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第35話:スライム達より弱ぇー・・・

次回は明後日更新予定です。


読者の皆様、いつも本小説を読んでいただきありがとうございます。



 青い煙のもとへたどり着くと、じいさん達とティファニアがいた。

どうやら彼らが12階層へと続く階段を見つけたようだ。


「おぉ、来たか。早かったのぉ」


 じいさん達はすでにスケルトンを蹴散らした後で、魔物の影はどこにもない。

まぁ、ティファニアがいるのだから過剰戦力であることは否めないな。


 しばらく待つと、『月下の大鷹』とアナライザーが現われた。

彼女達も相手がスケルトンでは、特に苦戦した様子もない。


「私たちのほうが早く階段を見つけたようですね」


 ティファニアがシーラへ言った。

シーラの額に青筋が立ち、こめかみがピクついている。

だから、(あお)るな! 俺の胃が痛くなるわ。


 ティファニアはフッと笑い、下への階段に消えていく。

その姿を射るような視線でシーラが睨みつけている。

確かに表立った争いはしていない。

していないのだが、これでは俺の精神衛生上よろしくない。


 ため息を吐き、12階層への階段を降り始めるとレーアに注意された。


「リーダーがため息を吐くな」


 どうやら今の俺には、ため息さえ許されないようだ。

本当に、このチームのメンバー選考は間違っている。

悪態をつきたくなるのを必死にこらえ、顔を引き締めて階段を降り続けるのだった。


 12階層は湿地帯であった。

歩くだけで靴に水が染み込む。

さらに、草木も生えているから見晴らしも悪い。

面倒な階層である。


 俺は11階層と同じようなフォーメーションを指示し、ジンとミミリアには先行するように命じた。


 湿地帯であるから、蜥蜴人(リザードマン)でも出るのかと予想した。

転生前の世界では、このような地域で度々蜥蜴人と戦闘になったものだ。

この世界にいるのかは分からないが、湿地帯での蜥蜴人は厄介であるから注意しなければならない。


 警戒しながら進むと、左右の草木が揺れたような気がした。

止まるよう合図を送り、辺りをうかがうが変わった様子はない。

前方を行くジンとミミリアからも、反応がないため風でも吹いたのだろうと思った。


「いるな」


「えぇ、いますね」


 うちの2大エースが確信に満ちた声を発した。

何が? と尋ねようとした瞬間、前方から叫び声が上がった。


「ぎゃーー!」


「おぉーー!」


 叫んだのはジンとミミリアである。

そしてその瞬間、左右からも魔物が姿を現した。


 そいつは長い触角を2本持っている。

鋭い毒牙を持ち、ウネウネと動く。

そして最大の特徴が、無数にある足だ。

つまりこいつは。


「ムカデだーー!!」


「いやー!」


「気持ち悪い!!」


 姿を現した瞬間、女性達の叫び声がこだました。

そりゃぁ、男の俺でも気持ちが悪い。

まして、体長が人の倍もあれば叫びたくもなる。


「ティファニア、数は?」


「三体ですね・・・」


 さすがのティファニアも顔が青い。

見ると、シーラも同様である。

一瞬、こいつらも女性だったなと、不謹慎なことを考えてしまった。


「『黒牛』と俺で対処する。じいさん達は女性陣を守れ」


 俺の指示に、皆が素早く動く。

それでもティファニアとシーラは応戦しようとするが、顔は青いままであった。


 3体の大百足を、俺、ダンカン、ガルベスが受け止める。

サンタナも魔法の詠唱を開始した。

そこへ、3つの小瓶が空を飛び、大百足に命中した。

同時に、辺り一面に鼻をつく匂いが広がる。


 小瓶に入った液体を浴びた大百足は、苦しみ出し、泡を吹いて倒れた。

俺達が呆気にとられていると、最後尾から叱咤する声が聞こえた。


「ちょっと、せっかく私が動きを止めたんだから。さっさと止めを刺しなさいよ」


 叫んだのはレーアである。

いったい何をかけたんだ?

そう疑問に思ったが、まずは止めだと切り替え、大百足の頭に剣を突き刺した。

体をよじって暴れまわるその姿は、本当に気色悪いものだ。

そう思っていると、サンタナの魔法が発動し大百足を燃やした。


「ほら、何してるの? 早く先へ進むわよ」


 いつの間にかレーアが隣にいた。


「さっきは一体何を投げたんだ?」


「あぁ、あれはノノロの実から出たエキスを濃縮したやつよ。迷宮って森とかあるってきいたから、虫除けにいくつか持ってきたのよ」


 なるほど、それで大百足が泡を吹いたのか。

というか、迷宮の森は地上の森と違って魔物以外出ないから虫除けとか意味がない。

いや、今回役に立ったから、意味はあるのか。


「それを服につければ、魔物が寄ってこないんじゃなかろうか?」


 エリックの提案に、それは良い考えだと同意した。


「別に止めはしないけど、その服は二度と着られないと思うわ。それでもいいならお好きにどうぞ」


 そう言ってレーアは虫除けの入った小瓶を取り出し、ふたを開けた。

辺りに、なんとも言えない臭いが立ち込める。

これを俺の服につけるのはなしだな、買ったばかりで高級だし。


 俺は『黒牛』達を見た。

また俺達かよ! っというような顔をして、三人揃って首を横に振る。


「あの、私がその液体を揮散(きさん)させて、その大気を私達の周りに纏わせましょうか?」


 声をかけてきたのは確か、サリーだったかな。

気の弱そうな女の子で、典型的な魔法使いとしてとんがり帽子をかぶっている。


「できるのか?」


「は、はい。たぶん・・・」


 本当に大丈夫か疑問ではあったが、お願いすることにした。

さすがにここで断るほど空気が読めない人間ではない。


 サリーはレーアから小瓶を受け取ると、魔法の詠唱を開始した。


「清浄なる風よ、大気よ。我が求めに応じ、その力を示せ。ターガイン」


 詠唱が終わると、風が小瓶の中の液体を攫い蒸発させて霧状にした。

その風が俺達を包み込むと、鼻につく液体のバリアが完成した。


 特に喜んだのは女性陣である。

ティファニアも、シーラも顔色が良くなってきた。

これで戦闘を回避できるのだから、臭いなど我慢するか。


 その後、13階層への階段を見つけるまで魔物の襲撃は一度もなかった。

見事、12階層の攻略法を発見したのである。


 13階層へ続く階段で、昼食を取った。

午前中だけで2階層を踏破したのだから、結構なハイペースである。

疲れはしたが、ポーションを飲むほどではない。

ただ、レーアとアナライザーの疲労が心配であった。

それとなく二人の様子を確認すると、アナライザーは疲労困憊であったがレーアには随分余裕があった。

アナライザー、あんた冒険者として恥ずかしくないのかよ。


 休憩が終わるといよいよ13階層である。

当初想定していたのは、この13階層を踏破までが迷宮探索1日目である。

その想定は良い意味で甘かった。

このチームならば迷宮完全踏破も可能ではないかとさえ思えた。


 13階層は3階層と同様、山岳地帯であった。

ゴツゴツした岩に覆われたそこには、緑色が皆無である。

そのかわり、水色をした何かが大量に沸いていた。


「これって、スライムだよな?」


 俺が誰ともなしに質問すると、やっぱりあいつが答えた。


「そうだ。最弱の魔物として知られるスライムだ。だが、13階層にいるということは、何かがあるのだろう。スライムが巨鬼などよりも強いとはなかなか考えられないが」


 アナライザーの答えに、皆が一様に考え込む。

あるいは、この階層こそが俺達が危惧していた階層かもしれない。

最弱のスライムが大量発生しているので、それを除去しなければ迷宮の制限が外れる。

そうなれば、魔王軍が迷宮から出てくる可能性があるのだ。

スライムの増殖方法は広く知られている。

分裂だ。

俺達が除去するよりも早く分裂するのだろうか?

それなら非常に厄介である。


「考えてもわからねぇなら、試してみようぜ」


 そう言ってダンカンが剣をスライムに突き立てた。

まったくもって無駄である。

スライムは核を破壊しなければ倒せない。

剣で倒すならその核を斬らなければならないが、常時スライムの体内を移動する核を斬るのは至難の業である。


 ダンカンも分かっていたのか、突き立てた剣をすぐに抜いた。

シュッという音と共に、ダンカンの剣先が溶けてなくなった。


「は?」


 俺達は唖然とし、ダンカンのなくなった剣先を見ていた。

溶けるの早くないか?


「それなら魔法だ」


 そう言ってサンタナが火炎魔法を放つと、スライムがその魔法を喰らった。


「・・・・」


 これは、非常に厄介だ。


「ちょっとミミ、あなた服にスライムが当たっているわ」


 アイシャがミミリアに指摘する。


「うそ!」


 ミミリアは慌ててスライムから離れるが、服の裾が溶けてなくなっていた。

ミミリアはへそ出しスタイルという、この世界では斬新な服装へチェンジしていた。


「な、なぁ。この状況最高だな!」


 は? こいつ頭でも打ったのか?

小声でわけのわからないことを言うダンカンを見た。


「だって、考えても見てくれ。控えめに言っても、このチームの女性陣のレベルは高いぜ! というか最高だ! そんな彼女たちが服を溶かすスライムと戦う。これはご褒美だろ! だろ?」


 最低だなこいつ。


「『黒牛』が前衛、じいさん達がその支援、『月下の大鷹』とティファニア、レーアは後衛だ。遠距離からの攻撃のみで対処してくれ」


「は? お前なんて指示を出しやがる!」


「また俺達かよ!」


「俺も前衛かよ!」


 こいつらの文句は聞き流すことに決めた。

さて、問題はどうやって倒すかだが。


「ある程度スライム倒してからでなければ次の階層へは行かないからな」


 さすがにこの数を放置することは出来ない。

皆の了承を得て、俺達はスライム除去に乗り出した。


 しかし、やはり苦戦である。

肉弾戦のダンカン、ガルベスはもちろん、前衛に指名されたサンタナもどうしていいのか分からないようだ。

仕方がない、俺が手本を見せてやるか。


 剣を抜き放つと、手ごろなスライムへ狙いを定めて斬りつけた。

剣は何事もなかったかのようにスライムを素通りした。

見たか? 剣技をマスターした俺の太刀筋ならスライムが溶かすよりも早く斬ることが出来る。


 俺はどや顔で『黒牛』達を見た。


「「「で?」」」


 剣は溶けていないが、スライムも倒していない。

だからどうしたと『黒牛』達は問うのだ。

こいつら全く分かってない。

剣が溶けないということは、俺の攻撃は無制限なんだぜ。


 俺はほとんど動かないスライムを一方的に斬りつけた。

しかし、何度やっても核を斬ることが出来ない。

次第に体力を失い、息が上がってくる。

まさか、俺の体力が先に底をつくとは・・・。

くそっ、と諦め半分に剣を横に薙ぐと、カツンという音と共に核を斬った手ごたえがあった。

そしてスライムが溶けるように消える。


 どうだ! と再度『黒牛』達を見るが、もはや興味が無いようで見向きもされなかった。

たった一匹倒しただけである。

まだまだスライムはたくさんいる。

それこそ無限にいるのでは? とさえ思えた。

お手上げである。

俺ではこれ以上スライムを倒せそうにない。


 しかたがない、最後の手段を使うしかないか。


「ティファニア、お前ならすべて倒せるか?」


「そうですね・・・。ただ、スライムが魔法を喰らうのが厄介です」


「臆したか?」


 ティファニアの返事に、シーラが反応する。

シーラは言いながら、近くにいたスライムを剣で斬った。

見事に一撃で核を斬り裂き、スライムが消滅する。


「なんですって?」


「聞こえなかったのか? 臆したか? と言ったのだ。貴殿の耳は飾りか?」


「ふっふっふっふっふ・・・・」


 シーラの挑発に、ティファニアが笑顔で応えた。

これは完全にキレていらっしゃる。

誰か頭に水でもかけてくれ!


「ちょっと、二人とも後ろ!」


 レーアがそう言った時にはもう遅かった。

二人の後ろにあった岩から、巨大なスライムが落ちてきたのだ。


 スライムは見事に二人へ降り注いだ。

すぐに反応した二人は、シーラが核を斬り、ティファニアも原初の炎を放つ。

巨大なスライムは一瞬で消滅した。


「あなたのせいで反応が遅れました」


「何を言う。貴殿の認識が遅かっただけだろう」


 それでも言い争いを続けようとする二人を、俺達は凝視していた。

なぜなら、先ほどのスライムは最後の力を振り絞って、彼女たちの服を溶かしてくれたからだ。

見てはいけないと思いつつ、美女二人の下着が見えるあられもない姿は、まさに眼福である。


 それにしても、ティファニアの体は想像通り慎ましいものであったが、シーラの方は想像以上であった。

立派なものをお持ちで、これならレーアに匹敵するかもしれない。

どうやら彼女は着痩せするタイプのようだ。

これは良い情報が手に入った。

そんなことを考えていると、誰かが一瞬で間合いを詰めてきていた。


「見んな!」


「ぎゃー!」


 レーアの蹴りが俺の顔面を捉えた。


「二人とも、自分たちの姿を見てみなさい!」


 レーアが鬼のような顔で二人へ言った。

二人は自分たちの姿を見ると慌ててしゃがみこむ。


「「きゃーー!」」


 レーアは男達の視線から彼女たちを守るように、二人の前に立った。

それに倣うように、シーラを除く『月下の大鷹』達も彼女たちの前に立つ。


 男達は慌てて視線を逸らした。

俺だけは、顔面を押さえて地面に蹲っていた。


 ミミリアが二人に予備のマントを渡した。

それを受け取ったティファニアとシーラはマントで身を隠した。


「セリア様、申し訳ありませんが怒りが収まりません。ですので、今からスライムを殲滅します」


「へ?」


 地面に這い蹲ったまま、ティファニアの言葉に反応した。

ティファニアは俺に構わず、魔法の詠唱を開始した。


「ちょっ、まさか・・・」


 ティファニアは原初の炎を地面にたたきつけた。

その瞬間、俺達のいる場所以外全ての地面が沸騰した。

地面はそのまま融解を開始する。


 スライムは空を飛べない。

その原理を逆手にとって、あらゆる地面、岩に触れているスライムを蒸発させる。

ティファニアが放ったのはそういう魔法であった。


 それにより、スライムは一瞬で一掃された。

しかし、これからどうやって先へ進めばいいのだろうか。

熱せられた地面を靴で踏んだら、靴が溶けて足が大惨事になりそうだ。

そう思っていると、ティファニアが一方向を指差した。


「見つけました。14階層への階段です」


 そう言うと、階段のある場所へ向けて氷の道を作った。

俺達はその道を慎重に進み、階段まで到達することができた。



 階段を降りながらティファニアの様子をうかがう。

さすがのティファニアも、あれだけの魔法を使ったのだから苦しそうである。

そもそも、一人で扱うレベルの魔法ではない。

改めてティファニアのすごさを思い知った。


 俺はそんなティファニアを心配し、今日の迷宮探索の終了を皆に言い渡した。

本当は平らな地面で眠りたかったが、今日は仕方がない。

俺達は持ち込んだ保存食を食べ、今後についての相談をした後、眠りについた。


 

次回も迷宮が続きます。


迷宮探索が何階層まで進むか、楽しみにしてください。


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