか。

わかりきっている。

他の方位から来る超巨大ミミズの胴体に押し潰されるだろう。


 逃げることはもうできない。

砂漠なので魔法陣も描けない。

ならば、答えは一つだけである。


「受け止める。皆、覚悟を決めろ。魔法使いを中心に、四方を囲め。障壁の魔法が使えるやつは使ってくれ。気合をいれろ!」


 ティファニアが魔法を放ち、前方の魔物の胴体を穿った。

しかし、後ろ、左右から迫り来る胴体は速度を落とすことなく接近してくる。


 皆で力を合わせ、押しつぶされないよう迫り来る壁を受け止める。

幸い、前方からの圧力は無い。


 魔法の障壁と、全身の力でどうにか壁を押しとどめた。


「シーラ、今だやれ!」


「承知」


 シーラが二振りの剣を抜き放ち、超巨大ミミズの体を斬り裂いた。

胴体から離れた個体がウネウネと動く様は本当に気色悪い。

というか、でか過ぎて動かれると地響きと砂埃が舞い環境が悪化する。


 今度は二周目の胴体が一周目を押し、圧を強め始めた。


「ティファ、こいつの頭の位置はわからないのか?」


「すみません、探してはいるのですが、地中深くにいるようで・・・・」


「くそっ」


 ティファニアのせいではないのに、思わず悪態をついた。

このままでは潰される。

ティファニアの魔法を連発させるか?

それともシーラに突貫させるか?

思い浮かぶのはこのチームの2大エース頼みの策しか出てこない。


 その時、頭上から何かが降ってきた。

それは、地面に大きなクレーターを作る。

いったい何が起きたのかわからない。


 輪郭は人と同様のように見える。

しかし、どこか人族とは違う。

全身に生えた黄金の毛は深く、目は動物のそれであった。

体は大柄で2mは優に超えている。

そして背中の後ろから尻尾が見えることから、目の前の男が魔物であるとわかる。


「やっと人族がきやがったか。待ちくたびれたぜ」


 男は()()の言葉でそう言った。

魔物ではないのか?


 男の出現に驚いていたのは、俺達だけではない。

超巨大ミミズもまた、男が放った衝撃にあてられ活動を止めていた。

しかし今、ショックから立ち直り動き始める。


「あぁ? どいつでもいいから、何か言えよ。――――そうか、これが邪魔か」


 男は超巨大ミミズを掴むと、抱きかかえるように腕を回した。

そして、そのまま力を入れ始める。

次の瞬間、ミミズの全身が破裂した。

それも、地面が揺れたことから、砂の下にある部分までのすべてが破裂したのだ。


 肉片が雨となって振りそそぐ。

男は時折り嬉しそうにそれを食べた。


「さて、邪魔者は消えた。俺の質問に答えろや。てめぇらは人族の中でもトップの強さってことでいいんだよな?」


 人族? ということはやはりこいつは違うということか。

だとすると、魔物か?


「お前こそ何者だ?」


 俺は相手の質問に答えることなく、質問で返した。


「俺か? 俺はな、魔王軍第3師団隊長、獅子獣人(ライオネット)のゲキだ」


「魔王軍だと?」


 ゲキは俺達の反応を見て、ニヤニヤ笑みを浮かべている。


「魔王軍は人族の言葉をしゃべることができるのか?」


「お前、俺達がいったいどれだけの街や村を滅ぼし、占拠してきたと思っているんだ?」


 それが答えである。


「つかよう、迷宮が開いてから一気にここまで来たんだが、これ以上先へ進めなくなっちまった。てめぇらが上の階層のやつらを倒したんだろ?」


「だとしたら?」


「いや、ただ絶望の時間が少し延びただけだ。この下の階層には蟻んこがいてな、ものすごい速度で増殖すんだぜ。そうすりゃ俺も、俺の師団も迷宮から出れる。手始めに近い街を滅ぼしてやるから楽しみにしろや。まぁ、お前らはその光景を見ることはできねぇんだけどな」


「そうだろうな。我らは実現するはずの無い光景を見ることはできない。貴様はここで死ぬ。当然、下の階層の魔物もすべて葬り去る」


 シーラが剣を抜く。

すでに臨戦態勢で、殺気を放っている。


「言うねぇ。その自信に満ちた顔が絶望にゆがむ様を見るとしようか」


 ゲキが右腕に力を集約し始める。

これより、本当の30階層の戦いが始まったのである。


次回、ライオネットのゲキとの戦いです。


彼の実力はいかに。



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