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第25話:ティファより弱ぇー・・・

読者の皆様へ、先に言っておきます。

皆様、「マジか!?」


私はさっき、200PVの目標を立てて、活動報告に記載したんですが、なんでもう達成してんですか?

驚きすぎて、リアルに「マジか!?」と叫んでしまいました。

いや、ありがたいんですよ。ありがとうございます。



 本来の出発予定時間はとうに過ぎている。

理由はまぁ、俺のせいなんだろうなと、だらしない笑みを浮かべるじいさん達を見て思った。


 エリックはティファニアへ、自分達の自己紹介、ついでに俺の紹介と迷宮の説明を行っていた。

1階層から5階層までの敵の情報、今回10階層まで踏破すると言う目的。

その説明に、ちょいちょい他のじいさん達も会話に混じろうと口を挟む。

彼女はあんたらの孫かよ。

種族は違うけども。


「ティファニアさん、迷宮に潜るのであれば、冒険者登録が必要です。冒険者登録はすでにお済みですか?」


 レーアが尋ねると、ティファニアは首を横に振る。


「でしたら、冒険者登録しなければなりませんので、あなたのお名前と、年齢を教えてください」


 レーアはカウンターの向こう側に腰を下ろした。


「ティファニア・ルーンアです。19歳です」


 なるほど、彼女は19歳か。

そういえば、かつての俺の体も19歳で時が止まっていたな。

長身で美しい彼女と、長身でイケメンの俺。

隣で歩けば、きっと絵になっただろう。

まったくもって残念である。


「それでは登録料として、銀貨5枚をいただきます」


「お金がいるんですか?」


 レーアの言葉に、ティファニアは驚いていた。

気持ちは分かる。

俺も最初は驚いたものだ。

これまで転生してきた世界では、冒険者になるために登録料を取る世界と取らない世界があった。

この世界は前者なのだから、あきらめてもらうしかない。


 どうやらティファニアは、人族のお金を持っていないようだ。

その仕草は、かつての俺を見ているようである。

俺はすっとティファニアに近づくと、鞄から銀貨5枚を取り出した。

もちろんそのお金は俺のほぼ全財産である。

それでもここは余裕があるように見せなければ、男が廃るというものだ。


「とりあえず、ここは俺が立て替えておく。まぁ、迷宮に潜ればすぐに返せるから気にするな」


 そういってレーアの前に銀貨を並べる。


「いえ、それはさすがに忍びないですので、遠慮いたします」


「えぇぇ?」


 俺が並べた銀貨を、ティファニアは手で俺の方へ押しやる。

それはもう、完全な拒絶であった。

いや、この状況ならありがとうと言われるのが定石だろ。


「セリア様はその、あまりお金をお持ちではないのでしょう?私のために申し訳ないです」


 なぜ知ってんだよ!

俺の懐事情を的確に察するティファニアに驚いた。


「い、いや、銀貨5枚くらいなら大丈夫だ」


 頬が引きつりながら、再度銀貨をカウンターへ並べる。


「いえ、大丈夫です。私には換金できるアイテムがたくさんありますから」


 そう言って銀貨を俺に押しやったあと、懐から一つの小瓶を取り出した。

それはポーションのようにも見えたが、色が血のように真っ赤であり、明らかに特殊な液体だと分かる。


「これは?」


 小瓶を受け取りながらレーアが尋ねる。


「魔力回復薬です。タチの実を煮詰めて出来た液体を特殊な技法で凝縮したものです」


「魔法回復薬!?」


 レーアがホール中に響き渡る声で奇声を発した。


「こ、こここ、これを誰が・・・・?」


「エルフ族の薬師です。これはお金に換金できますか?」


「ちょ、ちょっと待って」


 そう言ってレーアは小瓶に向けて手をかざした。

鑑定スキルか?


「確かに、魔法回復薬です。しかもこんなに高濃度だなんて、こんなのすぐに査定なんて出来るわけないわよ」


 業務モードから若干素が出つつ、レーアは慎重に小瓶をティファニアに返した。

ティファニアは受け取りつつ、どうしましょうと小首をかしげている。

だから、俺の銀貨を素直に受け取れよ。


「レーアさん、もうこの銀貨5枚で処理したほうがいい。このままだと他にどんなものが出てくるか分かったものではない」


 俺は再度、レーアに銀貨を5枚渡すと耳打ちした。


「それもそうね。それと、いつか言おうと思っていたけど、レーアさんとか気持ち悪いからやめて。あんたの方が一回り以上年上なんだから、レーアでいいわよ」


 レーアは銀貨5枚を受け取りながら、そう言った。

レーアさんって俺が言うと気持ち悪いのかよ・・・。

少しだけ、本当に少しだけショックであった。


 レーアはティファニアに、俺から銀貨を借りるように説得した。

男に見栄を張らせてやれだとか、なけなしの金を出したんだから受け取ってあげろだとか、ひどい言われようだが、的確なため否定もできない。


「セリア様、申し訳ありません。お借りいたします」


 うんうん、と俺は頷いた。

うん? 俺の呼び名はセリア様に決まったのか?

なんというか、おっさんを様付けで呼ぶ美女って周りから見て大丈夫なのだろうか。


 ティファニアはレーアから黒鉄級のタグを受け取り、晴れて冒険者見習いになった。

本来であれば、生活系依頼からさせたいところだが、彼女の魔法ならいきなりの戦闘でも問題ないだろう。


「ところで、ティファニアの戦闘スタイルって魔法使いか?」


「いえ、私は魔法も使えますが、剣士です」


 そう言って羽織っていたマントの下から細身の剣を見せた。

その時か今見えた、長い足のあらわになた部分は扇情的で、俺はすぐさま目を逸らした。

こいつのズボン、短すぎだろ。

太ももの中ほどまでの長さしかないズボンは、これから迷宮という未知の場所へ行くには不適切であるように思えた。

まぁ、目の保養にはなるからいいけどな。


「さて、予定より随分と遅くなってしまったが、そろそろ行くかのぉ」


 待ちくたびれたようにそう言って、エリックが皆を出発するように促す。


「それじゃぁ、レーアちゃん、行ってくるぞぃ」


「レーアちゃんまたのぉ」


「レーアちゃん元気でな」


「レーアちゃん、聖剣殿はわしらでしっかり面倒見るから心配せんでくれ」


 じいさん達は次々にレーアへ挨拶をしてギルドから出て行く。

俺もレーアに手を挙げ、じいさん達を追う。

その後にはティファニアが続いた。



 俺たちは一応周りを警戒しながら、迷宮への道を急いだ。

一応というのは、迷宮へつながる道を多数の冒険者が行き来しているのだから、この近辺に魔物など寄り付くはずもないからだ。


 じいさん達は積極的にティファニアに話しかけていた。

同行を渋っていたエリックでさえ、あの姿が嘘であるかのように、話に参加している。


 じいさん達の話によると、エルフは非常に珍しくじいさん達の長い人生でも出会ったのは1、2度との事だ。

ティファニアにしても、人族の領域に足を踏み入れたのは今回が初めてらしく、じいさん達との話を楽しんでいるように見えた。


「エルフというのはプライドの高い種族だと聞いておったが、ティファちゃんは話やすく、いい子じゃのぉ」


 ルーカスが歩調を合わせ、しゃべりかけてきた。


「そうだな。だが、うーん・・・」


「どうしたのじゃ?」


「いや、これまでエルフを見てきた経験からいくと、やっぱりティファニアの態度に違和感があるというか」


「ほう、聖剣殿はエルフに会ったことがあるんじゃのぉ」


 ルーカスが驚いてそう言った。


「まぁ、随分昔だけどな。それで、やっぱりエルフはルーカスじいさんが言ったようにプライドが高く、人族を見下しているところがあった」


「ティファちゃんは違うんじゃのぉ」


「そうだといいんだがな」


 経験則からどうしても不安になる。


「セリア様、どうされましたか?」


 ティファニアが俺達の方へ振り向いて聞いてくる。

まさか、聞こえたわけではないよな?


「なんでもない」


 俺にはそう答えることしか出来なかった。


 迷宮に着くと、入り口近辺には冒険者の大規模なキャンプが出来上がっていた。

観察すると、リェーヌでは見たことがない冒険者も多数いた。

おそらく他の街からやってきた助っ人だろう。

どうやら、冒険者ギルドの要請は成功したようである。


 俺達は早速迷宮へ潜ろうと入り口へ向かうが、非常に注目を集めていた。

あからさまに俺達を見る視線の数が多い。

もちろん理由は一つしかない。

ティファニアである。

彼女はエルフという珍しい種族で、更に言えば誰もが恋焦がれ、憧れるような容姿をしている。


 じいさん達は彼女を中心とし、囲んで移動した。

それはまるで、姫を守るナイトのようですらあった。

また、じいさん達はそんな状況を楽しんでいるようでもあった。


「おう、じいさん達、それに聖剣の主じゃないか。あんたら、えらいべっぴんさんを連れているなぁ」


 迷宮の入り口で、一人の冒険者に話しかけられた。


「まぁのぉ、老い先短いわしらへの神様からのご褒美じゃわい」


「よく言うぜ」


 エリックは冒険者へそう言うと、手を軽く振りながら迷宮へ入っていく。

俺達もそれに続いて迷宮へ侵入した。


 1階層への階段へ続く道を進んでいると、明らかに冒険者密度が増えたように思う。

この階層はいわば0階層で、魔物の出ないセーフティーエリアである。

そこを拠点とし、1階層へ潜る冒険者や、冒険者が狩った獲物を地上へ運ぶポーターも相当数いるようだ。


 幸いなことに、彼らの多くが黒鉄級という冒険者見習いであったから、俺達に絡んでくるような奴はいなかった。

しかし、物珍しそうに、またはうらやましそうに俺達を見る視線だけは地上のキャンプと変わらない。

当のティファニアはそんなこと全く気にしない様子で、初めての迷宮を興味津々といった様子で観察している。

ん? 初めてなのか?


「なぁ、ティファニアって迷宮は初めてなのか?」


 気になったので尋ねてみた。


「はい、書物や伝承では聞いておりましたが、実際入ったのは初めてです」


「そうか」


 それにしてはえらく余裕があるな。

俺なんて、これまで何十という迷宮を踏破してきたのに、この体になったとたん不安で不安でしかたがなかった。


「あの・・・」


「なんだ?」


 ティファニアが俺に歩調を合わせ、隣に立った。

んー、ギリギリでティファニアのほうが身長が高いな。

こいつにはブーツやハイヒールは履かせないようにしよう。

そんなことを考えていると、ティファニアがお願いをしてきた。


「皆さん私のことを愛称であるティファと呼んでくれます。セリア様もティファと呼んでいただけたら嬉しいです」


 あざとい、でもそこがいい。

俺も男であるから、やはり美人には弱い。

二つ返事で了承した。


「のぉ、聖剣殿。お主、レーアちゃんとは大丈夫なのか?」


 ルーカスが心配そうに尋ねる。


「大丈夫って、何が?」


「はぁ~、面白くないのぉ。わしらはレーアちゃん、ティファちゃん、シーラちゃんのお主を取り巻く三つ巴が見たいんじゃよ」


 いつの間にか隣にいたジンが、俺の背中を叩きながら言う。


 見たいんじゃよじゃねーよ。

俺はおっさんなんだから、そんな三つ巴なんてありえないんだよ。

じいさんになると、これだから厄介だ。


「聖剣殿、なにか良からぬことを考えておるんじゃなかろうのぉ」


「いや、別に」


 ルーカスの問いに、とぼけてみせた。


「そろそろ1階層への階段じゃぞ。ここからは緊張感を持っていくぞぃ」


 先頭を行くエリックが嗜める。

なんというか、先頭を歩くから会話に入れないので、焼餅を焼いているように見えた。


 階段を降りると、二日ぶりの1階層が現われた。

俺達は躊躇することなく、1階層へと足を踏み入れる。

皆、顔つきが真剣になり、警戒は怠らないようにしていた。


 しばらく歩くが、赤狐は現われなかった。

それもそのはずで、進む先々に冒険者がいて、赤狐を狩っていたからだ。

やはり上層と同様で、結構な数の冒険者がいるようだ。


 これなら俺達は赤狐の相手をする必要はないだろう。

さっさと下へと続く階段を目指とするか。

俺達はそう共通の認識をもって足を速めた。

ただ一人を除いては。


「なかなか魔物が襲ってこないというのもわずらわしいですね」


 ティファニアはそう言うと、両手を上へ向け、魔法の詠唱を開始した。


「我が理を顕現し、想像を実現せよ。ウィンドランス」


 ティファニアがそう言うと、両の手から無数の風で出来た槍が発生し、空へと駆け上がる。

しばらくすると、周り中から悲鳴と爆発したような音が聞こえてきた。

しかもそれは一箇所ではなく、1階層全体に起こっていた。


「あの、ティファニアさん、あなた今ナニシタノ?」


 目が点になっている俺達を代表して質問した。


「何って、魔物を駆除しただけですが」


「・・・・」


 俺達はそれから先を聞くのが怖くなった。

おそらくあの風の槍は魔物めがけて飛んでいったのだろう。

他の冒険者が交戦中とか、昼寝してる魔物とか関係なく。


「どうしたんですか?迷宮の中なのに、魔物が一向に襲ってこないので、生命探知魔法と風魔法の複合魔法でここら一体の魔物を葬っただけですよ?」


 いや、ここには他の冒険者がいるから狩りは彼らに任せ、俺達は先へ進むべきだ。

 そもそも、赤狐に魔力を消耗するなんて効率が悪い。

 それ以前に、他の冒険者の獲物を奪うのはマナー違反である。


 言いたいことはたくさんあったが、彼女を除く誰もが呆然としていた。

それは、彼女のあまりの常識の無さだけでそうなったのではない。

彼女の常識はずれな魔法に驚いたのだ。


「そろそろ先へ行きましょう。もうこの階層に魔物はいませんから」


 俺達に先を促しながら言った言葉に、じいさん達はただ戦慄するだけであった。

そして俺は、彼女にかつての自分と同様の規格外な姿を重ね合わせていた。

次回も迷宮が続きます。


レーア、ティファニア、シーラのファンの方は感想をお待ちしております。


また、続きが気になる方は、是非是非ブックマーク、評価をお願いします。


さて、次はどんな目標にすべきか・・・・。

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